お嬢様は萌えが欲しい。

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プロローグ

アルフレッド=カーチスという男

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 転生したことを思い出した私ではあったが、頭の痛みに負けその日は何も考えず眠ることにした。

 そして翌朝。

 昨日の酷い頭痛も消え、むしろ昨晩よりもたくさんのことを思い出した気さえする。いまだ目を開けない私を心配するメイドたちの声が聞こえるが、私はそれを無視することにした。今はそれよりも大切なことがある。そう、情報をまとめることだ。




___________________



 『私』こと奥平渚おくひらなぎさは、転生する前は日本という国に住んでいた。ごく普通のサラリーマンの父親の元に生まれ、ごく普通の専業主婦の母、ごく普通の兄、そしてごく普通の私という家庭構成だった。なんの不自由もなく暮らしていた。
 そんな私はとあるゲームにハマっていた。それは、

『恋する乙女と王子様』

という少しだけ癖のある乙女ゲームだった。ある性癖を持っていた私は、そのゲームにどハマりした。
 だが、そのゲームは人気のないゲームで、私の周りにはを理解してくれる人がおらず、寂しい思いをしていた。

 そんな時だった。
 SNSでゲームのエゴサーチをし、ヒットしたブログ、そこで私は彼女、『maho』に出会った。

 mahoはこのゲームを徹底的にやり込み、推しに貢いでおり、また彼女もこのゲームを好きなタイプだった。
 私はさっそく、mahoのブログに書いてあるアドレスに連絡を送った。返事はすぐに返ってきた。mahoも私と同じく同士がおらず、寂しい思いをしていたらしい。
 半年ほど連絡をとった私たちは、ゲームのイベントがあると聞き、オフ会をしようという話になった。

 実際に会ったmahoは、本当に可愛らしい女の子で、こんな子がこのゲーム好きなのか?と自分の目を疑ったほどだった。だが、話しているうちに打ち解け、2人で仲良くバスに乗り込んだ。

 そして、私は死ぬことになる。

 運転手が居眠り運転をしてしまい、私は死んでしまった。mahoはどうなったか、私には分からない。恐らく私の方が先に死んでしまったのだ。

『よく転生物あるじゃない?死んだら私このゲームに転生したい~っ』

 それが私の最後の言葉だ。
 私は17歳で人生の幕を閉じたのだった。



____________________



 まとめてみるとこんな感じか、私は、目を閉じたままふむと頷いた。
 そうか、私の名前は=かぁ…。だったかぁ。

 それにしても、さっきから周りが慌ただしくないか?そう聞き耳を立てる。私のベッド周りや廊下で、多くの足音が響いている。

「エミーは大丈夫なのか!?なぜ目を覚まさない!」
「エミー、目を覚ましてちょうだい…早くお母様にあなたの元気なお顔をみせて…!」

 この声は、お父様とお母様か。私は昨日の夜目を覚ましたけれど、あの時私の近くには誰もいなかった。そうか、私はずっと眠っていることになっているのか。
 そろそろとゆっくり目を開ける。そこには目を開けたことに驚く父と母、私の怪我を見てくれたのであろう医者、メイドたち、そしてアルの姿があった。

「お父様…お母様…」
「エミー!」
「エミー良かったわ、良かったわっ!」

 私に抱きついてきた母と父の背を撫で、私は大丈夫よ、と呟いた。ふと、アルと目が合う。
 彼はアルフレッド=カーチス。私が怪我をする前日に執事見習いとしてうちにやってきた青年だ。

「アル、まだこの屋敷に来たばかりなのに、こんな姿を見せてしまって…ごめんなさいね」

 アルは、いいえいいえと頭を振った。アルの綺麗な緑色の瞳が揺れている。

「私が、エミリーお嬢様のことをもっと早くに、発見出来ていれば良かったのです」
「仕方ないわ、アル。貴方はまだここに来たばかりよ、そのことはいいのよ」
「ですが…奥様?」

 いつの間にか私の側から離れた母が、アルの前に立つ。私と同じ青色の瞳がにこりと笑った。

「アルフレッド、エミーをよく見つけ出しましたね。感謝致します」

 深々と頭を下げた母にアルが驚き、緑色の瞳が大きく揺れた。そんなそんな、と慌てふためくアルを尻目に私は父を見る。なんだ?と言いたそうな瞳で父は私を見つめ、口元に微笑を浮かべた。

「お父様、わたくしお願いがありますの」
「なんだい?エミー、言ってごらん」

 その言葉に私はにこりと微笑んだ。

「アルをわたくしの従者にしてくださいませ」

 私の言葉に、アルやメイドたちが驚き息を飲む。父はそんなことか、と呟き側にいた執事に合図をおくる。よし、私のお願い聞いてくれたみたい。
 アルはというとぽかんと間抜けに口を開き、私を見つめていた。
 やっぱり、アルはアルなのね。


__________________


 私が好きだった乙女ゲームには、なぜそうなっているのかは分からないが、ある設定があった。
 ゲームの後半は、きちんとしたよくある乙女ゲームでその内容は女子達の心を射止めたものだ。そのゲームの前半部分に私は心を射止められた。

 

 そして、私や、mahoはガチガチの腐女子だった。

 そしてそして、この彼、アルフレッド=カーチスはこのゲームにおけるホモ要因。
 なのであった。






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