スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
204 / 261

199【異世界にも帰還】

しおりを挟む
 俺は鏡野響子のチャーター機で日本に帰っていた。鏡野響子とクロエの二人は、楽しそうにワインを仲良く飲んでいる。摘みはスルメだった。

 どうやらこの二人は、なんやかんや言っても仲が良いらしい。昔からの腐れ縁なのだろう。

 チャーター機の窓から綿雪のような白い雲が窺える。雲だけの景色は幻想的に見えた。その雲の形を俺は一人で眺めていた。様々な形の雲があり、見ていて飽きない。

 チャーター機の中に、穏やかな空気が流れていた。

 これだけゆったりしているのは久々だろう。何せこの一ヶ月間は、何かと慌ただしかったのである。

 フラン・モンターニュでの数多くの戦い。ゴブリン討伐から始まって、ニャーゴやレオナルドとの出会い。シレンヌの襲撃。スケルトン大軍団との対決。まあ、いろいろなことがあったのだ。

 現実世界ではクロエの着任とラスベガス訪問。そして、よく分からないうちに終わっていた四つの試練。なかなかハードな一ヶ月だと思う。

 その一ヶ月間が終わったことを知らせるようにゴールド商会から一通のメールが届いていた。給料明細である。

 今月の給料は七十万円を超えていた。一ヶ月三十グラムを超えて金塊を振り込んだだけはある。これで新しい商品を入荷できるだろう。

 そして、俺のレベルも20に達していた。それで得たスキルポイントをいろいろなスキルに割り振った。

 まずはゲートマジックをLv7まで上げた。これで二枚目の固定扉を手に入れた。二枚目はパリオンに設置しようと考えている。それでマリマリのコメルス商会に商品の搬入が楽になるだろう。

 そして、残ったスキルポイントでボーンリジェネレーションLv3をLv5まで上昇させた。やはり回復は必要だろう。ジョジョとの対決で骨身に染みたのだ。

 さらに魔法探知Lv3と魔法防御Lv3を、それぞれLv4に上げる。この手のスキルは地道に上げておかないとなるまい。必ず役に立つ時が来るはずだ。

 残りポイントが1点で、新スキル・アイテム鑑定を取ってみる。まずはスキルを使ってみて便利かどうかを試してみてから成長を考えるつもりだ。

 こうして俺の二ヶ月目と、レベル20達成祝いが、飛行機の中で終わる。誰も祝ってはくれないので一人で祝ったのだ。ちょっと淋しい。

 そして、ラスベガスから日本までの12時間のフライトが終わって実家に帰ってきた。二日ぶりに異世界にも顔を出す。

『ただいま~』

「お帰りなさいませ、シロー様!!」

「お帰りだべさ~、シロー様。お土産くださいな~」

『ほれ、ラスベガス饅頭だ。皆で分けて食えよ』

「やっただべ~。饅頭だべさ~」

 俺がブランに饅頭が入った紙袋を手渡すと、下半身にチルチルが抱きついてきた。ハグするチルチルの顔が股間の高さにある。そのチルチルの白髪を俺は撫で回した。

『どうした、チルチル。寂しかったのか?』

「そ、そんなことはありません……」

 俺の股間に顔を埋めたチルチルは顔を上げない。そのしぐさが可愛すぎて俺は彼女の頭を撫で続けた。

『さて、次の仕事は、サン・モンに向かってフィリップル公爵に弾丸を届けることと、パリオンに新しい固定扉の設置だな』

 チルチルがハグで顔を埋めながら言う。

「シロー様、まだ仕事ですか……」

 俺は店の天井を眺めながら考える。

『そうだな~。今日ぐらいは店でゆっくりするか。お使いは明日でも遅くはないだろう』

 こうして俺は、今日一日を店でゆっくりと過ごす。チルチルたちと一緒にまったりと一日を送ったのだ。

 俺が見守る中でチルチルがブランに読み書きを指導している。店番はニャーゴとマリアがやっている。外ではシレンヌが薪割りを行っていた。 

 長閑である。ゆっくりと異世界の時間が流れていくのが感じられた。これだけ長閑に過ごすのは久々だった。たまには悪くないと思う。

 そして、日が沈み夜が来る。窓の外を眺めてみれば、七つの月が黒雲に見え隠れしていた。虫の音色のみが聞こえる静かな夜である。

 ある程度時間が過ぎるとチルチルたちが就寝した。するとマリア・カラスが一冊の書物を持ってくる。

『シロー様、こちらをお読みになっては如何でしょうか?』

『これは――』

 それは、ネクロマンサーの初期魔法が書き込まれた書物だった。いつだったかヴァンピール男爵から貰った魔導書である。

 マリア曰く。

『シロー様は、ネクロマンサーの才能が高いと感じます。専門的に学ばれれば、私よりも優れた死人使いに成長するかと――』

『マジ~』

『はい――』

 俺はつまらなそうに魔導書をパラパラと捲ってみた。しかし、気が乗らない。やはり俺的には、魔導よりも武道に集中したいのだ。

 体と知。それは、あまりにも進む道が違いすぎる。二股の道に思えて仕方ないのだ。

『ならば、こういうのはどうでしょうか――』

『なんだ?』

 マリアが細い手で拳を握りながら前に出す。その拳から炎のように黒いオーラが吹き出した。

『魔法と拳法の融合。魔法拳法の第一人者を目指すのは?』

『魔法拳法……。面白そうだな!』

『私も感じるのです。シロー様から魔王の風格を――。しかも、それは新世代の魔王。武王の魔神の貫禄を――』

『それは盛りすぎだ。だが、魔法拳法は面白そうな流派だな。少し、試してみるか』

 そう述べた俺は拳を握る。その拳から黒いオーラが揺らいでいた。やる気である。

 その晩に、俺は初期魔法が書き込まれた魔導書を読み切る。一通り頭に入れた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...