俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
494 / 611
【第十七章】クローン研究編

17-10【クローンの寿命】

しおりを挟む
俺はクローンたちが巣くうダンジョンエリア内の通路を進んでいた。

ぎゅるるるるるう~~……。

あー、腹が鳴ったぞ。そろそろ昼飯の時間かな。

「なあ、ヒルダ──」

俺が呼び掛けると異次元宝物庫内からメイドの声が帰って来る。

『なんで御座いましょう、アスラン様?』

「簡単な食べ物でいいんだ。歩きながら食える物を出してくれ。昼飯はそれで済ませるからよ」

『ならばワニ肉の串焼きが御座います』

「ワニの串焼きかぁ~。まあ、それでいいかな。くれ」

俺が言うと異次元宝物庫内から手だけを出してヒルダがワニ肉の串焼きを二本ほど差し出した。

なかなかの大きさの串焼きだ。二本も食べればお腹いっぱいになるサイズである。

俺はそれを受け取ると、ワイルドな素振りで肉に噛り付く。

肉、ネギ、肉、ネギ、肉の順で組まれたネギマの塩焼きだ。

暖かい──。ハグハグハグ。

「ウマウマだ」

俺は食事を取りながらも歩みを止めなかった。今は時間が欲しいのだ。

一早く残りのクローンたちを倒してテイアーの研究所に入りたい。

ミッションの最終期限は今日までである。時間も残り僅かだ。このままでは報酬が無くなってしまうだろう。それだけは避けたいのである。

俺は竹串に刺された肉とネギを食べ終わると串を石壁に突き刺した。竹の串が石壁にブズリと突き刺さる。

石と石の隙間に刺さったのではない。石のド真ん中に竹の串が突き刺さったのだ。俺はこんなことも出来るようになっていた。

強度の違いを超えて武器を活かす。これもまた強者の証だ。

レベル44にて人間の頂点には達しているだろう。

だが、まだまだ人間の内でも最強とは呼べない。少なくともギルガメッシュは俺より遥かに強い。戦ったことはないが、見て分かるぐらいだ。

それに俺が目指す先は魔女を越えること、あの少女Aより強くならなければ、次に出合った際には殺されかねない。

だから、まだまだレベル44なのだ。目指すはレベル100である。

レベル100になれば、最終目標の糞女神討伐だって叶うやも知れない。

だとするならば、俺の旅はまだ半ば以下だ。中間点すら越えていない。

そして、あのクローンたちは子供のころは俺と外観が同じらしい。だが、成人を越えたころから悪魔化を始める。

これは、クローン技術の未熟が産み出した失敗なのか?

それとも正しい俺の末路なのか?

俺は、成人すると悪魔化が始まるのか?

今の俺は年齢にして十七から十八ぐらいだ。

この世界に成人式ってイベントはあるのだろうか?

今度スカル姉さんにでも訊いてみるか。

それにしても──。

あの小説家のクローンは二十歳ぐらいだった。

そのぐらいから悪魔化が始まるのか?

俺は、将来的に悪魔になるのか?

何故……?

思い浮かぶ原因は魔女とロード・オブ・ザ・ピットだ。

あいつらの暗躍か?

あり得る推測だな。

それとも俺が魔王城周辺を開拓しているのが原因か?

それもあり得るな……。

やべぇ~……。

心当たりが数個ほど有るは、俺……。

クローンの未来はオリジナルの未来な可能性が高いぞ……。

俺、将来的に悪魔化が始まるんじゃね?

だとすると、あと二年から三年が重要だ。

悪魔になんてなってたまるか……。なんであんなに醜い姿に変化しないとならないんだよ。マジあり得ね~ぞ。

でも、万が一にも悪魔化が始まったらどうしよう……。その時は諦めて魔王にでも転職しちゃおうかな。どうせ魔王城の主になるんだしさ……。

いやいやいや、諦めたらアカンだろ!!

それだけは無いわ~。あったらアカンだろ~。

まあ、最悪だけは避けるように努力せにゃあならんな。

「あっ、扉だ」

考えながら歩いている俺の目の前に扉が現れる。通路の突き当たりに両開きの鉄扉だ。

重々しい扉だが、僅かに隙間が開いている。

俺は気配消しと忍び足のスキルを使用しながら近付いたが、扉の隙間から声が掛けられた。

「もう、貴様が居るのは察している。入ってまえれ……」

老人の萎れた声だった。俺はスキルを中断して扉を両手で開ける。

「ハロー、エブリバディ!」

俺が明るく声を張ると室内の視線が俺に集まった。

家具らしい家具の少ない15メートル四方の部屋には三人の人物が立っていた。巨漢の悪魔、老人の悪魔、そして漆黒のローブを頭から被った人物。

巨漢と老人は俺のクローンだろうが、漆黒のローブを纏った人物は顔が見えない。

老人が萎れた声で言った。

「待っていたぞ、アスラン。我らがオリジナルよ」

「へぇ~、俺がオリジナルのアスランだと知っているのか、爺さん」

爺さんは矮躯で腰が曲がっていた。手足も枯れ木のように細い。顔は皺だらけで全裸の身体も皮ばかりで萎れている。

そして、片手に自分の背丈よりも高いスタッフをついて、反対側の手には水晶玉を持っていた。

こいつがノストラダムスだろうか?

いや、漆黒のローブ野郎も怪しいな。

老人のクローンが俺の質問に返答する。

「ワシが持つ水晶玉は、千里眼を可能にするマジックアイテムだ。前の部屋でのやり取りを見ていたわい。それにアスノベとの会話も聞いていたぞ」

「なるほど、盗み見や盗み聞きが趣味なのか、爺さんは」

「しょうがあるまいて。老い先短いと、何事でも知っておきたいと思うものじゃ」

「そんなものか?」

「お主も老いれば時期に分かることじゃて。何せワシはお前の老後だからのぉ~」

「…………」

俺って、爺になると、こんな感じなんだ~。なんかあんまり未来を知るって面白くないな。希望とか夢とかが湧いてこないよ。

「さて、本題に入ろうか」

巨漢のクローンが一歩前に出ながら言った。

巨漢の背中には鞘に収まったロングソードが二本背をわれている。魔力感知スキルで見るまでもないだろう。あれは間違いなくマジックアイテムだ。

巨漢のクローンは全裸だ。しかし身体の大きさは2メートルはあるだろう。悪魔化しているってことは二十日を過ぎているってことだ。

だが、俺は既に成長期は過ぎているはずだ。もうこれ以上は身長も伸びないはずである。なのにこいつは長身だ。俺のクローンならばあり得ない成長である。

巨漢のクローンは、ド太い小指で鼻の穴をホジリながら言った。

「やい、オリジナル。俺の巨漢を見て驚いているな?」

「それもそうだが、鼻をホジリながら言うなよな。お前は俺のクローンなんたろ。ならばもっと上品に振る舞えよ」

「お前は鼻糞が詰まったらホジらないのか?」

「まあ、ホジるけれどさ……」

「なら、問題なかろう」

「それで、何が言いたい?」

「産まれや育ちが異なれば、人前でも鼻の穴ぐらいホジるってことだ」

「そうじゃあねえよ。なんでお前だけ巨漢なんだって話だよ。お前は俺のクローンなんだろう?」

「あー、そっちの話ね~」

「そっちの話だよ」

「何故、俺だけ巨漢なのか。それはおそらくクローンたちの命を多く食らったからだろうさ」

こいつ、何体の心臓を食らったんだ?

「俺は命を食らう度に強くなり、身体が大きくなった」

「お前は、どのぐらい生きてるんだ?」

「約九十日だ」

クローンの心臓を食らえば十日ほど寿命が延びるって小説家のクローンが言ってたっけな。ならばこいつは、九体近くのクローンを食らっていることになる。

俺はチラリと老人のほうを見て訊いた。

「爺さん、あんたも命を食らって生き延びているのか?」

「ワシは違う。一人も食らっていないが、九十三日生きとるわい」

「長生きだな……」

「寿命もクローンによって異なる。お前ももしかしたら、長生きするかも知れんぞい」

俺は巨漢のクローンを睨み付けながら言った。

「でえ、お前らは、これからどうする?」

巨漢のクローンが背中からロングソードを一本引き抜きながら言った。

「オリジナルを殺して、その心臓を食らうつもりだ!!」

「あー、やっぱりそうなるよね~」

巨漢のクローンの顔が悪魔らしく怖い表情に変貌していった。額や首筋におぞましい血管が浮き上がる。

「オリジナルを食らえば俺がオリジナルだ。俺がお前の寿命分だけ生き続けてやるぜ!!」

俺も腰から黄金剣を抜いて構えた。

「何故に俺を食らえば俺の寿命が得られると分かるんだ?」

巨漢のクローンが親指を立てて漆黒のローブを指差した。

「ノストラダムスの予言が、そうおしえてくれたんだよ!!」

やっぱりこいつがノストラダムスか──。

こいつ、めっちゃ怪しいぞ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...