526 / 611
【第十九章】メタルキャリア編
19-2【石切り場のモンスター】
しおりを挟む
俺は爆走するミケランジェロの肩に掴まりながらクレーター山脈に有る石切場を目指していた。道中はジャングルの中を切り開かれた細い道を進んでいる。
それにしても、スゲー振動……。速いけれどアキレス以上に体力が削られるぞ、これ。
俺は舌を噛まないように注意しながら訊いた。
「なあ、ミケランジェロ」
「なんだ、アスラン?」
「石切場まで何キロあるんだ?」
「2キロから3キロぐらいかな」
「だよな……」
魔王城はクレーター山脈のほぼ中央にある。クレーター山脈とは、その昔の戦いで天空要塞のヴァルハラが魔王城に墜落して出来た山脈だ。山脈なんて呼んでいるが、そもそもがただの大きなクレーターなのだ。その距離は半径で2キロから3キロだと聞いている。正確に測量されたわけではないので、ハッキリとした距離は分からないが、その距離をミケランジェロは大岩ブロックを担いで運んでいるのだ……。それを考えるとサイクロプスってスゲーパワーだと思う。
それにしてもマジでブラック企業の重労働だよな……。俺、本当にこいつと戦って勝てたのは現実だったのだろうか……。今考えて見れば、無理ゲーな設定の戦いだよな……。まさにクソゲーだ。
そもそもミケランジェロって旧魔王の四天王の一人だった将軍の副官だったよな……。大物だよね。マジで強かったもの……。
今現在この魔王城に居るモンスターの住人で、もう一度戦えば勝てないだろうと思う一人の内だ。
サイクロプスのミケランジェロ。
クラーケンのガルガンチュワ。
それに、リッチのマミーレイス婦人。
この三名には、もう一度戦ったら勝てるか分からん……。そもそもマミーレイス婦人には勝つどころの話ではないしな……。負けてるんだもの。
「アスラン、もう時期石切り場に到着するぞ!」
「マジ、早くね……」
確かにクレーター山脈が近くに迫っていた。やがてジャングルが開けて石切の作業場が見えて来る。
「誰も居ないな?」
「石切場に集まって、モンスターと戦ってるんじゃあねえの?」
「かもしれん、急ごう!」
そして直ぐに俺たちは石切り場に到着した。
そこは高いクレーター山脈が間近に見える岩場を切り開いて谷間が出来ていた。その奥に作業員たちが集まって居る後ろ姿が見える。
「あそこが事件現場のようだな」
ミケランジェロが近付くと、高い視線から見ていた俺にも状況が一目で分かった。石切り場の前方に四角い穴が開いており、その中からドス黒い鋼色の人形が這い出ていた。
その数は見えているだけで五体は居る。おそらく洞窟内にも、まだモンスターが居そうであった。
それを離れた場所からエルフたち作業員がつるはしなどを構えて睨み付けていた。
エルフの数は二十人は居る。数で勝っているのに攻めに撃たず睨み合いを選んでいた。つるはしでも傷つけられないほどに硬いのだろうか?
両者は硬直状態だ。
その背後に近づくと俺はミケランジェロの肩から降ろされる。そしてミケランジェロがエルフたちに問う。
「状況は!?」
「それが……」
エルフたちは鋼鉄の魔物たちを睨んだまま振り返らずに言った。
「ヤバイです、こいつら……。打撃も魔法も効きません……」
すると凶介だと思われる声がエルフたちに指示を出した。
「いいか、テメーら。俺はミケランジェロさんに報告するから、お前らは前を向いたまま魔物から目を離すなよ!!」
「「「「へいっ!!」」」」
エルフたちが声を揃えて返事を飛ばすと、凶介だけが振り返って俺たちの前に近付いて来た。凶介は俺を見て驚いている。
「アスランさん、もうお怪我は大丈夫なんスか!?」
「おう、戦うのは無理だが歩き回れるようには回復したぜ」
「それは、おめでたい。これが済んだら祝いの酒盛りでも開きましょうぜ!」
「俺、酒は飲めないからさ……」
「残念っ!!」
「それよりも、なんで互いに棒立ちで睨み合っているんだ?」
ミケランジェロも言う。
「かなり防御力が高いモンスターなのは見て分かるが、向こうが攻めて来ないのは可笑しいだろ?」
確かにそうだ。
エルフたちが鋼鉄のモンスターの防御力に困惑するのは理解できるが、向こうさんが攻めて来ないで睨み合いを選んでいるのが理解不能であった。まるで動けないように硬直している。
「もしかして、こいつらは夜行性か?」
俺はミケランジェロの言葉に納得した。
あいつら鋼鉄のモンスターは日の光りが当たると動けなくなるのか。トロールも太陽光で一時的に石化すると聞いたことがあるが、それと一緒なのかも知れない。
だが、その言葉を凶介が否定する。
「違いやす。あのメタルモンスターは、人が見ていると動けないようなんですよ……」
「「人が見てると動けない?」」
俺とミケランジェロの声が揃って反芻した。凶介が今までで分かったことを報告する。
「あいつらは、誰かに見られていると動けないんス……。しかし、とにかく、硬いんスよ。こちらの攻撃が一切通りやせん」
「魔法も打撃も効かないって言ってたな」
「つるはしで殴っても傷一つ付きません。魔法も同様です。それよりも怖いのは感染力です……」
「「感染力?」」
またミケランジェロと声が揃った。すると凶介が感染力について説明してくれる。
「あそこに居る五名のメタルモンスターなんですが、あれ、全員うちのむらのエルフなんですよ……」
「「なにっ!!」」
やべぇ、またミケランジェロと声が揃っちまった。これではキャラが被ってまうがな。
「あのメタルモンスターに素手で触れると、一瞬で鉄に覆われて、あいつらの仲間入りですわ……」
「感染系のモンスターって、そう言うことかい」
味方が敵に落ちる。それは厄介だぞ。
それにしても、スゲー振動……。速いけれどアキレス以上に体力が削られるぞ、これ。
俺は舌を噛まないように注意しながら訊いた。
「なあ、ミケランジェロ」
「なんだ、アスラン?」
「石切場まで何キロあるんだ?」
「2キロから3キロぐらいかな」
「だよな……」
魔王城はクレーター山脈のほぼ中央にある。クレーター山脈とは、その昔の戦いで天空要塞のヴァルハラが魔王城に墜落して出来た山脈だ。山脈なんて呼んでいるが、そもそもがただの大きなクレーターなのだ。その距離は半径で2キロから3キロだと聞いている。正確に測量されたわけではないので、ハッキリとした距離は分からないが、その距離をミケランジェロは大岩ブロックを担いで運んでいるのだ……。それを考えるとサイクロプスってスゲーパワーだと思う。
それにしてもマジでブラック企業の重労働だよな……。俺、本当にこいつと戦って勝てたのは現実だったのだろうか……。今考えて見れば、無理ゲーな設定の戦いだよな……。まさにクソゲーだ。
そもそもミケランジェロって旧魔王の四天王の一人だった将軍の副官だったよな……。大物だよね。マジで強かったもの……。
今現在この魔王城に居るモンスターの住人で、もう一度戦えば勝てないだろうと思う一人の内だ。
サイクロプスのミケランジェロ。
クラーケンのガルガンチュワ。
それに、リッチのマミーレイス婦人。
この三名には、もう一度戦ったら勝てるか分からん……。そもそもマミーレイス婦人には勝つどころの話ではないしな……。負けてるんだもの。
「アスラン、もう時期石切り場に到着するぞ!」
「マジ、早くね……」
確かにクレーター山脈が近くに迫っていた。やがてジャングルが開けて石切の作業場が見えて来る。
「誰も居ないな?」
「石切場に集まって、モンスターと戦ってるんじゃあねえの?」
「かもしれん、急ごう!」
そして直ぐに俺たちは石切り場に到着した。
そこは高いクレーター山脈が間近に見える岩場を切り開いて谷間が出来ていた。その奥に作業員たちが集まって居る後ろ姿が見える。
「あそこが事件現場のようだな」
ミケランジェロが近付くと、高い視線から見ていた俺にも状況が一目で分かった。石切り場の前方に四角い穴が開いており、その中からドス黒い鋼色の人形が這い出ていた。
その数は見えているだけで五体は居る。おそらく洞窟内にも、まだモンスターが居そうであった。
それを離れた場所からエルフたち作業員がつるはしなどを構えて睨み付けていた。
エルフの数は二十人は居る。数で勝っているのに攻めに撃たず睨み合いを選んでいた。つるはしでも傷つけられないほどに硬いのだろうか?
両者は硬直状態だ。
その背後に近づくと俺はミケランジェロの肩から降ろされる。そしてミケランジェロがエルフたちに問う。
「状況は!?」
「それが……」
エルフたちは鋼鉄の魔物たちを睨んだまま振り返らずに言った。
「ヤバイです、こいつら……。打撃も魔法も効きません……」
すると凶介だと思われる声がエルフたちに指示を出した。
「いいか、テメーら。俺はミケランジェロさんに報告するから、お前らは前を向いたまま魔物から目を離すなよ!!」
「「「「へいっ!!」」」」
エルフたちが声を揃えて返事を飛ばすと、凶介だけが振り返って俺たちの前に近付いて来た。凶介は俺を見て驚いている。
「アスランさん、もうお怪我は大丈夫なんスか!?」
「おう、戦うのは無理だが歩き回れるようには回復したぜ」
「それは、おめでたい。これが済んだら祝いの酒盛りでも開きましょうぜ!」
「俺、酒は飲めないからさ……」
「残念っ!!」
「それよりも、なんで互いに棒立ちで睨み合っているんだ?」
ミケランジェロも言う。
「かなり防御力が高いモンスターなのは見て分かるが、向こうが攻めて来ないのは可笑しいだろ?」
確かにそうだ。
エルフたちが鋼鉄のモンスターの防御力に困惑するのは理解できるが、向こうさんが攻めて来ないで睨み合いを選んでいるのが理解不能であった。まるで動けないように硬直している。
「もしかして、こいつらは夜行性か?」
俺はミケランジェロの言葉に納得した。
あいつら鋼鉄のモンスターは日の光りが当たると動けなくなるのか。トロールも太陽光で一時的に石化すると聞いたことがあるが、それと一緒なのかも知れない。
だが、その言葉を凶介が否定する。
「違いやす。あのメタルモンスターは、人が見ていると動けないようなんですよ……」
「「人が見てると動けない?」」
俺とミケランジェロの声が揃って反芻した。凶介が今までで分かったことを報告する。
「あいつらは、誰かに見られていると動けないんス……。しかし、とにかく、硬いんスよ。こちらの攻撃が一切通りやせん」
「魔法も打撃も効かないって言ってたな」
「つるはしで殴っても傷一つ付きません。魔法も同様です。それよりも怖いのは感染力です……」
「「感染力?」」
またミケランジェロと声が揃った。すると凶介が感染力について説明してくれる。
「あそこに居る五名のメタルモンスターなんですが、あれ、全員うちのむらのエルフなんですよ……」
「「なにっ!!」」
やべぇ、またミケランジェロと声が揃っちまった。これではキャラが被ってまうがな。
「あのメタルモンスターに素手で触れると、一瞬で鉄に覆われて、あいつらの仲間入りですわ……」
「感染系のモンスターって、そう言うことかい」
味方が敵に落ちる。それは厄介だぞ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる