237 / 261
229【スケルトンの挑発】
しおりを挟む
シーンは少し巻き戻る。
眼前で憤怒に任せて全身から鋭い針を突き出すエピヌー・プルにシローが質問した。
『なあ、その針は闘士部門では反則にならないのか?』
「ならないのよ。これはあたいの固有スキル。体質が生み出した、ただの鋭い皮膚。魔法でも何でもないわ!」
『そうなのか――』
その刹那、エピヌー・プルが誰にも知られない戦法で不意打ちを仕掛けた。
それは、含み針――。
「ぷっ、ぷぷぷぷっ!!」
唐突に口内から複数の針を吹き飛ばしてきたのだ。その含み針でシローの顔面が突き刺される。針は眼底にまで届いていたがシローには瞳すらないので関係ない。要するに、効いていない。
その途端、シローが骨の手を伸ばし、エピヌー・プルの首を鷲掴みにした。喉輪での反撃である。
「うっ!!」
凄い怪力だった。これが筋肉が無い骨だけのパワーとは思えない程の力である。エピヌー・プルは顔を真っ赤にさせながらシローの腕を叩いた。しかし、ビクともしない。
『この闘技場は、針だけで勝ち上がれるほど、お粗末なのか?』
そう言いながら、片腕で彼女の軽い体を持ち上げた。ワンハンド・ネックハンギングツリー。プロレスの力技である。
『小細工とは――』
「こ、この骨野……郎……がぁ……」
エピヌー・プルの針はシローの骨に刺さっていない。針の隙間を縫って彼女の首を締め上げている。
『笑止千万!』
シローは彼女を掲げたまま後ろへ振りかぶる。そこからエピヌー・プルの下半身に外側から足を掛けると前に振り下ろす。
空中でエピヌー・プルに大外掛けを掛けた形になっていた。そして、彼女はシローに背中から力強く地面に叩きつけられたのだ。しかもフルスイングで――。
要するに、シローが仕掛けたのは「技」である。ただの力技ではなく「格闘術」の類であった。
「……がっ……がぁ……」
地面に叩き付けられたエピヌー・プルは、陸に釣り上げられた魚のように口をパクパクさせている。倒れたまま背を反らせ痙攣していた。おそらく呼吸ができていないのだろう。
一発でKOだった。
『早く医務室に連れて行ってやれ――』
シローの言葉にエピヌー・プルがタンカーで運ばれて行った。それを観客たちは静まり返りながら見送った。
何人かの闘士は引いている。自分の実力とシローの実力を鑑みるからに勝敗が心の中で知れたのだろう。完全に怖気付いている。
闘士たちの列に向き直ったシローがシリヌ・カールを指さしながら言う。
『お前と――』
続いてポニーテールの剣士を指差しながら言う。
『お前と――』
次に巨漢の髭男を指さしながら言う。
『お前と――』
最後に黒いプレートメイルを着込んだ騎士を指差す。
『お前ぐらいかな。俺とまともに戦えるのは――』
シローに指さされたのは総合最強部門の上位ランカーばかりだった。しかし、指名されなかった者たちのヘイトを集めている。
「ふざけるな、髑髏野郎!!」
前に出てきたのはサイの獣人だった。
頭部がサイで鼻の頭に鋭い角が生えている。巨漢の全身はフルプレートで身を包み、両手にはサイの角をオマージュしたような武器を持っていた。
観客たちがどよめく。
「三角鈍剣のサイザレスだ!」
「純戦士部門のランキング五位のサイザレスが出てきたぞ!」
「見せてくれ、お前の破局道を!!」
シローは観客の声援を聞きながらサイザレスを煽る。
『凄い人気だな、サイ男さんよ』
「舐めるな、スケルトン風情が!!」
巨漢を揺らしながらサイザレスが前に出てくる。その両手には二刀が握られていた。それはサイの角が二本。刺すことを重視した武器である。
「ブチかます!」
サイザレスは蹲踞の姿勢で腰を落とした。まさに相撲のブチかましを狙っている姿勢である。
「ぬぬぬぬぬっ!!」
蹲踞で力を溜めるサイザレスに対してシローは棒立ちで待ち受ける。自分からは仕掛ける様子は窺えない。返り討ちを狙っている様子だった。
しかし、サイザレスも蹲踞のまま動かない。仕方ないとシローから前に歩み出した。
そして、シローがサイザレスの間合いに踏み込んだ。途端、サイ男がブチかましを放つ。
「死ね。三角破局道ぉぉおおおおお!!!」
サイザレスは両手の角剣と鼻の角を突き出しながら、シローに向かって突進した。三本の角で串刺しを狙っているのだろう。
「どぉぉおおおおおおっ、すこい!!」
『ふっ!!』
サイザレスの突進が激突するかと思えた瞬間にシローがカウンターを放つ。
それは、中段前蹴り。
シローの鋭い中段前蹴りが、角で結ばれた三角形の中心に打ち込まれる。そこは胴体の中央、水月――鳩尾だった。
「っが!!!!」
中足の先がサイザレスの鳩尾に突き刺さる。その一撃で突進が止まるだけでなく、サイザレスの巨漢が鎧だけを残して後方に飛んでいったのだ。
着ていたプレートメイルの背中が割れて、セミが脱皮するかのように鎧が剥けると、中身だけが後方に飛んでいったのである。
サイザレス本体は闘技場の壁に激突して止まったが、着ていた鎧だけがシローの前に立ち尽くしていた。
「ぁ……がぁ……」
壁に寄りかかりながら座り込むサイザレスは白目を向いていた。口からは涎を垂らして気絶している。
再び会場が瞬殺撃に静まり返っていた。
シローは残った闘士たちに述べる。
『俺は構わないぜ。全員順番に相手をしてやってもよ!』
眼前で憤怒に任せて全身から鋭い針を突き出すエピヌー・プルにシローが質問した。
『なあ、その針は闘士部門では反則にならないのか?』
「ならないのよ。これはあたいの固有スキル。体質が生み出した、ただの鋭い皮膚。魔法でも何でもないわ!」
『そうなのか――』
その刹那、エピヌー・プルが誰にも知られない戦法で不意打ちを仕掛けた。
それは、含み針――。
「ぷっ、ぷぷぷぷっ!!」
唐突に口内から複数の針を吹き飛ばしてきたのだ。その含み針でシローの顔面が突き刺される。針は眼底にまで届いていたがシローには瞳すらないので関係ない。要するに、効いていない。
その途端、シローが骨の手を伸ばし、エピヌー・プルの首を鷲掴みにした。喉輪での反撃である。
「うっ!!」
凄い怪力だった。これが筋肉が無い骨だけのパワーとは思えない程の力である。エピヌー・プルは顔を真っ赤にさせながらシローの腕を叩いた。しかし、ビクともしない。
『この闘技場は、針だけで勝ち上がれるほど、お粗末なのか?』
そう言いながら、片腕で彼女の軽い体を持ち上げた。ワンハンド・ネックハンギングツリー。プロレスの力技である。
『小細工とは――』
「こ、この骨野……郎……がぁ……」
エピヌー・プルの針はシローの骨に刺さっていない。針の隙間を縫って彼女の首を締め上げている。
『笑止千万!』
シローは彼女を掲げたまま後ろへ振りかぶる。そこからエピヌー・プルの下半身に外側から足を掛けると前に振り下ろす。
空中でエピヌー・プルに大外掛けを掛けた形になっていた。そして、彼女はシローに背中から力強く地面に叩きつけられたのだ。しかもフルスイングで――。
要するに、シローが仕掛けたのは「技」である。ただの力技ではなく「格闘術」の類であった。
「……がっ……がぁ……」
地面に叩き付けられたエピヌー・プルは、陸に釣り上げられた魚のように口をパクパクさせている。倒れたまま背を反らせ痙攣していた。おそらく呼吸ができていないのだろう。
一発でKOだった。
『早く医務室に連れて行ってやれ――』
シローの言葉にエピヌー・プルがタンカーで運ばれて行った。それを観客たちは静まり返りながら見送った。
何人かの闘士は引いている。自分の実力とシローの実力を鑑みるからに勝敗が心の中で知れたのだろう。完全に怖気付いている。
闘士たちの列に向き直ったシローがシリヌ・カールを指さしながら言う。
『お前と――』
続いてポニーテールの剣士を指差しながら言う。
『お前と――』
次に巨漢の髭男を指さしながら言う。
『お前と――』
最後に黒いプレートメイルを着込んだ騎士を指差す。
『お前ぐらいかな。俺とまともに戦えるのは――』
シローに指さされたのは総合最強部門の上位ランカーばかりだった。しかし、指名されなかった者たちのヘイトを集めている。
「ふざけるな、髑髏野郎!!」
前に出てきたのはサイの獣人だった。
頭部がサイで鼻の頭に鋭い角が生えている。巨漢の全身はフルプレートで身を包み、両手にはサイの角をオマージュしたような武器を持っていた。
観客たちがどよめく。
「三角鈍剣のサイザレスだ!」
「純戦士部門のランキング五位のサイザレスが出てきたぞ!」
「見せてくれ、お前の破局道を!!」
シローは観客の声援を聞きながらサイザレスを煽る。
『凄い人気だな、サイ男さんよ』
「舐めるな、スケルトン風情が!!」
巨漢を揺らしながらサイザレスが前に出てくる。その両手には二刀が握られていた。それはサイの角が二本。刺すことを重視した武器である。
「ブチかます!」
サイザレスは蹲踞の姿勢で腰を落とした。まさに相撲のブチかましを狙っている姿勢である。
「ぬぬぬぬぬっ!!」
蹲踞で力を溜めるサイザレスに対してシローは棒立ちで待ち受ける。自分からは仕掛ける様子は窺えない。返り討ちを狙っている様子だった。
しかし、サイザレスも蹲踞のまま動かない。仕方ないとシローから前に歩み出した。
そして、シローがサイザレスの間合いに踏み込んだ。途端、サイ男がブチかましを放つ。
「死ね。三角破局道ぉぉおおおおお!!!」
サイザレスは両手の角剣と鼻の角を突き出しながら、シローに向かって突進した。三本の角で串刺しを狙っているのだろう。
「どぉぉおおおおおおっ、すこい!!」
『ふっ!!』
サイザレスの突進が激突するかと思えた瞬間にシローがカウンターを放つ。
それは、中段前蹴り。
シローの鋭い中段前蹴りが、角で結ばれた三角形の中心に打ち込まれる。そこは胴体の中央、水月――鳩尾だった。
「っが!!!!」
中足の先がサイザレスの鳩尾に突き刺さる。その一撃で突進が止まるだけでなく、サイザレスの巨漢が鎧だけを残して後方に飛んでいったのだ。
着ていたプレートメイルの背中が割れて、セミが脱皮するかのように鎧が剥けると、中身だけが後方に飛んでいったのである。
サイザレス本体は闘技場の壁に激突して止まったが、着ていた鎧だけがシローの前に立ち尽くしていた。
「ぁ……がぁ……」
壁に寄りかかりながら座り込むサイザレスは白目を向いていた。口からは涎を垂らして気絶している。
再び会場が瞬殺撃に静まり返っていた。
シローは残った闘士たちに述べる。
『俺は構わないぜ。全員順番に相手をしてやってもよ!』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件
fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。
チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。
しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。
気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。
笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる