俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

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【第十章】蠱毒のヒロイン編

10-6【タンカー・タイタス】

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俺とレッドリザードマン族の族長タイタスとの一騎討ちが始まろうとしていた。

族長と言ってもタイタス以外のレッドリザードマンは始末されたのだ。

もう族長を名乗れないかもしれないが、こいつは最後の誇りとして生き残ることよりも、一騎討ちで意思を貫くことを決めたのだ。

ならば男らしく受けてたってやろうじゃあないかと俺は思ったのである。

全身分厚いフルプレートに身を包んだタイタスが、力強く斬馬刀を構えていた。

体格は腹が出たちゃんこ型でパワースタイルのファイターに見える。

頭部に被った蜥蜴型のプレートヘルムの隙間から鋭い眼光が窺えた。

蜥蜴人間の癖に凛としている。

俺はロングソードとショートソードを二刀流に構えながらタイタスに分かりきった質問を唱えた。

「何故に命乞いもせずに一騎討ちを挑む?」

「例え一族が壊滅させられたとしても、族長だけが逃げてどうする。むしろ共に死ぬのが族長の務めだ!」

「ならば死を望むのか?」

「それはお前を一騎討ちで殺してからの話だぜ!!」

なるほどね。

覚悟は出来てて、あとは道連れが欲しいのかよ。

それで族長として、戦士としてのプライドが保たれるわけだ。

怖い思想だな。

でも、有る意味で勉強になるぜ。

義ってやつだな。

「ならば、正々堂々と受けて立つ!」

「人間よ、感謝する!!」

そう述べるとタイタスが斬馬刀を振りかぶって打ち込んで来た。

「うらぁ!!」

右から左へと力強く薙ぎ払われる斬馬刀の一打。

俺は高々にジャンプして斬馬刀を飛び越えた。

そのまま空中からタイタスに飛び掛かる。

そして俺が振るったロングソードがタイタスの肩にヒットした。

ガキィーーンと鋼が鳴り響く。

「ちっ!」

俺の一撃はタイタスのプレートをへこませたが切り裂いていない。

「硬いッ!」

その一言だ。

「無駄だ。俺の鎧の厚さは人間が食らうステーキ肉より厚いんだぜ!!」

「そりゃあ食べ応えが有りそうな話だな」

今度は左から右へと斬馬刀が振られる。

今度は頭を狙った高い振りだった。

俺は身を屈めて回避する。

そして低い姿勢のままダッシュした。

「これならどうだ!!」

俺はスライディングでタイタスの脛に全体重を乗せたキックを打ち込んだ。

「スライディングキィーーク!」

だが、俺の低空蹴りがタイタスの脛を蹴り飛ばしたが止められる。

タイタスはバランスを崩すどころかぐらつきすらしなかった。

「あらら……」

失敗だった。

凄く足腰が丈夫なのね~。

これだけ重いプレートメイルを着込んでいるのだ。

その全体重を支えているのだから、この程度の蹴りでは揺らがないってことですか。

「小手先の技なんて弾き返しますか……」

「当然ッ!」

俺が地べたに寝転んだまま反省していると、タイタスが斬馬刀を逆手に持ち変えて突いて来る。

「おわわわわ!!」

俺は横に転がりながら逃げるように回避した。

それをタイタスが必要に追って来る。

何度も何度も俺を狙った斬馬刀の刀身が地面を突き刺した。

そして、逃げきった俺が立ち上がると、タイタスも逆手に持っていた斬馬刀を持ち直して構えを築く。

また俺たちは睨み合った。

さて、どう攻めようか……。

やっぱり頑丈って厄介だよね。

下半身を攻めてみたが、小手先の攻撃じゃあ通じないしさ。

もっと時間を掛けて確実に攻めて行くかな。

地道にヒットさせればスタミナ的にも俺のほうが勝つだろう。

すると、俺たちの戦いを見ていたヒルダが述べた。

「アスランさま。手こずっておられますなら、わたくしが代わりましょうか?」

「イラッ!!」

何を言い出すかな!?

俺は怒鳴るようにヒルダに言った。

「まだ始まったばかりじゃんか、今のは遊びだよ。本番はこれからだからさ!!」

「そうでありますか」

うわー、絶対に信じてないわ……。

だって、スゲー冷めた目で見ているもの……。

「ヒルダ、お前は俺を信じていないな!!」

「ですが、アスランさま」

うわ、まだ口答えしますかね!?

だって俺は、一度お前に勝ってるじゃんか!?

俺のほうがお前よりも強いよね!!

なのに、なんでそんなことを言うかな、この子わさ!?

そんなに俺は不甲斐ないですか!?

「アスランさま」

「なんだよ、ヒルダ!?」

「後ろをご覧くださいませ」

「えっ?」

殺気!?

俺は横にずれながら身を翻した。

俺の脇を斬馬刀の突きが過ぎて行く。

「うわ、あぶね!!」

「女とくっちゃべってばかりいると、命を落とすぞ!!」

「仰る通りだが、後ろから斬りかかるなんて卑怯だぞ!!」

「それは人間の常識だろう。我々リザードマンの世界では、隙を見せるほうが愚かなのだ。 むしろ恥だ!!」

「仰る通りですわん!!」

畜生が!

言い返す言葉が無いわん!!

ならば!

「ライトニングボルト!」

「ぐわっ!!」

よし、流石は電撃魔法だな。

鉄を通して中身に効いてるぜ。

俺はタイタスが苦痛に顔を歪めている隙に走り寄った。

そして、跳躍からの~。

「ドロップキックだ!!」

俺は全力の両足キックでタイタスの胸を蹴り飛ばした。

しかし……。

「山っ!!」

動かない。

揺るがない。

俺は跳ね返されたように着地した。

だが、諦めない。

すぐさま追撃に移る。

「そらっ!!」

俺はロングソードで斬りかかる。

そしてロングソードがタイタスの頭を横から強打した。

斬ったつもりだったが、それは斬撃ではなく打撃に質が変わっていた。

しかし、その刹那に勝機を見つける。

甲冑の隙間だ。

強打で殴られたタイタスが少し仰け反った際に、顎の下に僅かな隙間を見つける。

兜と胸当てのジョイント部分だ。

俺は発見した隙間に向かってショートソードを突き立てていた。

体が自然に動いていたのだ。

「ぐはっ!?」

俺のショートソードが喉元に滑り込んで来ると、タイタスが声を上げて退いた。

しかし、当たりが浅かった。

プレートメイルの中に着込んでいるだろうチェーンメイルを貫いた感触はなかったのだ。

「なるほどね。押しても引いても駄目ならば、ジョイント部分を狙えってことかい」

俺が呟くとヒルダが言う。

「やっとお気付きになりましたか、アスランさま」

「うわー、ヒルダさんは最初っから気付いてましたか!?」

「気付くと言うよりも、最初っから知ってました。基本ですね」

「そーですか、偉いですね!!」

うわー、超ムカつくわ!!

ヒルダはムカつくな!!

こんなキャラだとはおもわなかったぜ!!

もう、絶対に決めたぞ!!

この戦いが終わったら、スカル姉さんのところに預けよう!!

この生意気なメイドたちを全員スカル姉さんのところに置いて来てやるぞ!!

絶対に一人で旅をしたほうが気楽でいいわ!!

どうせ俺はボッチだよ!!

ボッチ主義者ですわ!!

「ぬぉおおお、だから余所見ばかりしてるなよ!!」

タイタスが再び背後から斬り掛かって来た。

俺はヒラリと斬馬刀を躱すとジャンプした。

「ジャンプからの~!」

俺は空中で兜割りの構えで二刀流を振り被っていた。

「ヘルムクラッシャー!!」

まずはロングソードの全力で、タイタスの脳天を殴り付けた。

斬激が効かなくとも衝撃は打ち込める。

その衝撃がタイタスの首を縮めた。

更に──。

「ウェポンスマッシュ!!」

今度は横振りのショートソードがタイタスの頭を横殴った。

二打の衝撃にタイタスが目を回している。

「さて、閉めに入りますか」

そう述べてから俺はタイタスの横にスルリと動くと右膝の裏側にロングソードを打ち込んだ。

「ぐあっ!!」

タイタスが悲鳴に近い声を上げる。

更にショートソードでタイタスの右脇の下を突いた。

「うぐっ!!」

またタイタスが声を上げた。

俺が自分の二刀を見れば赤い血液が付いていた。

完全にチェーンメイルを貫いてダメージを与えている。

俺は尚も滑るように移動してタイタスの背後を取り続けていた。

「どこだ、人間! どこに行った!?」

動きが鈍っているタイタスは、俺が背後に隠れているのが見つけられないのだろう。

まあ何せ、俺がそう動いているのだから当然である。

ハイド・イン・シャドーってやつよ。

これを新スキルとして習得したいんだよね。

そして俺はタイタスの背後からスキルを使ってロングソードを振るった。

「ウェポンスマッシュ!!」

掬い上げるラインで振られたロングソードがタイタスの股間を打つ。

「はぬっ!!」

股間を切られたタイタスが内股になって前屈みに沈んだ。

俺は素早く3メートルの距離を作るために後退するとショートソードを捨ててロングソード一本を両手で確りと構える。

これがラストだ。

「ダッシュクラッシャー!!」

俺は3メートルダッシュからの強打スキルを繰り出す。

狙いは前屈みになって露出されたタイタスの後首。

延髄がプレートとヘルムの隙間から僅かに見えていた。

そこをピンポイントで狙う。

「りぃぁあああ!!」

小ジャンプからの攻撃。

俺のロングソードの切っ先が、ズブズブとタイタスの延髄に突き刺さる。

その刀身が貫通してタイタスの顔面から姿を表した。

一緒に大量な血飛沫が飛び散る。

「勝ったかな!?」

【おめでとうございます。レベル29になりました!】

よし、レベルアップってことは勝ったってことだな!!

ヒャッハー!!

勝利である!


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