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【第四章】ショートシナリオ集パート①
4-11【夜襲】
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日が沈み夜が来る。
夜空を見上げれば月と星が綺麗に輝いていた。
チャリオッツで帰宅して来たオークどものほとんどが、今はアイアンシップのブリッジに立てこもって居るようだ。
ブリッジの列なる窓からランタンの灯りがぼんやりと漏れ出ている。
ブリッジは船全体が見渡せるのだ。
そこを陣取るのが当然かもしれない。
それ以外にもオークたちは、定期的に見回りに出るのだ。
必ず二匹一組でだ。
しかも完全フル装備である。
フルプレートに各々の武器を持っている。
それにしても厄介だな。
一匹ずつの見回りだったら簡単に襲っていたのだけれど、二匹一組だとそうも行かない。
だが、攻略の鍵は、この見回り組を倒すところからスタートだろう。
この二匹を静かに葬り去れれば、あとの八匹は寝首を刈るだけだ。
とにかく俺はコソコソと見回り組の後をストーキングした。
ヤツらの隙を探る。
見回り組の二匹は甲板を回るように進んでいた。
「ブヒブヒぶひ」
「ぶひ、ブヒ、ぶー」
なんかよく分からんが会話をしながら見回りをしているな。
結構ダラダラしていやがる。
時には笑ったり、時には突っ込みを入れていたりする。
襲われるなんて考えても居ないのだろう。
そのわりにはフル装備で出て来るってことは、見回りを指示したリーダー格のオークがかなり慎重なのだろうさ。
リーダーだけは警戒心が高いと見た。
部下とリーダーとでは警戒心に温度差があるのだろう。
「ぶーひ、ブヒブヒ」
「ブヒブヒ」
ん、なんだ、二匹が二手に別れたぞ。
一匹が室内に入って行った。
もう一匹はその建て屋の入り口で待って居るようだな。
待っているオークは詰まらなそうに、壁に寄っ掛かってやがる。
あー、そうか、分かったぞ。
ここはトイレだな。
壁にプレートも貼ってあるや。
ならば、この隙に待って居るオークを片付けようか。
小便なら直ぐに戻るぞ、急げ。
大便でありますようにと俺は祈りながら異次元宝物庫からロングボウを取り出した。
距離は10メートル弱だろうか。
オークのヘルムは顔面が丸見えだ。
そこをピンポイントで狙う。
当たるかな?
俺にはビキニアーマーの修正で命中率向上も付いている。
念のためにフォーカスアイの支援魔法もかけておこう。
攻撃の命中率向上魔法だから弓矢にも有効なはずだ。
「フォーカスアイ」
俺は小声で魔法を唱える。
すると俺の全身が、一瞬だが淡く輝いた。
よし、準備万全だ!
よーく、狙って──。
呼吸を止めて──。
集中して──。
────。
放つ!!
よし、命中したぞ、顔面に!
顔面を射ぬかれたオークは壁に背を預けたまま尻餅をつく。
俺は射ぬいたオークの元に走った。
絶命を確認してからトイレの出入口の横でバトルアックスを振りかぶり待つ。
さあ、出てこいや!
「ブヒ~」
トイレを済ませたオークがハンカチで手を拭きながら出て来た。
オークなのに清潔だな。
そして俺はバトルアックスを全力で振るう。
「おらッ!」
「ブっ!」
バトルアックスによる横一文字のフルスイングがオークの首を跳ね飛ばした。
ゴトンと音を発ててオークの頭が床に落ちると、もっちりとした胴体が仰向けに倒れた。
よし、二匹のオークを倒したぞ!
ここからはただの夜襲だ。
寝首を刈るような手順で始末して行くだけだぞ。
俺は船内に侵入して行く。
武器は狭い船内でも振れるようにショートソードに替えた。
なんやかんや言っても、ショートソードって役に立つよね。
洞窟や狭い住居内だと大きな武器を振れないからな。
壁とか天井に当たって攻撃が止まんだよね。
だから早くショートソードのマジックアイテムが欲しいもんだ。
魔法使いギルドに売ってたけれど、折角ハクスラスキルを持ってるんだから、自分で拾ったアイテムとかだけで回したいんだよね。
だから売られている魔法のスクロールにも手を出さないでいるんだ。
買ったら簡単に揃うけど、それじゃあ味気ないもの。
拾ったアイテムのあり難みや、達成感が失くなっちゃうものね。
だから俺の中だけで自分ルールを決めたのだ。
拾ったり冒険中に手に入れたマジックアイテムしか使わない。
拾ったり冒険中に手に入れたスクロールからしか魔法は覚えないぞ。
──ってね。
まあ、縛りルールである。
とにかく、買わないだ。
まあ、いつまで守れるか分からんけれどね~。
んん、おやぁ~。
この船室に誰か居るな。
まずはコソコソと覗いて見よう。
「ぶひブヒぶひー」
「ぶーひブーヒ!」
んん、なんだなんだ。
二匹のオークが絡み合いながらベッドで寛いで居るぞ。
「ブヒブヒぶひ!」
「ブひー、ぶヒー!!」
んん、違うぞ、これは!!
やってるな!
やっぱり、やってるよね!
ここで詳しく表現すると性的表現に引っ掛かっちゃうから詳しく語れないけれどさ、間違いなくやってますわ!
こいつら相撲を取ってますわ!!
どすこいドスコイって激しく情熱的になっていきますわ!
もう、土俵際一杯一杯の局面ですよ!!
あれ……?
可笑しいな……?
関取が全裸で相撲を取るのは常識だけど、二匹ともチ♡コが付いていませんか?
やっぱり付いてますよね?
付いてるじゃんか!?
え、なに!?
これはアブノーマルショーですか!?
完全に黒白ショーじゃなくて、黒黒ショーですよね!!
やっぱり土俵って女人禁制なの!!
だぁー、もー、見たくないわ!!
俺は素早く船室に侵入するとザクザクと二匹のラバーズを串刺しにした。
二匹は抵抗するどころか悲鳴すら上げられずに天昇して行く。
ふう……。
最後まで愛する者の腕の中で死ねたのだ。
こいつらだって本望だろうさ。
「さて──」
俺は静かに船室を出て次の獲物を探した。
あと六匹ぐらいだろう。
しばらく船内を探索していると、窓の外にオークの姿を発見する。
一匹だけだ。
なんだろう、甲板で風に当たって居るようだな。
しかしフル装備だぞ。
フルプレートでガッチガチだわ。
んん?
何か持っているぞ。
花を一輪持っていやがる?
「ぶひ、ぶひ、ぶひ……」
「ぶひ」を一言述べる度に花びらを一枚ずつむしってる……。
花占いですか……?
なんなんだよ、ここのオークは!!
センチですか!?
センチメンタルですか!?
センチメンタルジャーニーですか!?
イヨはまだ16だからかな!?
こんなヤツらばっかかい!
もー、いいや、殺っちゃいますわ!!
あいつを殺るならバトルアックスだろう。
こっそり背後から近付いて、バッサリとぶった斬るか。
即実行だ。
ソローリソローリ……。
クルリ。
あ、オークが振り返った!?
「ぶひ?」
「ども……」
「ブヒーー!!」
ヤバイ!
完全にバレました!
これ以上大声を上げさせられない!
俺は残った数メートルの距離をダッシュして駆け寄った。
そして、バトルアックスの兜割りを繰り出した。
「ぶひ!!」
畜生、躱されたぞ!!
オークは腰にぶら下げていた刺々しいメイスを手に取ると俺の顔面目掛けて振るって来る。
あぶね!
刺の一本が頬をかする。
俺はその一撃を躱すと同時に袈裟斬りにオークの胸を切り裂いた。
プレートメイルが裂けて鮮血が飛び散る。
決まったか!?
フラフラと後退したオークは壁にぶつかって止まる。
「ぶ、ぶぅひぃ……」
よろめくオークは、最後の力を振り絞って壁にあった非常ベルのボタンを拳の柄で叩いた。
えっ、マジ!?
その設備は生きてるの!?
刹那、船内にけたたましい非常ベルの音が鳴り響く。
いーきーてーるーよー!!
そしてオークは事切れたのか倒れ込む。
俺は念のためオークの頭に、もう一撃バトルアックスを振るっといた。
半分は八つ当たりである。
「畜生、これでバレたな……」
俺は非常ベルの音色を聴きながら再び闇の中に姿を隠した。
オークの残りは五匹ぐらいだろう。
何とかなるだろうさ。
夜空を見上げれば月と星が綺麗に輝いていた。
チャリオッツで帰宅して来たオークどものほとんどが、今はアイアンシップのブリッジに立てこもって居るようだ。
ブリッジの列なる窓からランタンの灯りがぼんやりと漏れ出ている。
ブリッジは船全体が見渡せるのだ。
そこを陣取るのが当然かもしれない。
それ以外にもオークたちは、定期的に見回りに出るのだ。
必ず二匹一組でだ。
しかも完全フル装備である。
フルプレートに各々の武器を持っている。
それにしても厄介だな。
一匹ずつの見回りだったら簡単に襲っていたのだけれど、二匹一組だとそうも行かない。
だが、攻略の鍵は、この見回り組を倒すところからスタートだろう。
この二匹を静かに葬り去れれば、あとの八匹は寝首を刈るだけだ。
とにかく俺はコソコソと見回り組の後をストーキングした。
ヤツらの隙を探る。
見回り組の二匹は甲板を回るように進んでいた。
「ブヒブヒぶひ」
「ぶひ、ブヒ、ぶー」
なんかよく分からんが会話をしながら見回りをしているな。
結構ダラダラしていやがる。
時には笑ったり、時には突っ込みを入れていたりする。
襲われるなんて考えても居ないのだろう。
そのわりにはフル装備で出て来るってことは、見回りを指示したリーダー格のオークがかなり慎重なのだろうさ。
リーダーだけは警戒心が高いと見た。
部下とリーダーとでは警戒心に温度差があるのだろう。
「ぶーひ、ブヒブヒ」
「ブヒブヒ」
ん、なんだ、二匹が二手に別れたぞ。
一匹が室内に入って行った。
もう一匹はその建て屋の入り口で待って居るようだな。
待っているオークは詰まらなそうに、壁に寄っ掛かってやがる。
あー、そうか、分かったぞ。
ここはトイレだな。
壁にプレートも貼ってあるや。
ならば、この隙に待って居るオークを片付けようか。
小便なら直ぐに戻るぞ、急げ。
大便でありますようにと俺は祈りながら異次元宝物庫からロングボウを取り出した。
距離は10メートル弱だろうか。
オークのヘルムは顔面が丸見えだ。
そこをピンポイントで狙う。
当たるかな?
俺にはビキニアーマーの修正で命中率向上も付いている。
念のためにフォーカスアイの支援魔法もかけておこう。
攻撃の命中率向上魔法だから弓矢にも有効なはずだ。
「フォーカスアイ」
俺は小声で魔法を唱える。
すると俺の全身が、一瞬だが淡く輝いた。
よし、準備万全だ!
よーく、狙って──。
呼吸を止めて──。
集中して──。
────。
放つ!!
よし、命中したぞ、顔面に!
顔面を射ぬかれたオークは壁に背を預けたまま尻餅をつく。
俺は射ぬいたオークの元に走った。
絶命を確認してからトイレの出入口の横でバトルアックスを振りかぶり待つ。
さあ、出てこいや!
「ブヒ~」
トイレを済ませたオークがハンカチで手を拭きながら出て来た。
オークなのに清潔だな。
そして俺はバトルアックスを全力で振るう。
「おらッ!」
「ブっ!」
バトルアックスによる横一文字のフルスイングがオークの首を跳ね飛ばした。
ゴトンと音を発ててオークの頭が床に落ちると、もっちりとした胴体が仰向けに倒れた。
よし、二匹のオークを倒したぞ!
ここからはただの夜襲だ。
寝首を刈るような手順で始末して行くだけだぞ。
俺は船内に侵入して行く。
武器は狭い船内でも振れるようにショートソードに替えた。
なんやかんや言っても、ショートソードって役に立つよね。
洞窟や狭い住居内だと大きな武器を振れないからな。
壁とか天井に当たって攻撃が止まんだよね。
だから早くショートソードのマジックアイテムが欲しいもんだ。
魔法使いギルドに売ってたけれど、折角ハクスラスキルを持ってるんだから、自分で拾ったアイテムとかだけで回したいんだよね。
だから売られている魔法のスクロールにも手を出さないでいるんだ。
買ったら簡単に揃うけど、それじゃあ味気ないもの。
拾ったアイテムのあり難みや、達成感が失くなっちゃうものね。
だから俺の中だけで自分ルールを決めたのだ。
拾ったり冒険中に手に入れたマジックアイテムしか使わない。
拾ったり冒険中に手に入れたスクロールからしか魔法は覚えないぞ。
──ってね。
まあ、縛りルールである。
とにかく、買わないだ。
まあ、いつまで守れるか分からんけれどね~。
んん、おやぁ~。
この船室に誰か居るな。
まずはコソコソと覗いて見よう。
「ぶひブヒぶひー」
「ぶーひブーヒ!」
んん、なんだなんだ。
二匹のオークが絡み合いながらベッドで寛いで居るぞ。
「ブヒブヒぶひ!」
「ブひー、ぶヒー!!」
んん、違うぞ、これは!!
やってるな!
やっぱり、やってるよね!
ここで詳しく表現すると性的表現に引っ掛かっちゃうから詳しく語れないけれどさ、間違いなくやってますわ!
こいつら相撲を取ってますわ!!
どすこいドスコイって激しく情熱的になっていきますわ!
もう、土俵際一杯一杯の局面ですよ!!
あれ……?
可笑しいな……?
関取が全裸で相撲を取るのは常識だけど、二匹ともチ♡コが付いていませんか?
やっぱり付いてますよね?
付いてるじゃんか!?
え、なに!?
これはアブノーマルショーですか!?
完全に黒白ショーじゃなくて、黒黒ショーですよね!!
やっぱり土俵って女人禁制なの!!
だぁー、もー、見たくないわ!!
俺は素早く船室に侵入するとザクザクと二匹のラバーズを串刺しにした。
二匹は抵抗するどころか悲鳴すら上げられずに天昇して行く。
ふう……。
最後まで愛する者の腕の中で死ねたのだ。
こいつらだって本望だろうさ。
「さて──」
俺は静かに船室を出て次の獲物を探した。
あと六匹ぐらいだろう。
しばらく船内を探索していると、窓の外にオークの姿を発見する。
一匹だけだ。
なんだろう、甲板で風に当たって居るようだな。
しかしフル装備だぞ。
フルプレートでガッチガチだわ。
んん?
何か持っているぞ。
花を一輪持っていやがる?
「ぶひ、ぶひ、ぶひ……」
「ぶひ」を一言述べる度に花びらを一枚ずつむしってる……。
花占いですか……?
なんなんだよ、ここのオークは!!
センチですか!?
センチメンタルですか!?
センチメンタルジャーニーですか!?
イヨはまだ16だからかな!?
こんなヤツらばっかかい!
もー、いいや、殺っちゃいますわ!!
あいつを殺るならバトルアックスだろう。
こっそり背後から近付いて、バッサリとぶった斬るか。
即実行だ。
ソローリソローリ……。
クルリ。
あ、オークが振り返った!?
「ぶひ?」
「ども……」
「ブヒーー!!」
ヤバイ!
完全にバレました!
これ以上大声を上げさせられない!
俺は残った数メートルの距離をダッシュして駆け寄った。
そして、バトルアックスの兜割りを繰り出した。
「ぶひ!!」
畜生、躱されたぞ!!
オークは腰にぶら下げていた刺々しいメイスを手に取ると俺の顔面目掛けて振るって来る。
あぶね!
刺の一本が頬をかする。
俺はその一撃を躱すと同時に袈裟斬りにオークの胸を切り裂いた。
プレートメイルが裂けて鮮血が飛び散る。
決まったか!?
フラフラと後退したオークは壁にぶつかって止まる。
「ぶ、ぶぅひぃ……」
よろめくオークは、最後の力を振り絞って壁にあった非常ベルのボタンを拳の柄で叩いた。
えっ、マジ!?
その設備は生きてるの!?
刹那、船内にけたたましい非常ベルの音が鳴り響く。
いーきーてーるーよー!!
そしてオークは事切れたのか倒れ込む。
俺は念のためオークの頭に、もう一撃バトルアックスを振るっといた。
半分は八つ当たりである。
「畜生、これでバレたな……」
俺は非常ベルの音色を聴きながら再び闇の中に姿を隠した。
オークの残りは五匹ぐらいだろう。
何とかなるだろうさ。
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