箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

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23・ゴブリンシャーマンとホブゴブリン

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 俺の鮮血を飲んで変貌した四匹のゴブリンたちが賑やかに騒いでいた。森の片隅で歓喜の声が無邪気に木霊する。

「きゃっは、きゃっは!」

「どうだい、あっしのサラサラヘアーは、 とても美しいでやんすだろ~」

 問われたゴブリンはカクリと刈り上げを手の平で撫で上げると満足気に言った。

「俺の凛々しい角刈りヘアーも男前だろうさ!」

 更に別のゴブリンも自慢気に述べる。。

「何がサラサラに角刈りだ。俺のアフロのほうがモフモフでダイナミックだろ~」

「いやいや、俺のモヒカンのほうがワイルドだぜぇ!」

 ゴブリンたちは各々の変貌した髪型を自慢していた。ほとんどハゲだった頭に髪の毛が生えたことが嬉しくて堪らないようである。

 はしゃぐゴブリンたちの様子を見ながら俺が森の中を歩いているとキルルが話し掛けて来た。

『皆さん髪の毛が生えて嬉しそうですね』

 キルルは妖怪からワンパク少年風に変貌したゴブリンたちを見ながら微笑んでいる。まるで弟たちを愛でるお姉さんのような優しい笑顔に窺えた。

 しかし、全裸の俺は楽しそうに話しているゴブリンたちに厳しい口調で忠告する。

「いいか、お前ら。以前みたいに簡単には仲間を裏切るなよ。俺を裏切ったら石化しちゃうんだからな」

 ロン毛のゴブリンが髪を可憐に靡かせながら振り返ると言った。

「分かっているでやんす、エリク様。あっしらは仲間を裏切ってもエリク様だけは裏切りやせんから!」

「うんだうんだ!」

 ロン毛ゴブリンの言葉に他のゴブリンたちも強く頷いていた。その瞳からは以前の禍々しさは消えている。潤んだ瞳からは邪悪な色合いが消えていた。

 美少年とまではいかないが、真っ当な人間の顔に近付いている。
 だが、まだ何故か信用が出来ない。

「なんかこいつら危ないな……」

『ですね……』

 キルルが苦笑いながら同意する。
 俺とキルルが危なげな眼差してゴブリンたちを見ているとハートジャックも同意見だと頷いていた。
 まだ、コボルトからもゴブリンは怪しく見えるのであろう。
 どうやら変貌進化程度では信頼は買えないらしい。

 そして、先頭を歩いていたゴブリンが森の先を指差しながら声を上げる。

「エリク様、もう到着しますよ!」

 すると森を抜けて草むらに出る。その草むらの先に遺跡が見えた。
 ゴブリンたちが巣くっている古びた遺跡だ。四角くく太い岩の柱だけが数本残っていて、屋根や壁が失くなっている遺跡だった。
 数本並んでいる石柱の奥には藁葺き屋根の三角テントがいくつか見える。

「あれがゴブリンの家なのか?」

 もう村にも見える作りだった。どうやらコボルトよりは建築能力が有るらしい。
 だが、原始的だ。雑な作りの縦穴式住居っぽい。

 その藁葺テントの群れに俺たちが近付くと、テントや柱の陰からおぞましい表情のゴブリンたちが武器を持ってゾロゾロと姿を現した。

 悍ましい表情の眉間には威嚇的な皺を寄せたゴブリンたちが牙を剥いて剣や槍、それに斧や弓矢を構えている。

 それはまさに小鬼の風貌。

 非戦闘員をふくめれば、数にして45匹ぐらいは居るだろう。キングから聞いていた数に近い。

 俺は偉そうに胸を張ると腰に両手を当てながら威張って見せた。

「よしよし、お出迎えご苦労様だな!」

 キルルが俺の背後に隠れるとハートジャックが鉈を手に俺の前に出た。野犬のように牙を剥いている。

 一瞬で犬猿な空気が周囲に流れた。種族間の軋轢が鑑みれる。
 するとロン毛のゴブリンが俺に提案してきた。

「エリク様、ここはあっしに任せてもらえやせんか。あいつらをあっしが説得してみせますから!」

 俺は横目だけでロン毛ゴブリンをチラ見すると言ってやる。

「ほほう、頼もしいことを言ってくれるな、ロン毛」

「あっしの名前はゴブロンでやんす」

「ならばゴブロン、お前に任せるぞ。昔の仲間を口説いてみせろ。あいつらも魔王軍に引き込むんだ!」

「へいっ!」

 時代かかった江戸っ子風に返事を返したロン毛のゴブロンが一匹で前に出る。
 その表情は満面の笑顔。その笑顔を見た敵ゴブリンたちが戸惑っていた。
 サラサラヘアーのロン毛が輝いて見えている様子である。

 そして、ロン毛のゴブロンが明るく声を張る。

「皆、あっしを覚えているでやんすか。仲間のゴブロンでやんすよ!」

 ゴブリンたちが更にザワめく。
 村を出る前は禿げて悍ましかった仲間がサラサラヘアーに変貌して帰ってきたのだ。それは戸惑うだろう。

 そして、ざわめく仲間を余所にゴブロンは丁寧に俺を皆に紹介した。

「こちらにおられますは新魔王のエリク様でやんす!」

 魔王と言う単語を聞いたゴブリンたちが更に更にとザワついた。信じがたいと言いたげな眼差して俺を見ている。

 更にゴブロンの紹介が続いた。

「魔王エリク様は魔物の王国を作って魔物の統一をなさられる御方でやんす。そして、魔王エリク様に忠誠を誓えば、あっしのようなイケメンになれるでやんすよ。イケメンゴブリンになりたくば、今すぐ武器を捨てて魔王エリク様の前に膝まつくでやんす!!」

「「「おおーーー!!」」」

 ゴブロンの言葉を聞いた瞬間に、多くのゴブリンたちが武器を捨てて俺の前に走り寄る。そして、俺の眼前で片膝をついて頭を深々と下げながら声を合わせた。

「「「魔王様、我々は忠義を誓うゴブ!!」」」

「『はやっ!!」』

 キルルとハートジャックが呆れたように驚いていた。確かに早すぎる。
 だが俺は満足そうに微笑み返す。
 手っ取り早いことは良いことだ。これでゴブリンたちも難なく仲間に引き込めてミッション完了だぜ。

 そう俺が喜ぼうとした刹那だった。
 ゴブリン村の方向からヒステリックなキンキン声が飛んでくる。

「ちょっとお待ちゴブ!!」

 膝まついていたゴブリンたちが全員振り返った。俺たちも声の主を見る。
 そこには羽根飾りのマフラーで身形を飾ったローブ姿のゴブリンが立っていた。その派手なゴブリンの背後に二匹の巨漢ゴブリンが立っている。

 巨漢のゴブリンは普通のゴブリンたちと違って顔も大きく四角くい。体つきもプロレスラーのように太く筋肉質。普通のゴブリンは身長が150センチぐらいなのだが、その二匹は180センチは有に越えていた。

 俺より身長が高いな。

「あいつらゴブリンなのに俺より身長が高いじゃあねえか……。生意気じゃあねえの!?」

 うむむ、妬ましいぞ!
 転生して小さくなった俺の気持ちも知らないで、スクスクと育ちやがって!!
 なんともかんとも実に生意気である。

 キルルが長身ゴブリンの二匹を見ながら言った。

『あれはホブゴブリンですね』

「ホブゴブリンってゴブリンなのか?」

『列記としたゴブリンですよ。ゴブリンが突然変異で巨大化したのがホブゴブリンだと言われています』

 俺とキルルが話していると角刈りゴブリンが話しに加わる。

「ただデカイだけでホブゴブリンはゴブリンですよ。だから普通のゴブリンからホブゴブリンが生まれてくるんですよね。逆にホブゴブリン同士で子供を作っても普通のゴブリンが生まれるんですよ」

「じゃあ、突然変異は運なのか?」

 角刈りゴブリンは残念そうに答える。

「ホブゴブリンは運です!」

 俺たちが話していると羽根飾りのゴブリンがキンキンの雌声で怒鳴った。

「お前たち騙されるんじゃあないゴブよ!!」

「騙す? 言い掛かりじゃねえか?」

 俺は嘘なんて言ってないのにさ。

 羽根飾りのゴブリンは更に続ける。

「皆はそいつに騙されているんだゴブ。忠義を誓っても変身は一時ゴブよ。いずれ醜い姿に戻るゴブ!!」

「何をほざいてやがるんだ、この羽根飾りのゴブリンは?」

 モヒカンゴブリンが呆れた素振りで言った。

「妬みですよ、妬み~」

 羽根飾りのゴブリンが木の杖を頭上で乱暴に振り回しながら抗議する。

「わっちも嘗て白黒の魔女に騙された経験があるゴブよ。 だからそいつも絶対にわっちたちを騙すに決まっているゴブ!!」

 なるほど、こいつは詐欺に騙された経験がある被害者なのね。それだと他人を信じなくっても仕方無いか。

 しかし俺は頷きながら言う。

「こいつは詐欺られた経験があるから人を信用できない口なのね」

 キルルが悲しそうに言う。

『詐欺って嫌ですよね……。トラウマになっちゃいますよ』

 ハートジャックが言う。

「居るんですよね~。誰かに騙されて、人間不信に落行っちゃう輩がさ~」

「「「「あ~あ、かわいそうだね~」」」」

 四匹のゴブリンたちも羽根飾りのゴブリンを哀れんでいた。
 俺はゴブロンの肩を引き寄せ代わりに前に出る。そして、羽根飾りのゴブリンに言ってやった。

「この魔王エリク様がゴブリン風情を騙すと言うのか!?」

「そのゴブリン風情と述べる舐めた態度が信用できないゴブ!!」

「なるほど……。一理ある」

 痛いところを突かれたな。確かに俺はゴブリンを舐めているのは事実だ。
 だが俺は両腕を胸の前で偉そうに組ながら言ってやった。

「ならば、どうしたら信用してくれる?」

 羽根飾りのゴブリンは胸の前で印を組む。

「力で証明してみろゴブ!!」

 ニタリと微笑む俺様。

「おうおう、分かりやすくて助かるぜ。そう言うのは嫌いじゃない。むしろ好物だ!!」

「食らえ、ファイアーボルトだゴブ!!」

 羽根飾りのゴブリンの眼前から炎の尾を引く魔法弾丸が放たれた。唐突な魔法による先制攻撃だった。

『魔王様、精霊魔法です!!』

「面白い!」

 炎は真っ直ぐ俺に向かって飛んでくる。
 だが俺は避けなかった。
 そして炎の魔法が俺に当たりそうになった瞬間に、霧のように炎の魔法が消えてしまう。
 俺に命中したわけではない。消失したのだ。まさに俺の眼前で消えたのである。

「わっちの精霊魔法が打ち消されたゴブ!!」

「チッチッチッ。違う違う、そうじゃあない」

 全裸の俺は自分の口の前で人差し指を左右に振るって気取って見せる。それから言った。

「俺には魔王の能力として無勝無敗と言う能力があるんだ」

「無勝無敗の能力ゴブか……。なんですのそれは?」

「その能力の効果で俺は魔法が使えない代わりに、如何なる魔法も無効化してしまうんだ」

 便利だか不便だかはなんとも言えないが、そう言うことになっている。それが無勝無敗の摂理なのだ。

 魔法が存在する世界で魔法が使えないのは、醍醐味の一つを奪われた感もあるにはあるのだが、俺はどついてどつかれてのファイトが好きである。
 まあ、だから、魔法なんて要らないもんね!
 ちょっと強がって見ましたわん!

「おのれゴブ!!!」

 怒りを露にする羽根飾りのゴブリンが歯軋りしていた。その表情は醜い小鬼その物である。威嚇的な皺の塊だった。

「ギグギグギクっ!!」

 不快な歯軋りが響き渡る。
 すると緑色の額に青筋を浮かべる羽根飾りのゴブリンが自分の背後に控えていた二匹のホブゴブリンに命じた。

「こうなったら! カンドレァ! チンドレア! お前らであいつを捻り潰してしまえゴブ!!」

 羽根飾りのゴブリンの命令を聞いて二匹のホブゴブリンが重々しい巨漢を揺らしながら前に出た。まるで山が動いたかのようだった。

「アンドレア姉さん、分かったホブ!」

「アンドレア姉さん、任せろホブ!」

「ホブゴブリンだからホブホブ言ってやがるよ」

 二匹は背中に背負っていた武器を取り出すと両手に構える。
 その武器は柄の長い両手持ちのハンマーだった。ハンマーと言うより木槌だ。木の柄に丸が刺さっただけの雑な木槌である。大木槌である。

「ホブゴブっ!」

「ゴブホブっ!」

 双子のホブゴブリンは醜くも厳つい顔で凄んでいた。その輪郭は小鬼ではなく鬼その物である。


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