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13【隠し金】
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シルバームジの町の中。シマムを名乗る酒場の裏庭。その裏庭に建てられた納屋で俺は目覚める。
木造のボロい納屋は隙間風が吹き込み放題。その隙間から朝日が差し込み木漏れ日が輝いていた。早朝の屋外からは小鳥の囀りが聞こえてくる。
「ふわ~~ん……。良く寝た……」
俺は布団も枕も何も無いまま地べたで寝ていた。床が硬すぎて身体が痛む。身体中の関節がパキパキと音を奏でて軋んでいた。
「いててぇ……。全裸の加護は、寝相の悪さには効果が無いのかよ。床が硬すぎてダメージを受けてるぞ……」
俺は狭苦しい納屋の中で背伸びをした。軋んでいた身体を伸ばして凝りを祓う。
そして、俺が寝ていた場所を見下ろしてみればホームレスの小汚い爺さんが身体を丸めながら眠っていた。昨晩寒かったから抱き枕代わりに一緒に寝ていた爺さんである。
夏場でも夜は流石に全裸は寒い。布団も何も無かったので酒場の前で蹲っていた爺さんを捕まえて寝床に誘ったのである。
爺さんも最初は嫌がっていたが、俺に抱かれることで人の温もりを思い出したのか、寝る頃には抵抗を忘れて大人しくなっていた。お陰で寒い夜でも凍えずに済んだのである。
「おい、爺さん、朝だぞ、起きろ」
「ムニュムニュムニュ……」
「こりゃあ~、起きそうにないな。まあ、ほっとくか」
俺は納屋を出ると酒場の裏口から店内に入って行った。既に一階ホールにはお客が数人居る。武器を持ち防具を身に着けているところから冒険者のようだ。そいつらは熱心に掲示板に貼り出された依頼書を眺めていた。
「おはよッス、オヤジさん」
カウンターの奥で何かをしていた酒場のオヤジに挨拶を掛ける。しかし、店内を見回してみたがウエイトレスの娘さんは居ないようだった。それだけで俺のやる気がダウンする。
「おお、サブローか、おはよう。何か朝飯でも食うか?」
「うぃ~ッス、喰う喰う~」
「じゃあ、その辺に座って待っていろ。いま持っていってやる」
「サンキュー」
俺が空いているテーブル席に座ると冒険者たち数人が怪訝そうな眼差しで俺をチラ見していた。どうやら全裸の俺が気になるようだ。
「なんだよ、全裸がそんなに珍しいのかよ。あんまりチラチラと見られると照れるじゃあねぇかよ~」
俺が赤面しながら股間を隠すと同時に酒場のオヤジが料理を運んできた。
「ほれ、朝食セットだ」
酒場のオヤジが出してくれたのはパンとスープのセットである。昨晩食べたのと同じメニューだった。
「これさ~、昨日の夜と一緒じゃんか~」
「これがうちの朝食セットだ。イヤなら食うな」
「はいはい、贅沢言わないで食べますよ。たべればいいんだろ」
「30ゼニルだ」
言いながらオヤジはごっつい手の平を出して食事代を請求して来た。
「金を取るのかよ!」
「あたりめーだ、お前さんは何か勘違いしてないか。こっちは商売で飯を出してるんだぞ。金も払わない野郎に食事はたべさせられねぇ~な~」
「はいはい、払いますよ。まったくガメついオヤジだぜ」
俺は悪態をつきながらケツの割れ目に隠し持っていた大銅貨三枚で代金を支払う。
この異世界の通貨はゼニルだが、単位に寄って使われる硬貨が異なっている。
1ゼニルが小銅貨一枚。
10ゼニルで大銅貨一枚。
100ゼニルで小銀貨一枚。
1000ゼニルで大銀貨一枚。
10000ゼニルで金貨一枚である。
金貨だけ大小が無いのである。
俺がケツの割れ目から出した大銅貨で支払いを済ませようとするとオヤジが眉間に皺を寄せながら出していた手を引っ込めた。
「ど、どこから硬貨を出してるんだよ……」
「あれれ~、要らないの~。要らないなら払わないよ~」
「これじゃあ洗わないとならないじゃあねえか……。余計な仕事を増やしやがって……。うわ、くさ……」
ブツクサと文句を垂れながらカウンターの奥に戻って行く酒場のオヤジは、カウンターの奥に引っ込むや否や大銅貨を水で丁寧に洗っていた。
そして、通貨を洗いながら訊いて来た。
「お前さん、もしかして、昨日もらった1000ゼニルすべてをお尻に入れてるのか?」
「そんな訳無いだろう。流石の俺でも何枚ものコインをケツには仕舞えないぞ。残りの殆どは別の場所に隠してある」
「別の場所って、うちの納屋か?」
「なんで分かった。そく当てないで!」
安直な隠し場所はすぐにバレてしまった。このオヤジは名探偵か何かかよ。伊達にハゲてないな、まったくもう。
「そんなところに隠しておいて、盗まれても知らねえぞ」
「大丈夫、大丈夫。まさか酒場の納屋に大金が隠してあるとは誰も思わないさ」
無垢に俺が言うと、酒場の空気が固まった。お客であった冒険者たちが一斉に気配を消す。
そして、掲示板で依頼書を選別していた冒険者たちがユルユルと少しづつ横に動き出す。
その進む先は裏口方向。こいつら俺とオヤジの話を聞いて俺の隠し金を狙ってやがるな。
「あんたら、俺の金を狙ってるの?」
そう俺が訊いた瞬間、冒険者たちが一斉に走り出しだ。完全に俺の金を狙ってやがる。俺も慌てて走り出した。俺の金を盗まれては堪らない。
「おいおい、ちょっと待てや!」
「待てるかッ!」
八人の冒険者たちは一列になって裏口から走り出る。そして、最後の一人が扉の前で振り返った。巨体で出入り口を塞ぐ。
「ここは俺に任せて先に行け!」
「足止めか。死亡フラグが立ってんぞ!」
酒場の裏口前で陣取るのは戦士風の大男。上半身だけのプレートを纏い背中には大刀を背負っていた。頭はマスター同様でツルッパゲである。
「ここは通さねえぜ!」
「おのれ、ハゲ野郎!!」
足止め役を買って出た男は流石に酒場の中では武器を抜かない。大きく両手を広げて通せんぼをしていた。
「舐めるな!!」
「来いや!!」
ジャンプ一線。俺は大男の頭の高さまで飛んだ。
そして、空中で両足を揃えながら体を丸める。背を丸め、両手で両膝を抱えて全身で丸を作った。
「喰らえ、ドロップキック!!」
俺は全身を丸めた体勢から勢いを爆発させた。全身のバネを伸ばして両足裏で大男の胸板を蹴り飛ばした。
その飛び両足蹴りで大男を吹き飛ばす。
「ぐはっ!!」
武器や鎧の総重量は約180キロぐらいだろう。それだけの重量を有する巨体を俺は裏庭まで蹴り飛ばした。閉じていた扉を破壊して裏庭を転がる大男は隣の家の壁に激突して止まる。
「っ……」
何も言わず壁際で蹲る大男は白目を剥いて奇絶していた。後頭部を壁にぶつけたのだろう。アングリと開けた口から前歯がポロリと一本抜け落ちる。
「俺の金は俺が守る!!」
ダッシュで酒場から走り出る俺は残りの七人を追った。そして、直ぐに冒険者たちに追い付く。
冒険者たちは納屋の扉を開けたところで追って来た俺に気が付いて振り返った。その俺の背後では大男が伸びている。
「クソ、こうなったら!」
納屋の扉に手を掛けていた一人を残してすべての冒険者たちが俺に向かって走り出した。全員で俺の妨害をする積りらしい。
俺は走りながら両拳を強く握り締めた。
「上等だ。全員ぶっ倒してやるぞ!」
「「「「「「うらぁぁああああ!!」」」」」」
大乱闘の開始である。
木造のボロい納屋は隙間風が吹き込み放題。その隙間から朝日が差し込み木漏れ日が輝いていた。早朝の屋外からは小鳥の囀りが聞こえてくる。
「ふわ~~ん……。良く寝た……」
俺は布団も枕も何も無いまま地べたで寝ていた。床が硬すぎて身体が痛む。身体中の関節がパキパキと音を奏でて軋んでいた。
「いててぇ……。全裸の加護は、寝相の悪さには効果が無いのかよ。床が硬すぎてダメージを受けてるぞ……」
俺は狭苦しい納屋の中で背伸びをした。軋んでいた身体を伸ばして凝りを祓う。
そして、俺が寝ていた場所を見下ろしてみればホームレスの小汚い爺さんが身体を丸めながら眠っていた。昨晩寒かったから抱き枕代わりに一緒に寝ていた爺さんである。
夏場でも夜は流石に全裸は寒い。布団も何も無かったので酒場の前で蹲っていた爺さんを捕まえて寝床に誘ったのである。
爺さんも最初は嫌がっていたが、俺に抱かれることで人の温もりを思い出したのか、寝る頃には抵抗を忘れて大人しくなっていた。お陰で寒い夜でも凍えずに済んだのである。
「おい、爺さん、朝だぞ、起きろ」
「ムニュムニュムニュ……」
「こりゃあ~、起きそうにないな。まあ、ほっとくか」
俺は納屋を出ると酒場の裏口から店内に入って行った。既に一階ホールにはお客が数人居る。武器を持ち防具を身に着けているところから冒険者のようだ。そいつらは熱心に掲示板に貼り出された依頼書を眺めていた。
「おはよッス、オヤジさん」
カウンターの奥で何かをしていた酒場のオヤジに挨拶を掛ける。しかし、店内を見回してみたがウエイトレスの娘さんは居ないようだった。それだけで俺のやる気がダウンする。
「おお、サブローか、おはよう。何か朝飯でも食うか?」
「うぃ~ッス、喰う喰う~」
「じゃあ、その辺に座って待っていろ。いま持っていってやる」
「サンキュー」
俺が空いているテーブル席に座ると冒険者たち数人が怪訝そうな眼差しで俺をチラ見していた。どうやら全裸の俺が気になるようだ。
「なんだよ、全裸がそんなに珍しいのかよ。あんまりチラチラと見られると照れるじゃあねぇかよ~」
俺が赤面しながら股間を隠すと同時に酒場のオヤジが料理を運んできた。
「ほれ、朝食セットだ」
酒場のオヤジが出してくれたのはパンとスープのセットである。昨晩食べたのと同じメニューだった。
「これさ~、昨日の夜と一緒じゃんか~」
「これがうちの朝食セットだ。イヤなら食うな」
「はいはい、贅沢言わないで食べますよ。たべればいいんだろ」
「30ゼニルだ」
言いながらオヤジはごっつい手の平を出して食事代を請求して来た。
「金を取るのかよ!」
「あたりめーだ、お前さんは何か勘違いしてないか。こっちは商売で飯を出してるんだぞ。金も払わない野郎に食事はたべさせられねぇ~な~」
「はいはい、払いますよ。まったくガメついオヤジだぜ」
俺は悪態をつきながらケツの割れ目に隠し持っていた大銅貨三枚で代金を支払う。
この異世界の通貨はゼニルだが、単位に寄って使われる硬貨が異なっている。
1ゼニルが小銅貨一枚。
10ゼニルで大銅貨一枚。
100ゼニルで小銀貨一枚。
1000ゼニルで大銀貨一枚。
10000ゼニルで金貨一枚である。
金貨だけ大小が無いのである。
俺がケツの割れ目から出した大銅貨で支払いを済ませようとするとオヤジが眉間に皺を寄せながら出していた手を引っ込めた。
「ど、どこから硬貨を出してるんだよ……」
「あれれ~、要らないの~。要らないなら払わないよ~」
「これじゃあ洗わないとならないじゃあねえか……。余計な仕事を増やしやがって……。うわ、くさ……」
ブツクサと文句を垂れながらカウンターの奥に戻って行く酒場のオヤジは、カウンターの奥に引っ込むや否や大銅貨を水で丁寧に洗っていた。
そして、通貨を洗いながら訊いて来た。
「お前さん、もしかして、昨日もらった1000ゼニルすべてをお尻に入れてるのか?」
「そんな訳無いだろう。流石の俺でも何枚ものコインをケツには仕舞えないぞ。残りの殆どは別の場所に隠してある」
「別の場所って、うちの納屋か?」
「なんで分かった。そく当てないで!」
安直な隠し場所はすぐにバレてしまった。このオヤジは名探偵か何かかよ。伊達にハゲてないな、まったくもう。
「そんなところに隠しておいて、盗まれても知らねえぞ」
「大丈夫、大丈夫。まさか酒場の納屋に大金が隠してあるとは誰も思わないさ」
無垢に俺が言うと、酒場の空気が固まった。お客であった冒険者たちが一斉に気配を消す。
そして、掲示板で依頼書を選別していた冒険者たちがユルユルと少しづつ横に動き出す。
その進む先は裏口方向。こいつら俺とオヤジの話を聞いて俺の隠し金を狙ってやがるな。
「あんたら、俺の金を狙ってるの?」
そう俺が訊いた瞬間、冒険者たちが一斉に走り出しだ。完全に俺の金を狙ってやがる。俺も慌てて走り出した。俺の金を盗まれては堪らない。
「おいおい、ちょっと待てや!」
「待てるかッ!」
八人の冒険者たちは一列になって裏口から走り出る。そして、最後の一人が扉の前で振り返った。巨体で出入り口を塞ぐ。
「ここは俺に任せて先に行け!」
「足止めか。死亡フラグが立ってんぞ!」
酒場の裏口前で陣取るのは戦士風の大男。上半身だけのプレートを纏い背中には大刀を背負っていた。頭はマスター同様でツルッパゲである。
「ここは通さねえぜ!」
「おのれ、ハゲ野郎!!」
足止め役を買って出た男は流石に酒場の中では武器を抜かない。大きく両手を広げて通せんぼをしていた。
「舐めるな!!」
「来いや!!」
ジャンプ一線。俺は大男の頭の高さまで飛んだ。
そして、空中で両足を揃えながら体を丸める。背を丸め、両手で両膝を抱えて全身で丸を作った。
「喰らえ、ドロップキック!!」
俺は全身を丸めた体勢から勢いを爆発させた。全身のバネを伸ばして両足裏で大男の胸板を蹴り飛ばした。
その飛び両足蹴りで大男を吹き飛ばす。
「ぐはっ!!」
武器や鎧の総重量は約180キロぐらいだろう。それだけの重量を有する巨体を俺は裏庭まで蹴り飛ばした。閉じていた扉を破壊して裏庭を転がる大男は隣の家の壁に激突して止まる。
「っ……」
何も言わず壁際で蹲る大男は白目を剥いて奇絶していた。後頭部を壁にぶつけたのだろう。アングリと開けた口から前歯がポロリと一本抜け落ちる。
「俺の金は俺が守る!!」
ダッシュで酒場から走り出る俺は残りの七人を追った。そして、直ぐに冒険者たちに追い付く。
冒険者たちは納屋の扉を開けたところで追って来た俺に気が付いて振り返った。その俺の背後では大男が伸びている。
「クソ、こうなったら!」
納屋の扉に手を掛けていた一人を残してすべての冒険者たちが俺に向かって走り出した。全員で俺の妨害をする積りらしい。
俺は走りながら両拳を強く握り締めた。
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