スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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230【雑魚の一掃】

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 挑発され、怒りに任せて前に出たサイザレスは、たった一撃で倒されてしまった。

 しかも不思議なことに、着ていた全身鎧だけをシローの眼前に残し、中身だけが壁際まで吹き飛ばされてKOされたのだ。鎧はその場に立ち尽くし、サイザレス本人は遠くに転がっている。

 やがて、壁際で気絶していたサイザレスがタンカーで運ばれて行く。それと同時に、空っぽの鎧も片付けられた。

『さて、次は誰が相手をしてくれるのかな?』

 髑髏の闘士は余裕全開で言い放った。それが他の闘士たちには屈辱的だった。

 だがシローの強さは紛れもなく本物。それも極上である。容易く手は出せない。すでにランカーが二人、返り討ちに遭っているのだ。侮れるはずもなかった。

 そんな中、一人の男が前に出る。長槍を手にした長髪の男だった。

 観客たちがざわめく。

「おい、今度はパンナッツ・グラーボォが出てきたぞ!」

「幻槍のパンナッツだ!」

「次は総合最強部門のランキング八位が相手か!」

 自分の背丈より長い槍をつきながら歩み出てきたのは、長い髪を持つ美男子だった。年の頃は二十代半ば。艷やかな髪を靡かせ、上半身だけプレートメイルを着込んでいる。

 パンナッツは槍を腰の高さに構え、矛先をシローに向けて鋭い眼差しを放った。

「拙者はパンナッツ・グラーボォ。長槍使いでござる。次の相手を志願いたす!」

 シローは無い鼻先を親指で擦って答える。

『嬉しいよ。そろそろ選手たちがビビり始めたころだと思ってたが、まだ活きの良い野郎がいてくれて助かる。準備運動が足りてなかったんだ』

 挑発めいた言葉に、パンナッツの額に血管が浮かぶ。

「これが準備運動だと……」

『ああ。さっき指名した四人と戦う前のウォーミングアップだ』

「そこまで我々を下に見るか!」

『失礼。悪気はない。しかし事実は事実だ』

「おのれ、スケルトン。串刺しにしてやる!」

 まだ距離は三メートルあった。だがリーチで勝るパンナッツが先に動く。槍を突き出し突進してきた。

「突き!!」

 槍の矛先はシローの眉間を狙う。しかしシローはヘッドスピンで難なく回避した。槍は髑髏の横をかすめて通り過ぎる。

『温いな――』

「甘い!」

 呟いた刹那、矛先が直角に曲がり、真横から髑髏の頭を襲った。槍が折れるように曲って追尾してきたのだ。

 だがシローは前へダッシュして槍先を避ける。さらに追尾するかのように槍はさらに曲がり、後頭部を狙って迫ってきた。

『面白い槍だな!』

「くぅ!?」

 槍に追われながら、シローはパンナッツの眼前へ迫る。そして、衝突する直前、槍元の下をくぐって背後へ回り込む。

「くそっ!」

 パンナッツが振り返ろうとした瞬間、自分の槍が前方から飛んできて頬を掠めた。

「危なっ!!」

 間一髪で自分の槍を避けるパンナッツ。しかし敵の姿を見失っていた。

「どこに消えた!?」

 左右を見回すも、巨漢の姿はない。消えたのだ。

「くそっ!」

 その瞬間、背後に殺気――。振り返るより早く、シローのスリーパーホールドがパンナッツの首を両腕で捕らえて締め上げる。

「うぐ、うが、うぐぐぅ!!!」

 圧倒的な力。息ができない。意識が霞む。反撃も不可能。

「ぅぅ……」

 すると、数秒も経たずパンナッツは気絶し、シローの胸の中で力なく崩れ落ちた。

『はい、終わり――』

 解放されたパンナッツは、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。それを見て観客たちが残念そうに呟く。

「また秒殺だ……」

「パンナッツですら、あれかよ……」

「あのスケルトン、強すぎだろ……」

 三人目の犠牲者となったパンナッツがタンカーで運ばれていく。シローは残った闘士たちへと向き直った。

『なあ、そろそろ準備運動は終わりだ。ここからが俺のデビュー戦、本番ってことでいいよな?』

 会場の緊張感に亀裂がはしった。

「な、なんだとぉ……」

「今までの戦いは試合ですらない……だと……」

 シローはふてぶてしく言う。

『当たり前だ。今までのが試合に見えたのか?』

 屈辱。屈辱。屈辱。

 だが、ほとんどの闘士は反論できなかった。実力差は歴然だったからだ。

 それでも悔しい。闘士たちの瞳は怒りで燃えていた。

『なあ、良かったら全員で掛かってきてもいいぜ。俺は一対多数でも構わんぞ』

 さらなる挑発に髑髏の顔が嘲笑うように見えた。

 そこで闘士たちの怒りが一斉に噴火した。

「上等だ、ぶっ殺してやる!!」

「全員で掛かれ!!」

「袋叩きにしてやるぞ、ゴラァ!!」

 怒りに駆られた闘士たちが一斉に武器を構え、飛び掛かる。

 その時、ポニーテールの男が動いた。素早いダッシュで闘士たちの間を縫い、せせらぎの水流のように走り抜ける。その度に抜刀した剣が煌めき、仲間の闘士を斬り伏せていった。

 斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬の三十三撃。

 ものの数秒。三十三人いた闘士は、すでに倒れていた。残ったのはスキンヘッド、ポニーテール、髭親父、黒騎士の四人だけ。

 剣を鞘に納め、ポニーテールの男は吐き捨てる。

「ちまちまと回りくどい。時間の無駄だ。一気に締めろ」

『すまんすまん。少しでも楽しみたい主義でね』

「くだらん……。ただの弱い者虐めでしかない」

 愚痴を零し、ポニーテール男は踵を返す。気絶した者たちの中を悠然と進み、壁際へと歩いていった。

 こうして、ついに本命の四人だけが残った。

 ここからが、デビュー戦の本番である。

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