俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
233 / 611
【第八章】ショートシナリオ集パート②

8-31【頂から見える景色】

しおりを挟む
キノコの森の洞窟の中で俺は暖炉の前に腰掛けるクラーク爺さんに訊いてみた。

「なあ、クラーク爺さん」

「なんだ、小僧?」

「この森で一番強いマタンゴって居ないか?」

「一番強いマタンゴか?」

「ああ、そうだ」

一番強いマタンゴを俺が知りたい理由は、ただ一つだ。

そう、魔女の指輪をそいつに取り付けるためである。

すべては嫌がらせのためだった。

こんなキモイ森のマタンゴに指輪が嵌め込まれたら、いろいろとショックだろう。

まさか俺がマタンゴに寄生されたのではないかと確認するのですから大変だろうさ。

何せキノコだらけだものな。

マタンゴからキノコを全部剥ぎ取って、俺の外観を確認するだけでも大変な作業だろう。

作業的にも、精神的にも苦痛になるだろうさ。

だからこそ、この森にわざわざ危険を承知の上で入って来たのだ。

そして俺の質問にクラーク爺さんは古びたカップに注がれた椎茸茶の水面を見詰めながら答える。

「そうだな、やっぱりあいつだろうか……」

「あいつとは誰だ?」

勿体ぶるな、クラーク爺さん。

だが、それだけ悩めるのだろうさ。

何せ、このキノコの森には多彩なマタンゴが生息していやがる。

様々な武器を持ったマタンゴから、鹿や馬のようなマタンゴも見た。

だから一番強いマタンゴも、それなりに楽しみな存在であった。

さあ、クラーク爺さんは、なんて答えるかな?

あいつとは、どいつだ!?

「アースジャイアントのマタンゴかのぉ」

えっ……?

ジャイアント……?

アースジャイアントですか……?

でも、アースって言うからには大地のジャイアントですよね?

なんで、土塊がキノコに汚染されますか?

「マジでアースジャイアントがマタンゴ化しているの……?」

「正確にはマタンゴではないが、全身キノコだらけじゃ」

「ワケワカメだわ……」

「アースジャイアントの岩の表面に、キノコが付着しているだけなんじゃ。まあ、それで、見た目は大きなマタンゴに見えるってわけじゃよ」

「じゃあ、そいつは、キノコだらけの、ただのアースジャイアントってことか?」

「まあ、そうなるのぉ」

「大きさは……、身長はどのぐらいなんだ?」

「20メートルぐらいかのぉ」

「そこら辺に生えている、大きなキノコより高いじゃんか……」

おそらく2倍の高さだ。

「お前さん、まさかアースジャイアントを倒す積もりか?」

「まさか、勝てるわけないだろ……」

「そうかえ」

「相手は20メートルの巨人だぞ。流石の俺でも軽く踏み潰されて終わりだわ」

「まあ、そうなるわな」

「ただ、ちょっくらその巨人さんには会って見たいな~」

「ほほう」

クラークじいさんは少し椎茸茶を啜った後に話し出す。

「アースジャイアントは巨人と言ってもエレメンタルじゃ。人間と会話が出来る文化を持ち合わせてはいないぞ。あれは大自然のままに生きている妖精だからのぉ。知能はあるが言葉を持たぬ。対話もままならん」

「分かってるって。夜ならマタンゴたちも眠って活動が緩いならば、アースジャイアントに会えるかな?」

「まあ、見るだけなら、この洞窟の上の絶壁を昇れば、居場所ぐらい分かるかも知れんぞ。何せアースジャイアントはデカイからな。動いただけで良く分かるはずだ」

「OK、クラーク爺さん。じゃあ俺は行くぜ!」

俺は廊下を進み出入り口を目指した。

名残惜しいのか、クラーク爺さんは俺を出入り口まで見送ってくれる。

「気を付けるんだぞ、小僧……」

「クラーク爺さんも元気でな!」

俺とクラーク爺さんは、拳をゴチンっと合わせてから別れた。

俺は閂を外すと鉄扉を開けて外に旅立つ。

外に出てみるとマタンゴたちの姿は見えなかった。

おぞましいキノコの森だけが月夜に映る。

「じゃあな……」

クラーク爺さんは、直ぐに鉄扉を閉めた。

あー、クラーク爺さんは、ここで朽ちる積もりなんだ。

独りでさ……。

この森が、そんなに好きだったんだな。

俺は直ぐに、鉄扉の横から岩の壁を、スキルを使って登り始めた。

【クライムウォークLv1】
岩場などをよじ登る技術が向上する。

まさか、岩壁を登る機会が来るなんて考えてもいなかったぜ。

本当に、このスキルだけで絶壁を登りきれるのかな?

まあ、覚えたスキルを信じるか。

てか、もう疲れて来たぞ。

まだ、半分も登ってないのにさ。

やはりこのぐらいの絶壁を登るのは、もっとスキルレベルが上がってからだっただろうか……。

ちょっぴり後悔だ……。

まあ、登り始めたんだから仕方ないか。

頑張って登るぞ!!

「えっさ、ほっさ、えっさ、ほっさ!!」

そんなこんなで俺は絶壁の頂上まで登りきった。

岩山に登頂する。

「月が綺麗だ」

夜空を見上げれば真ん丸い満月が煌々と輝いていた。

「はぁ~。すげー、疲れたわ……」

途中で何度か心が折れるところだったぜ。

でも、登り始めたら登りきるしかないもんな。

途中で引き返せないもの。

すると頂上ではクラーク爺さんが何故か待って居た。

「よう、久しぶりじゃのぉ」

「なんでぇーーー!!!」

「ああ、洞窟の中に上に登れる螺旋階段があってな」

「それを俺にも使わせろよ!!」

「それにしてもお前さん、凄いな。この絶壁を素手で登りきるなんてのぉ」

「疲れたわ! すげー疲れたわ!!」

「だろうな~」

何こいつ冷静に言ってやがるんだ!!

すげー意地が悪いな、糞爺が!!

この絶壁は30メートルぐらいあったんだぞ!!

疲れるし、高くて怖くて疲れるんだぞ!!

この、バカぁ!!

「ほれ、見てみい」

クラーク爺さんがキノコの森の中を指差した。

「えっ?」

俺はクラーク爺さんの言うがままにキノコの森を眺めた。

すると夜の闇の中で、大きなキノコの傘がグラグラと揺れているポイントがあった。

「夜なのに動いている?」

俺は目を凝らした。

「あそこにアースジャイアントがいるのか……」

月明かりが照らし出す景色を俺たちが眺めていると、キノコの傘を越えてアースジャイアントの姿がニョッキリと見えた。

頭が突き出て、上半身まで見える。

それは巨大なキノコのタワーである。

まるでキノコのタワーがナメクジのようにノソノソと歩いているのだ。

クラーク爺さんが冷静に言う。

「ありゃ~、20メートル以上あるな。おそらく23メートルかのぉ」

「だな~。そのぐらいありそうだな」

「成長したのかのぉ」

よし、やる気が湧いてきたぞ。

あれに指輪を付けれれば、最高の嫌がらせに成りそうだぜ。

くっくっくっ………。

俺は嫌がらせのためなら全力を尽くせるタイプなのだ。

「見ていろ、糞魔女が」

俺は月夜に照らされながら怪しく微笑んだ。

強く探知指輪を握り締める。

「アースジャイアントのマタンゴに、この指輪を埋め込んでやるぜ!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...