俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

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【第二章】最臭兵器スバル編

2-2【呪いのペナルティー】

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俺は胸の痛みを耐えながらソドムタウンの中を彷徨っていた。

胸の痛みは、まるで鉄の爪と呼ばれて有名だったプロレスラーのフリッツ・フォン・エリックにアイアン・クローで心臓をグイグイと握り潰されているような感覚だった。

それだけ尋常じゃあない痛みなのだ。

そのトリガーとなっているのが、ここソドムタウンの町並みである。

町には沢山の女性が立っていた。

どこを見ても桃色で、セクシー、セクシー、一つ飛ばしてまたセクシーなのだ。

艶やかな肩と、大胆な胸元を露出して、太腿がきわどく見える悩殺的な洋服を纏ったきらびやかなお姉さんたちが、町のあちらこちらに誘惑的に立っているのだ。

怪しくも可憐な蝶々が美しく舞っているようだった。

見るなと言われても見てしまう。

見ちゃあいけないのに見てしまう。

苦しくったって見てしまう。

だって見るだけは、ただなんだもん。

未熟で興味津々な年頃の俺には、見るなと言うのが、そもそも不可能な話である。

若さ溢れる煩悩が剥き出しな年頃ですよ。

多くの健康な男子だったら俺の想いに共感してくれますよね。

だが、見れば見るほど俺の胸は激痛で締め付けられる。

ぎゅっぎゅっぎゅ、とアイアンクローの爪が心臓に食い込んで来る。

これもすべて糞女神の呪いのせいだ。

正確にはペナルティーなのだが、もう呪いの一種だと俺は思っている。

糞ビッチ女神さま、曰く。

『エロイことをすると死ぬペナルティー』

なんだよそれ!

ふざけやがって!

だが、その実は、エッチなことを考えただけで心臓に激痛が走るのだ。

これが呪いと言わずして、なんだと言うのだ。

そして、このソドムタウンは風俗が盛んな大人の楽園都市だ。

俺にはまだまだ早すぎる世界が広がっている。

もしも、糞女神の呪いが掛けられてなければ、確実に大人の階段を僅かな財力に任せて猛ダッシュでかけ上っていただろう。

だが、今の俺は激痛に表情をひきつらせながら、病人が無理矢理歩いているかのように町中を進んでいた。

もう、ゾンビが歩いているようなもんだ。

とりあえず、安全な場所で休もうと考えたが、どこに行っても誘惑的なお姉さんがたが居るのだ。

時には苦しみながら歩いている俺を見て、心配してくれたのか声を掛けてくる優しいお姉さんまでいた。

俺は声を掛けられるたびに死にそうな表情でお姉さんがたを追い払った。

本意ではない……。

本意ではないから悲しかった。

こんな綺麗でセクシーなお姉さんに声をかけられて、楽しい会話どころか、その誘惑的なボディーすら見てはいけないのだ。

チラ見をするたびに激痛が、爪先から脳天に向かって駆け上がる。

こんな罰ゲームは、神とて耐えられない悲劇だろうさ。

もう拷問である。

煩悩溢れる男子には、最高位の懲罰である。

とにかく俺は裏路地に逃げ込んだ。

しかし、裏路地には裏路地専門の売春婦たちが商売をしていた。

マニアックな客層をターゲットにした、更に過激な娼婦や、相当ストライクゾーンが広くないと食い付かないような下手物な娼婦たちである。

中には、明らかに男が女性の姿をした商売人も居た。

完全に裏路地のほうが危険である。

ちょっと恐怖を感じるぐらい危険なのだ。

俺は裏路地に救いを求めるのを避けて、踵を返す。

とりあえず、宿屋を探して部屋を借りて休もうと思ったが、宿屋事態が売春宿屋なので無理っぽかった。

宿屋に入って、一階の酒場で分かった。

二階の部屋から女性の激しいあえぎ声やベッドの軋む音がけたたましく聴こえてくるのだ。

これでは部屋を借りても安めないだろう。

俺は酒場を出て、再びセーフティーゾーンを求めて町中を彷徨った。

「つ、詰んでいる。完全に詰んでいるぞ……」

この町には、逃げ場がない。

もう限界である。

目が霞んできた。

意識を失いそうだ。

そして、俺は倒れた。

道のド真ん中で……。

うつ伏せに……。

駄目だ……。

そして俺は意識を失った。

朦朧とする意識の中で、誰かに引きずられながら運ばれているのが感じられた。

夢の中で魔女に拐われて拘束された時のことを思い出しながら魘される。

悪夢だ──。

意識を失ったままの俺は、また悪夢が繰り返されるのかと危惧した。

僅かに残った俺の意識が必死に魔女から逃れようと抵抗する。

眠りながら寝ぼけたやうに暴れる俺に、引きずって運んでいる相手が「大人しくしなさい!」と怒鳴りながら嗜めていた。

やっぱり女性の声だった。

やっぱり魔女だ…………。

俺は覚悟を決めて諦める。

生け贄にでも何でも捧げやがれ。

俺は呪いの苦痛から逃れるために眠り続けた。

今は睡眠だけが苦痛から逃れる手っ取り早い麻酔だったのだ。

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