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第二章
休日のこと2
しおりを挟むその日は朝からラルクが来ていた。以前アルに叱られたのでもちろん玄関から。
「ラルク様、こんな朝からどうなさったの?貴方今日は王宮へ行くのではなくて?」
その問いかけに困ったような顔をして、ラルクの瞳が揺れる。そんなラルクに近づき、ラルクの頬に触れた。
「ラルク様、どうかしまして?」
「……いなくなってしまって」
「誰がいなくなったというの?」
「うちの…猫が…」
はあ?と言いそうになるのを私は必死で抑えた。猫?ラルクったら猫を飼っていたの?その猫がえ?どうしたって?
「ラルク様、どうかなさったのですか?」
私の背後からアルがやってきて、私の肩を掴み後ろへ引いた。必然的にラルクの頬に添えてあった私の手も離れる。
「猫が…」
「はぁ?」
「あ、猫がいなくなってしまったらしいのよ。ほほほ。それで?ラルク様、それがどうしたというの?」
放心しているラルクを応接間に案内し、とりあえずソファに座らせた。
「うちの、猫…白い…アンジェという…」
ぽつりぽつりと話し始めたラルクに、私もアルも耳を傾けた。
「朝起きたら、アンジェがいなかった…探しに行きたいのだが、俺は王宮に行かなければならない。だから、代わりにアンジェを探してくれないか…」
ハッと私は声を出した。
そうだ、これはゲームのイベント!一番好感度の高い人物と起こるイベントだ。今が春だとすれば、一年目の冬辺りで起こる。この国には季節はないし、カレンダーもないため体感的に一年を感じられるようになっている。本当はこれ、もうすこし先に起こるイベントだ。なのにこんなに早く…。
本来ならアリスとともに起きるイベント。なのにここに来るということは、私かアルとの好感度が一番高いということになるのか。恐らくアルだろうな、ラルアルなわけだし。
私が悩んでいると、キュリーが応接間にやってきた。
「エミリーお嬢様、お客様がいらっしゃっております」
「誰かしら、今ラルク様が来ていらっしゃるのよ」
「申し訳ありません、エミリー様のご学友という方で、アンダルシア侯爵家のアリス様という方でございます」
「アリスさんが?分かったわ、通してちょうだい」
ぱたぱたと出ていったキュリーがしばらくして、アリスを連れて帰ってきた。
「ごきげんよう、エミリー様!今日は祝日なので遊びに来ちゃいました!…て、あ!ラルク様!申し訳ありません!私、帰ります!」
ラルクがいることで気を使ったのであろうアリスはくるりと背を向け帰ろうとした。そんなアリスを私は止める。
「いいのよ、アリスさん。ラルク様はもうすぐ王宮に向かわれるそうだから。あといらっしゃる時はなにか一報くださいな。こちらにも準備があるのよ」
「は、はい!すみません!」
「ラルク様、貴方もですわよ」
「…お、おう」
アリスをちょいちょいと呼び、隣に座らせた。ラルクエンドを目指すまいとしている私的にアリスとラルクに接点をもたせるのはあまりって感じなんだけど、来てしまったら帰す訳にはいかないし、最もラルアルエンドの方がありそう(?)だからまあ良しとするか。
「それでラルク様、そのアンジェちゃんの特徴を教えてもらえます?」
「ああ…かわいい、白い猫なんだ」
「もっと無いんです?かわいい以外で」
「ええと、可憐で美しくて妖艶で…」
「もういいですわ。探しません」
「冗談!冗談だよ!マンチカンの白い猫だよ!」
アリスは隣でほぉ…と言っている。なんの話しをしているかも分かっていないだろうに。
「その子を探せばいいのですわね?というか貴方の所のメイドに探させればいいじゃない?」
「うちは伯爵家だぞ、猫を探すような暇なメイドはいないんだよ」
「うちであれば暇な方がいるだろうというお話でありますか?」
「…アルなら行けるだろうと思ってな」
罰が悪そうにラルクが目を伏せる。そんなラルクをみて私はため息をついた。
「分かりましたわ。アルをお貸ししましょう。わたくしは家から出ませんし、できるわね、アル」
「…かしこまりました」
ラルクにつれられてアルは応接間を後にする。扉が閉まる前にアルが私に申し訳なさそうな目を向けてきたため、私はコクリと頷いてみせた。
結局アルのお茶、飲めなかったなぁ。そう思いキュリーのいれたお茶を飲む。久しぶりに飲んだキュリーのお茶は少しだけ苦い味がした。
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