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慌ただしく始まったレセプションの準備も、運び込まれる食材やワインを見れば順調に進んでいるようだ。
大型船のクルー達は一度陸を離れると何カ月も帰って来ない。別々の航路の船に乗るクルー同士でも同じだ。そのクルー達が一堂にシェドに集まる。
レイシャルは父に連れられて船長や航海士には会ったことがあるが、クルー全員となると流石に会えてはいない。
(機会があれば全員に会ってみたいと思っていたのよね)
船長に連絡をしたいときには、寄港先に一番近い支店に手紙を預ける。しかし、1度行き違うとまた何カ月も連絡がつかない時もある。
それに船長たちには独自の権限が与えられている。もし、お父様が生きていたとしても海の上にいるクルー達には指示が出せないからだ。すべての判断は船長に委ねられているのだ。
レイシャルは今回のいきさつを誤解がないように丁寧に手紙にしたためたが、移住の件で納得していない船長がいればシェドに来ない可能性もある。
シェドで初めての朝を迎えたレイシャルが最初にした行動は、従業員やその家族の安否を確認したことと停泊している大型船の確認だった。
ウエンから停泊している大型船の数を聞いてはいたが、自分の目で確かめるまでは信じられなかったのだ。海が一番よく見えるのは監視塔だと聞いて向かったレイシャルは、部屋を通り過ぎると見晴台に出た。
目の前には青い海が広がり、港に停泊する多くの大型船が見える。
「来てくれたのね・・・」
レイシャル自身も圧倒されるそのスケールに鼓動が震えるのを感じた。
(これで一安心だわ。それに一堂に集まると迫力が違うわね。騎士達が奇襲と勘違いしたのも良く分かるわ。1艇を除いて全てが集まった)
「ウエンありが?キャーーーー!」
レイシャルが通り過ぎた部屋は、騎士達の更衣室だった。
***
(何であんな場所に・・・今思い出しても恥ずかい)
そして、本店の従業員と船員も同じオーロラ商会の仲間として、交流を深めて欲しいとレイシャルは王宮のパーティーに全員を招待したのだ。
(ふっふっふ。みんな大喜びだったわね。女性従業員は大型船のクルーや王宮で働く騎士に興味津々だったし、クルー達も密かに女性と話せることを心待ちにしているようね)
喜んだ女性達は何を着ていくか、どのような髪形にするか今から大騒ぎだ。
今回のレセプションには王族の参加はもちろん、この国の貴族達も招待されることになっている。今後この国で商売を続けるなら貴族との交流は欠かせない要素になる。
私とリリアンのドレスは、宣伝用も兼ねているので最高級品の生地を使って絶賛製作中だ。
「そう言えば卒業パーティーで着ていたドレスは、リリアンの趣味なの?」
「やめてくださいよ~。あんな悪趣味なドレス」
「じゃあ、あれはスザン王子の好みなのね」
「そうなんです。処女性っていうんですか、無理やり価値観を押し付けてくる童貞みたいで気持ち悪かったです」
ウエンとワイアット様の肩が微かに揺れた気がした。
(童貞って。そんな言葉を聞くと普通の令嬢は気を失ってそうね。リリアンの令嬢教育も始まったばかりだし、まだ何も言うまい)
「ドレスのデザインはオーロラ商会に任せてもらってもいいかしら?」
「ルビー様の監修ですよね・・・ファッションリーダーと名高いルビー様がデザインして下さるなんて最高じゃないですか。ぜひお願いします」
(ルビーのセンスはドレスでも冴えるのよね)
ミリューでもルビーがデザインしたドレスが度々話題になっていた。
オーロラ商会では、ワイアット様とミカエルのタキシードやカミュール公爵夫妻の衣装などもお針子のみんなが手分けして製作にあたってくれている。
***
レセプションパーティー当日は初夏を思わせる素晴らしい天気に恵まれ、王宮に準備されたレセプション会場では髭や髪を整えたクルー達が今か今かとレイシャル達の登場を待っていた。それは招待されたシェドの貴族たちも同じだ。
今は平民となったレイシャルだが、港に停泊する大型船や街で見かける馬車を見ればオーロラ商会の資金がいかに潤沢なのか想像するに難くない。
会場にはウェルカムドリンクとオードブルが準備され、レセプションが始まるまで思い思いに過ごすことができる。従業員やクルー達が和やかに話す場所から少し離れ、貴族達は貴族同士でおしゃべりに興じている。
(見事に別れているな・・・)
準備の為に早めに会場入りしたベンハーは、いつもに増して派手ないでたちで現れた。そんなベンハーに気さくに話しかけてくるのは従業員やクルーばかり。
貴族令嬢や婦人達は、離れた場所からベンハーに冷ややかな視線を送ってくるのだ。
(最近久しくこの視線を感じていなかったから、ある意味新鮮だな)
ベンハーがこのような格好で現れるのには訳がある。オーロラ商会のナンバー2と紹介されたときの相手の反応を見るためだ。TPOを守らないベンハーにも問題があるが、この方が相手の人間性が良く分かると好き好んで派手な服を選んでいる。
「また、面白がって・・・。レイシャルお嬢様のお立場も考えなさいよ」
そう言いながらもルビーは全く気にしていない様子だ。
「さあ、いよいよお嬢の登場だな」
「ええ、渾身のデザインよ。寝ずにみんなで頑張ったんだから驚かせてみせるわ」
そう言うとタイミングよく、レセプションの始まりを知らせるラッパが会場に鳴り響いた。
「まあ、素晴らしいドレスだわ」
「美しいあの方がレイシャル様なのね・・・」
開いた扉に立つふたりの衣装は、高級な金糸と銀糸を惜しみもなく使った刺繍が細部に鏤められ、窓から差し込む光が刺繍に反射してまるで宝石のように輝いてる。
ウエン王子の襟元とレイシャルの胸元も施された刺繍がふたりの顔を照らすので、まるでふたりが輝いているように見えるのだ。
会場からはふたりの姿にうっとりする声が漏れた。
(ほっほっほっほ!私の計算通りの反応だわ)
ルビーは顧客になりそうな貴族のチェックも忘れない。
***
「注目を浴びて足がもつれそうよ。スザン王子にもエスコートされたことがないのに」
「それは光栄だな。スザン王子に今日だけは感謝したいぐらいだ」
「ウエンも無理して私のエスコートをする必要はないのよ」
「レイシャル以外に誰をエスコートする」
「え?」
「さあ、みんながお待ちかねだ」
大型船のクルー達は一度陸を離れると何カ月も帰って来ない。別々の航路の船に乗るクルー同士でも同じだ。そのクルー達が一堂にシェドに集まる。
レイシャルは父に連れられて船長や航海士には会ったことがあるが、クルー全員となると流石に会えてはいない。
(機会があれば全員に会ってみたいと思っていたのよね)
船長に連絡をしたいときには、寄港先に一番近い支店に手紙を預ける。しかし、1度行き違うとまた何カ月も連絡がつかない時もある。
それに船長たちには独自の権限が与えられている。もし、お父様が生きていたとしても海の上にいるクルー達には指示が出せないからだ。すべての判断は船長に委ねられているのだ。
レイシャルは今回のいきさつを誤解がないように丁寧に手紙にしたためたが、移住の件で納得していない船長がいればシェドに来ない可能性もある。
シェドで初めての朝を迎えたレイシャルが最初にした行動は、従業員やその家族の安否を確認したことと停泊している大型船の確認だった。
ウエンから停泊している大型船の数を聞いてはいたが、自分の目で確かめるまでは信じられなかったのだ。海が一番よく見えるのは監視塔だと聞いて向かったレイシャルは、部屋を通り過ぎると見晴台に出た。
目の前には青い海が広がり、港に停泊する多くの大型船が見える。
「来てくれたのね・・・」
レイシャル自身も圧倒されるそのスケールに鼓動が震えるのを感じた。
(これで一安心だわ。それに一堂に集まると迫力が違うわね。騎士達が奇襲と勘違いしたのも良く分かるわ。1艇を除いて全てが集まった)
「ウエンありが?キャーーーー!」
レイシャルが通り過ぎた部屋は、騎士達の更衣室だった。
***
(何であんな場所に・・・今思い出しても恥ずかい)
そして、本店の従業員と船員も同じオーロラ商会の仲間として、交流を深めて欲しいとレイシャルは王宮のパーティーに全員を招待したのだ。
(ふっふっふ。みんな大喜びだったわね。女性従業員は大型船のクルーや王宮で働く騎士に興味津々だったし、クルー達も密かに女性と話せることを心待ちにしているようね)
喜んだ女性達は何を着ていくか、どのような髪形にするか今から大騒ぎだ。
今回のレセプションには王族の参加はもちろん、この国の貴族達も招待されることになっている。今後この国で商売を続けるなら貴族との交流は欠かせない要素になる。
私とリリアンのドレスは、宣伝用も兼ねているので最高級品の生地を使って絶賛製作中だ。
「そう言えば卒業パーティーで着ていたドレスは、リリアンの趣味なの?」
「やめてくださいよ~。あんな悪趣味なドレス」
「じゃあ、あれはスザン王子の好みなのね」
「そうなんです。処女性っていうんですか、無理やり価値観を押し付けてくる童貞みたいで気持ち悪かったです」
ウエンとワイアット様の肩が微かに揺れた気がした。
(童貞って。そんな言葉を聞くと普通の令嬢は気を失ってそうね。リリアンの令嬢教育も始まったばかりだし、まだ何も言うまい)
「ドレスのデザインはオーロラ商会に任せてもらってもいいかしら?」
「ルビー様の監修ですよね・・・ファッションリーダーと名高いルビー様がデザインして下さるなんて最高じゃないですか。ぜひお願いします」
(ルビーのセンスはドレスでも冴えるのよね)
ミリューでもルビーがデザインしたドレスが度々話題になっていた。
オーロラ商会では、ワイアット様とミカエルのタキシードやカミュール公爵夫妻の衣装などもお針子のみんなが手分けして製作にあたってくれている。
***
レセプションパーティー当日は初夏を思わせる素晴らしい天気に恵まれ、王宮に準備されたレセプション会場では髭や髪を整えたクルー達が今か今かとレイシャル達の登場を待っていた。それは招待されたシェドの貴族たちも同じだ。
今は平民となったレイシャルだが、港に停泊する大型船や街で見かける馬車を見ればオーロラ商会の資金がいかに潤沢なのか想像するに難くない。
会場にはウェルカムドリンクとオードブルが準備され、レセプションが始まるまで思い思いに過ごすことができる。従業員やクルー達が和やかに話す場所から少し離れ、貴族達は貴族同士でおしゃべりに興じている。
(見事に別れているな・・・)
準備の為に早めに会場入りしたベンハーは、いつもに増して派手ないでたちで現れた。そんなベンハーに気さくに話しかけてくるのは従業員やクルーばかり。
貴族令嬢や婦人達は、離れた場所からベンハーに冷ややかな視線を送ってくるのだ。
(最近久しくこの視線を感じていなかったから、ある意味新鮮だな)
ベンハーがこのような格好で現れるのには訳がある。オーロラ商会のナンバー2と紹介されたときの相手の反応を見るためだ。TPOを守らないベンハーにも問題があるが、この方が相手の人間性が良く分かると好き好んで派手な服を選んでいる。
「また、面白がって・・・。レイシャルお嬢様のお立場も考えなさいよ」
そう言いながらもルビーは全く気にしていない様子だ。
「さあ、いよいよお嬢の登場だな」
「ええ、渾身のデザインよ。寝ずにみんなで頑張ったんだから驚かせてみせるわ」
そう言うとタイミングよく、レセプションの始まりを知らせるラッパが会場に鳴り響いた。
「まあ、素晴らしいドレスだわ」
「美しいあの方がレイシャル様なのね・・・」
開いた扉に立つふたりの衣装は、高級な金糸と銀糸を惜しみもなく使った刺繍が細部に鏤められ、窓から差し込む光が刺繍に反射してまるで宝石のように輝いてる。
ウエン王子の襟元とレイシャルの胸元も施された刺繍がふたりの顔を照らすので、まるでふたりが輝いているように見えるのだ。
会場からはふたりの姿にうっとりする声が漏れた。
(ほっほっほっほ!私の計算通りの反応だわ)
ルビーは顧客になりそうな貴族のチェックも忘れない。
***
「注目を浴びて足がもつれそうよ。スザン王子にもエスコートされたことがないのに」
「それは光栄だな。スザン王子に今日だけは感謝したいぐらいだ」
「ウエンも無理して私のエスコートをする必要はないのよ」
「レイシャル以外に誰をエスコートする」
「え?」
「さあ、みんながお待ちかねだ」
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