俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

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【第十章】蠱毒のヒロイン編

10-17【蠍美少女バーバラ】

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「うぎゃぁぁああああ!!!」

毒を注入された百足女郎のアイラが体を捩りながらのたうち回っていた。

ムカデの体がグネグネと暴れまわる。

するとサソリ型のビキニアーマーを纏った美少女がふてぶてしく言った。

「ふっふっふっ。長い間、お母様の宿敵として君臨していたアイラもこれで終わりね~。私の猛毒は痛いでしょう~」

キュートなお尻から伸びてる尻尾の毒針から紫色の液体がダラリと垂れた。

まさに毒々しい。

「ぎぃーざぁーまぁーー!!」

アイラは苦痛に顔を歪めながら体を丸めて球体になる。

だが、その球体は小刻みに震えていた。

「こ、これで少しは毒が回るのが遅くなるはずだわ……」

体を丸めながらアイラが言った。

えっ!?

本当にそれで毒が回らなくなるの!?

だが、蠍男爵婦人のグレーテの娘と名乗るバーバラは、くびれた腰に両手を置きながら生意気に言い返す。

「あらあら、丸まっちゃって、お可愛いこと~。でも、毒を一時的に押さえても、その体勢じゃあ戦えなくてよ~」

確かに丸まってるから戦えないな。

追撃をされたら終わりじゃん。

あいつ、どうするんだろ?

「ダーリン、ここは私の代わりに戦ってくださいませ!」

アイラが何故か俺に振ってきた。

「ダーリンって!? いやいやいや、俺はダーリンじゃあないからさ! てか、俺に振らないでくれよ!!」

何を言い出すんだよ、この顔だけのおばさんは!?

「人を勝手にダーリンとかにしないでくださいよね!!」

するとバーバラが呆れ顔で言う。

「へぇ~、人間。あんた、こいつとつがいなんだ~」

「いやいやいや、なんで俺がこいつと夫婦なわけだ!?」

「結構とさ~、年増好きなんたね~」

「ちゃうわい!!」

「ダーリン、そこは認めなさって」

「認めるか、ババア!!」

「もう、ババアなんて酷いわ。それでもいいって言ってくれたじゃあないかさ!」

「言ってねーよ!! 何を妄想全開でしゃべってますか!!」

俺と丸まってるアイラが言い争っていると、バーバラが長い金髪を掻き上げながら言った。

「痴話喧嘩はそのぐらいにしてくれないかしら~」

「痴話喧嘩じゃあねえよ、俺は本当にこいつとなんの関係もないんだからさ。そもそも森の外から来たばかりだし!!」

「そんなのどうでもいいわ~」

バーバラは覚めた視線で俺を見下すように見ていた。

スマートで整った顔立ち。

青い瞳に金髪の長髪。

年の頃は人間ならば十代だろう。

胸の膨らみは魅力的で、腰のくびれはセクシーだった。

そして麗しい乙女の裸体を包むのは、サソリの甲羅のようなピンク色のビキニアーマーだ。

そのビキニパンツからサソリの毒針尻尾が生えている。

なんかセイントのクロスみたいだわ。

セイントのクロスがなんだかは、悪いが察してもらいたい。

とにかくだ。

厨二臭いが衣装だが、セクシーで堪らないほどにナイスボディである。

あたたたたっ……。

ちょっぴり胸が痛かったわ……。

でもさ~。

こいつ、これでも昆虫なんだよな~。

ある意味で残念なヤツだわ~。

あのサソリの尻尾はマジでお尻から生えているのかな?

「さて、アイラも無効化したし、あとは人間でも食べましょうかね~」

「あー……。お前も俺を食べたいわけだ……」

「当然よ。何せこの森に人間が来るなんて、滅多にないことですからね~」

そんでもって、俺に敗北したら交尾をしようとか言い出すんだろうな。

このパターンは鉄板だろうさ。

面倒臭いが、やるしかないか。

とにかく、こいつをぶっ倒して、魔法使いの安否を確認したら壁から逃げだせば問題ないだろう。

こいつらは壁から出れないんだからさ。

外の世界には追ってはこれないんだもの。

「うし、じゃあ。とっとと片付けるかな!!」

俺はバトルアックスを両手で前に確りと構えた。

こいつはアイラほど硬くはないだろうさ。

スピードも、さっきの動きを見るからに、そんなに速くはない。

問題はお尻の毒針だな。

アイラの装甲を貫くほどの鋭さだ。

俺のレザーアーマーなんて、簡単に貫くだろう。

もしかしたら、左腕のプレートメイルも貫くかもしれないぞ。

とにかく、毒を射たれたらヤバイだろう。

一貫の終わりだ。

一撃必中───。

それだけは気を付けないとな。

「じゃあ、行くわよ~」

そう言うとバーバラが、姿勢を低く構えた。

かなり低い構えだ。

頭を下げて両手を前に着く。

地に着いた両手の指先で上半身を支える姿勢は、まるで短距離走のクラウチングスタートのようだった。

高く上げたお尻から、長いサソリの尻尾が揺れている。

雌豹の構えだが、サソリの尻尾のお陰でやっぱりサソリの構えに見える。

あー、最初は真っ直ぐなダッシュで来るのね。

「行くわよ~。よーーーい、どんっ!!」

その掛け声と同時にバーバラがロケットダッシュをした。

速い。

でもさ~。

もう古いよね~。

クラウチングスタートからのロケットダッシュが最速を産むなんてさ、もう時代遅れだよ。

「ほれっ」

俺はダッシュした直後のバーバラにバトルアックスを投げ付けた。

「きゃっ!!」

ロケットダッシュ直後のバーバラは、俺の投げたバトルアックスが脛の甲冑に当たってバランスを大きく崩してしまう。

「あわわわ!!」

そのままの勢いで、前に転倒しそうになるのを必死に堪えていた。

そりゃあ慌てるよね。

転倒を堪えるのは、二本足の生物なら必然だもの。

サソリには分かんないかな~。

「そぉ~~れ!」

投擲したバトルアックスのあとにダッシュしていた俺は、転倒しそうになって屈んでいたバーバラの前で拳を振りかぶっていた。

左腕のプレートに包まれた拳をフルスイングのアッパーカットでバーバラの顔面に打ち込む。

「俺は相手が敵ならば、男女差別はしないで、少女の顔面だって殴るんだぜ!!」

「きゃ!!」

俺の鉄拳がバーバラの顔面にヒットすると、鉄と鋼が激突したような硬い音が鳴り響いた。

こいつも硬いか!?

やっぱり地肌に見えても虫の甲羅か!!

アイラもそうだったもんな。

「でぇぁぁあああ!!」

俺は戸惑わずに拳を振り切った。

バーバラを殴り飛ばす。

俺に顔面をアッパーカットで殴られたバーバラが、飛んだあとに地面を転がった。

だが、流れる可憐な動きでスチャリと立ち上がる。

バーバラは足を揃えながら爪先で立ち、両腕を優雅に広げて、全身で十字架を象って居た。

しかし、その優雅な体勢とは別に、彼女の表情は残忍なほどに鋭かった。

眼差しが鋭利に輝いている。

「よくも私の乙女の顔を殴ってくれたわね……」

うわー……。

怒っちゃったかな……。

ちょっと、マジ怖くね……。

「毒で殺さないで、蜂の巣になるぐらい刺しまくって殺してあげるわ!!」

「それでもやっぱりお尻の毒針で刺すのね……」

人型の昆虫美少女。

さてさて、ここからが本番だろう。



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