俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
394 / 611
【第十四章】太陽のモンスター編。

14-4【師の師匠の死を知った】

しおりを挟む
俺が頭をどついたためにぶち切れたヒュパティア婆さんが落ち着くまでにアイスイレイザーを三度も吐いた。

お陰で広い部屋の中はガビガビに凍りついた冷凍庫のように寒い。

天井からは御立派な氷柱がぶら下がっている有り様だ。

それにしてもアイスイレイザーたる魔法がレベル幾つぐらいの魔法か知らないけれど、マジックイレイザーと同等ならば、この婆さんはかなり高レベルな魔法使いってことになる。

伊達に魔法使いアカデミーの校長ではないようだ。

そして、今は俺とスバルちゃんはヒュパティア婆さんと向かい合わせに長テーブルの席に腰かけていた。

「それで、何しに来たの、スバル?」

ヒュパティア婆さんがスバルちゃんに質問したが、怒りの眼差しで俺を睨み続けていた。

なんとも態度が悪い老人だな。

もう老いぼれなんだから若者のお茶目ぐらい熟練した広い心で受け止めてもらいたいものである。

スバルちゃんは苦笑いながら答えた。

「あの~……、アスランさんがマジックアイテムの修理を依頼したいらしく、それで来たのですが……」

ヒュパティア婆さんは俺を睨みながら皺だらけの手を出した。

「どれ、見せてごらん」

「それじゃあ……」

俺は異次元宝物庫からくたびれたレザーアーマーを出した。

するとヒュパティア婆さんは若干の驚きを見せながら言う。

「おや、まあ、その若さで異次元を操れるのかい!?」

「ああ、異次元宝物庫のことか?」

「そうよ。それ、珍しいのよ」

「これもマジックアイテムだ。それよりも、このレザーアーマーを直せるか?」

ヒュパティア婆さんはテーブルの上に置かれたレザーアーマーを手に取ってマジマジと見回した。

そして、幾つも空いた穴の一つに指を差し込みながら言う。

「あらあら、レザーアーマー+3ね。能力は、強度向上が二つに、防御率向上が一つね……。なかなかの値打ち物じゃあない。流石は異次元を操るアイテムを所有するだけのことはあるようね。あなた、上級冒険者なの?」

ほほう、アイテム鑑定ぐらいは容易いか。

まあ、当然なのだろう。

「それにしてもボロボロね。なにと戦って、こんなにしたのさ?」

「ボーンゴーレム七体と戦って、二体は倒したんだけど、残りの五体に袋叩きにされちゃってさ」

「ボーンゴーレム七体って、七人のゴーレムマスターと同時に戦ったのかい。豪気だね~」

「いや、操ってたヤツは一人だ」

「まさか、そんな……」

「いや、一人じゃなくて、操ってたヤツも一体かな」

「一体?」

「ボーンゴーレムを操ってたのは、マミーレイス婦人って言うリッチだ」

「えっ……、リッチ……」

ヒュパティア婆さんが目を剥いて固まる。

リッチに驚いたのかな?

「どうした、婆さん?」

「ヒュパティア先生、どうしました……?」

固まり続けるヒュパティア婆さんが、また俯いて震え出した。

「おい、どうした、また発作か!?」

「あわあわあわ……」

俺とスバルちゃんが席を立って一歩後退した。

再びアイスイレイザーでも吐き散らかすのではと警戒する。

しばらくしてヒュパティア婆さんが俯きながら話し出す。

「マミーレイス婦人は、私の先生ですわ……」

「えっ、マジ!?」

スバルちゃんが俺に訊いてきた。

「マミーレイス婦人って、誰ですか?」

「魔王城に取り憑いてるアンデッドだ」

「アンデッドがヒュパティア先生の師匠なのですか!?」

俯いたままヒュパティア婆さんが言った。

「私が魔術を習っていたころは、まだ人間でしたわ……」

「ちょっと待て、それって何百年前の話だよ!」

マミーレイス婦人は戦争中に飛び込み墓地で死んだって言っていた。

ならば彼女がまだ生きていたころって五百年以上前ってことになる。

するとだ、この婆さんも五百歳以上ってことになるぞ。

このババァは妖怪か!?

何百年生きていやがるんだ?

するとヒュパティア婆さんがボソリと答える。

「私が先生に魔術を教わってたのは戦前の話よ。私もまだスバルのように無垢で処女だったわ……」

「しょ、処女!?」

俺は咄嗟にスバルちゃんのほうを見ながら驚いた。

スバルちゃんは頬を赤く染め上げながら視線を外す。

そうか、スバルちゃんは処女なのか!!

そうだよな、処女だよな!!

「あ、あの、アスランさん、そんな卑しい目で見ないでください……。私が汚れちゃうわ……」

「か、可愛い!!」

恥じらう姿が可愛いらしぃいぃいいいいぢぢぢじぢじ!!!

ぐぁぁああああ!!!!

心臓がぁぁああああ!!!

落ちつけ、俺!!!

スバルちゃんが処女だと分かったからって俺に何か出来るわけではなきのだからぁあぁああ!!!

「ど、どうしたのアスランさん! 何か苦しそう!?」

「い、いや、気にしないでくれ……。気になるのはキミのほうだから……」

「だから私を気にしないでください……」

イチャつく若者を無視してヒュパティア婆さんが暗い声で訊いてきた。

「それで、リッチになったマミーレイス先生を退治したの……?」

「いや、勝てなかった。逆に養子縁組を懇願された」

それを聞いたヒュパティア婆さんが顔を上げた。

何かホットした表情である。

そしてクスクスと笑いながら言う。

「どうやら死んでも相変わらずのようですね。生前からショタコンでしたもの」

やはりそうか……。

ショタコンか……。

てか、俺はショタキャラじゃあねえぞ!!

「まあ、死しても無事ならいいですわ」

「もう死んでるから無事じゃあないだろうよ」

「分かりました、アスラン。このレザーアーマーは私が預かりましょう」

「よし、無料で直してくれるんだな!!」

「お金は取るわよ!!」

「せめて半額で!!」

「断るわ!!」

「ケチっ!!」

「誰がケチですか!!」

「ちっ、なんで俺の周りの女はケチばかりなんだ……」

俺の愚痴を聞いたヒュパティア婆さんがスバルちゃんに言う。

「スバル、あんたケチなの?」

「ち、違いますよ。私はケチじゃあありませんよ!」

改めて俺がヒュパティア婆さんに訊いた。

「でえ、幾らで直してくれるん?」

「そうね、5000Gかしら」

「ぼったくってね!?」

「相場よ、相場」

ちっ、5000Gかあ~……。

ケチるほどの金額じゃあないが、それでも勿体無いなぁ……。

そんなに料金が掛かるなら、自然治癒を待とうかな~。

そんなことを俺が考えていると、ヒュパティア婆さんが値下げを提案してきた。

「でも、割引してあげてもいいわよ」

「マジで!?」

「その代わり、私からも依頼したい仕事があるの」

「どんな仕事だ?」

「冒険の仕事よ」

「冒険者としての仕事なら大歓迎だぜ!!」

「あらあら、勇ましいわね」

「でえ、どんな依頼だ?」

「私が自作したダンジョンを探索してもらいたいの」

「あんたが自作したダンジョンを……?」

なんだそれ?

「わたくし自慢の自作ダンジョンをね」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

処理中です...