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第二章
休日のこと1
しおりを挟む「はあ~っ疲れたわ!」
学校の初日は、今後のことを話されただけで授業は特にないので午前中に終わった。4人の攻略者もゲーム上でいえば出会うのはまだ先になるため、私は帰路に着くことにした。もちろん、この世界はゲームに似た世界のため、もしかしたら出会いのイベントが早くなったりするかもしれないが…。今日のところはアリスを見送ったため、平気であろうと思う。
「お嬢様、そのような言葉遣いは…」
私の前に座るアルが伏し目がちにそう告げた。
「ごめんなさい、とっても疲れちゃったものだから…」
そういい、馬車から見える景色を眺める。何もないのどかな野原が一面に広がっていた。
ふと、アルを見つめる。アルは大きくなったなぁ。私はアルをいつも見あげなければならないので、昔は首を傷めることが多かった。最近は痛めない絶妙な角度が分かってきて、痛めることも少なくなったのだ。小さいことも大変よね、なんて他人事みたいに呟いた。
そういえば、この世界がゲームに似ているだけの世界だと気づいたのはアルが原因だったなぁ。
ゲームのアルは総受けで、なんにもできない男だった。いつも謝ってばかりで私の周りの子達もアルみたいな男はないなぁなんて言ってたっけ。そんな彼だけど、腐女子にはファンがたくさんいた。ちなみに私の推しはユリウス×アルだ。
ユリウスは、あれでも実は腹黒でなんにもできないアルを見て最初は心の中で毒づいているのだが、一生懸命なアルに心惹かれる、というのが腐女子的見解である。普通のアリスとのルートでも庶民だった彼女が一生懸命侯爵家の令嬢になろうとするのを見て心惹かれるのだ。
懐かしいなぁ。
あの頃はユリアル推しで、ひたすらユリウスのルートを攻略してたっけ。私はわりと雑食で地雷も少ないため、他の攻略者でも妄想はできる。ユリアルの次に好きだったのはラルアルだ。普通のルートでは、ラルクはものすごい女好きで、いろんな人に手を出そうとする。その中の女にアリスがいた。アリスは初め、エミリーの婚約者であるのにとラルクを叱る。ラルクは誰かに叱られたことがないため、そんなアリスに心惹かれて最終的にエミリーと婚約破棄するルートを選択する。
と…あら?
でも、アルがラルクを叱ったことあったわよね。
あの日以来ラルクは、『俺にくれ』とよく言うようになった。
これは…もしかして、もしかするんじゃない?私、
この目でラルアル見れちゃうんじゃない???
「…さま、お嬢様!聞いてますか??」
アルの声にハッと我に返る。いけない、ほかの世界に旅立っていたわ。
「ごめんなさい、何かしら?」
「いえ、明日はおやすみじゃありませんか。お嬢様はいかがお過ごしなのかと思いまして…」
そう、明日は王様の誕生日の日で全国民は祝日なのだ。父や母は王宮に行くみたいだけれど、私はまだ社交界デビューをしていないため、明日は特に用事がない。この国での社交界デビューは16歳のため、私は来年のこの日王宮に行かないといけない。毎年どっと疲れた顔をして帰ってくる両親をみて、社交界は怖いところなのだと思っていたが、もう来年なのか。
「お嬢様?」
「あ、ごめんなさい。そうね、明日は何も無いし、久しぶりにアルのいれたお茶が飲みたいわ」
「明日でなくとも、帰ってからもお出し致します」
「帰ってからも飲みたいけれど、明日はアルと一緒に飲みたいの」
「…私と、でありますか?」
ぱちぱちと大きな瞳を瞬かせた。普通従者といえど主と共にお茶はしない。けれど、明日は両親もいないのだし、たまにはいいではないか。
「いいでしょ?お願いよ。私からのお願いだと執事に伝えておくわ。それでいいでしょ?」
「…お嬢様がそんなに望むのでしたら、私がお伺いをしておきます」
その言葉ににっこりと微笑むと、アルもそれに返すように微笑んだ。
その日の夜は明日が楽しみだなーと考えながら、久しぶりに私の宝箱をあける。その中にはアルがくれた髪留めと緑色のイヤリングが入っていた。その髪留めを久しぶりにつけようと机の上に置いた。
あの日から私が大好きな赤色。それを考えただけで、私の心の奥は少しだけ暖かくなった気がした。
次の日、楽しみに目を覚まし支度をしていたら客人が来た。
ラルクが朝からやってきたのだった。
******************
なかなか更新できず申し訳ないです!
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