異世界☆変態

ヒィッツカラルド

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6【追い剥ぎの野盗】

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 俺が全裸で籠を背負いながら防壁のゲートをくぐろうとした時に再び門番に話し掛けられた。先程の二人である。

「なんだお前、まだ裸なのかよ……」

「服ぐらい買う金は持ってないのか。家に少しぐらいは貯金とか置いて無いのかよ」

 ホームレスの俺は背負っているボロ籠を見せながら門番たちに言う。

「これから服を買うために銭を稼ぎに行くところだ。仕事をしないと給金が貰えないからな。服すら買えん」

「仕事って、何をするんだ?」

「近隣の森にモモシリ草を採取しに行く」

「全裸でか……」

「ああ、そうだ」

「武器も持たずに森に入るのか……?」

「ああ、全裸で武器も持たずに森に入りますよってばよ」

「マジで言ってるのかよ。武装無しでカンニバルベアが複数徘徊している危険な森に入る気なのかよ。……死ぬ気か?」

「俺だって死にたくないよ。だから熊を見つけたら走って逃げる」

「そ、そうか……。ならば頑張れよ……」

「お、おい、止めなくっていいのかよ……」

「それは俺らの勤務外だ」

「まあ、そうだけど……」

 血の気の引いた表情で全裸の俺を見送る門番二人。こいつマジかと言いたげなかおで俺を見送っていた。

 やはりそれが一般的な反応なのだろう。そもそもが自殺行為に等しいのかも知れない。

 全裸で非武装。それで人喰いで有名な熊が住んでいる森に入るのだ。それはアメリカのスラム街を全裸の女性が一人で歩くのと一緒である。

 まあ、今俺も全裸なのは変わらないけれども……。プリティーなお尻が少し痒い。ボリボリボリボリ。

「街は煌めくタラッタ~。ウインクしているタラッタ~。グラスの中のタラッタ~。一口だけでタラッタ~。タ~タ~ァ」

 俺は懐かしい昭和の名曲を歌いながら草原を気楽に歩いた。時折吹く微風が気持ち良くって鼻歌も軽快に弾んだ。

 そんなこんなでしばらく歩いていると件の森が見えてきた。その森のほうから男性が三人ほど歩いてくる。

 その身なりは厳つい。

「こんなところに人が居るの?」

 一人は金髪ロン毛で素肌に革鎧を纏っているマッチョマン。手には半月刀をぶら下げていた。頬には刃物の傷が刻まれている。

 一人は赤毛のボサボサ頭。ローブを纏い、その下に革鎧を着込んでいた。更に長槍を着いて歩いている。

 一人は巨漢の丸刈り頭。鋼の甲冑を上半身だけに纏い、肩には重々しい戦斧を背負っている。武装が重々しいだけあって知能指数が低そうな顔付きだった。

 そして、どの表情も強面。堅気ではない眼差しを有している。たぶん人間を何人か殺めた経験がありそうな面構えだった。無情なまでに殺伐としている。

「くっくっくっ」

「カーカッカッカッ」

 怪しく微笑む三人は俺の前に歩み寄ると柄の悪い口調で話し掛けてきた。俺の鼻先に半月刀の先を向けて脅して来る。

「おうおう、兄ちゃん。命が惜しくば身ぐるみをすべて置いて立ち去りな!」

「大人しく言う事を聞けば、命だけは助けてやるぞ!」

 脅迫である。どうやら野盗の類らしい。たぶん追い剥ぎだろう。だが俺は、追い剥ぎに追い剥ぎされるような物は何一つ持っていない。何せ全裸なのだから。唯一持っている物もボロボロの背負い籠だけである。こんな物を奪っても、まともな金にすら成らないだろう。

「済まんが、見ての通り俺は裸一貫で文無しだ。追い剥ぎする服すら着ていない。だからここは素直に見のがしてちょ!」

「なんで裸なんだよ?」

「なに、こいつ、変態?」

 この異世界に来て以来、何度目の同じ質問だろうか。もう聞き飽きた質問である。答える気力すら無い。でも命が掛かってるから素直に答えた。

「俺は訳あって文無しなのだ。なのでこれから全裸でモモシリ草の採取にチャレンジしようと思っている。この仕事に成功しないと金は無い。なので俺を襲うならば、また今度に出直してもらえないかな!」

「お前、全裸で森に入るつもりなのか?」

「ああ、そうだよ」

「カンニバルベアに食い殺されるぞ……」

「熊を見たら走って逃げる。それに賭けるしかない」

「ま、マジか……」

「走ってカンニバルベアから逃げられると思っているのかよ……」

「カンニバルベアって、足が速いのか?」

「めっちゃ速いぞ。馬と同じぐらいの速度で走りやがる」

「マジでぇ……」

 やばい。逃げるは叶いそうにない。

「しかもめっちゃ強いぞ」

「どのぐらい強いの?」

「カンニバルベア一匹で完全武装の衛兵が十人くらいで同時に飛び掛かったとして、やっとこ討伐が出来るぐらいじゃあねえのかな。たぶん、それでも怪我人程度は覚悟しないとならんだろうな。下手したら死人だって出かねないぞ」

 やばい。戦うなんてもってのほかだ。全裸の俺が一人では天地がひっくり返っても敵うはずがない。

「十対一で、やっとこ討伐かよ。それって強すぎじゃない」

「だから危険生物に認定されてるんだよ。そんな熊が何匹も住んでいる森に裸一貫で入るんだから、お前さん、大物なのか?」

「いえ、ただの世間知らずなワンパクです……」

 そう、ただのヤンキーで、ただの高校生です。異世界転生したけど、なんのチート能力すら授かっていない小僧です。

「お前、頭大丈夫か……?」

「もしも俺が心配だったら、手にある武器を譲ってはくれないだろうか。ご信用として心強いからさ」

「そ、それは無理だ……」

「そもそも野盗から武器を貰おうなんて不定野郎だな。そんな奴とは初めて出会ったわ……」

「そうか、残念だ。ならばそこを通してもらいたい。そして祈っていてくれ、俺の無事な帰還を!」

「ああ、頑張って来いよ。今度会うときは、追い剥ぎができるように拭くぐらい着ていてくれ……」

「ああ、分かった。任せておきな!」

 こうして俺は野盗たちと無事に別れることが出来た。もう二度と合いたくはないが、もしも再会したのならば、今度は服ぐらい差し出せるように着衣していたいものである。

 全裸は街では誰にも相手にされなかったが、野外でも野盗にすら相手にされないのだと俺は知る。

 また一つ俺は人生経験を積み重ねて賢くなったのであった。フォーーーーって感じである。

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