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5【奴隷解放】
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こめかみを殴られて気絶している男の横で、俺は両手を縛られている一家のロープを解いてやった。
三人は俺の顔を見て驚いていた。若い娘さんは恐怖で奥歯をガタガタと鳴らしている。
まあ、仕方がないだろう。人語を喋るスケルトンが昼間っから出歩いていて、自分たちを捕縛している野郎をコテンパンにやっつけてしまったのだ。そりゃあビックリもするし、怯えもするだろう。
『大丈夫かい、あんたら?』
俺が垂れ流しのテレパシーで問い掛けると、男性と女性は抱き合いながら頷いていた。もう一人の女の子は目を丸くしながら俺を見上げている。
しかし、大人二人よりは怯えていない。それが幸いだった。もしギャン泣きされていたら、目も当てられなかっただろう。
『さて……』
俺は男が乗っていた騎乗動物に近づくと、頭を撫でてやる。
騎乗動物は二足歩行する爬虫類だった。カンガルーのような体形のトカゲである。おそらく草食系の動物なのか、優しい目をしていた。頭を撫でてやると、目を細めながら喜んでいる。
俺は一息つくと、二人に聞いてみた。
『失礼な質問だが、あなた方は奴隷か何かかい?』
きょとんとしながら男が答える。
「は、はい……。私たちは東の僻地で農民を営んでいた夫婦でしたが、悪者に騙されて農地を奪われ、さらには奴隷として捕まってしまって……」
『それは大変だったみたいですね』
この異世界にも、やっぱり悪い奴がたくさんいるんだろうな。ここも現実世界と変わらないってことだ。本当に人間ってやつは嫌な生き物である。
そんなことを考えていると、倒れている野郎が少し動いた。気絶から回復したらしい。
しかし、野郎は立ち上がってはこなかった。倒れたまま匍匐前進で逃げようとしている。もしかしたら下半身が思い通りに動かないのかもしれない。
そんな野郎に、俺はアイスアローを撃ち込んでやった。外れるように狙った氷の矢は、野郎の耳元に突き刺さる。
「ひぃ!!」
『走って逃げてもいいぞ。その代わり、乗り物は置いていってもらうけどな』
俺の言葉を聞いた野郎は、フラつきながらも立ち上がると、西へ向かって走り出した。
そんな背中を見送りながら、俺は震える二人に言ってやる。
『もう、あんたらは自由だ。さっさと去りな』
「ほ、本当ですか……?」
『ああ、故郷にでも帰って幸せに暮らしなよ。この乗り物もあげるから、早くお帰り』
「あ、有難うございます!」
男女二人は何度も頭を下げながら感謝していた。そして二人で乗り物に跨ると、二人乗りで走り出す。やがてすぐに見えなくなった。
『あれ……。キミは?』
「………」
一人、女の子が残されていた。フードを被ったまま、俯いている。
『おいおい、あいつら、慌てすぎて娘を忘れていったぞ……』
「私は、あの人たちの娘じゃない……」
フードを被ったままの少女は、寂しそうに言った。
『あの夫婦の子供じゃないのかよ?』
「うん、違う……」
俺は、騎乗動物で走り去る二人のほうを見たが、もう遥か遠くに行っていた。呼んでも聞こえる距離ではないし、追いかけても追いつける距離でもない。
『こりゃあ、困ったな……』
そう言いながら子どもの頭を撫でた俺は、その撫で心地の異変に気が付いた。
『あれ……』
「………」
『フードをめくってもいいかな?』
「うん……」
フードをそっとめくると、中から出てきたのは獣耳だった。白髪のてっぺんから、動物の耳が生えている。
『獣人なのか……』
「うん……」
彼女は頷きながら俯いた。その表情は、どこか申し訳なさそうだった。沈み込んでいる。
三人は俺の顔を見て驚いていた。若い娘さんは恐怖で奥歯をガタガタと鳴らしている。
まあ、仕方がないだろう。人語を喋るスケルトンが昼間っから出歩いていて、自分たちを捕縛している野郎をコテンパンにやっつけてしまったのだ。そりゃあビックリもするし、怯えもするだろう。
『大丈夫かい、あんたら?』
俺が垂れ流しのテレパシーで問い掛けると、男性と女性は抱き合いながら頷いていた。もう一人の女の子は目を丸くしながら俺を見上げている。
しかし、大人二人よりは怯えていない。それが幸いだった。もしギャン泣きされていたら、目も当てられなかっただろう。
『さて……』
俺は男が乗っていた騎乗動物に近づくと、頭を撫でてやる。
騎乗動物は二足歩行する爬虫類だった。カンガルーのような体形のトカゲである。おそらく草食系の動物なのか、優しい目をしていた。頭を撫でてやると、目を細めながら喜んでいる。
俺は一息つくと、二人に聞いてみた。
『失礼な質問だが、あなた方は奴隷か何かかい?』
きょとんとしながら男が答える。
「は、はい……。私たちは東の僻地で農民を営んでいた夫婦でしたが、悪者に騙されて農地を奪われ、さらには奴隷として捕まってしまって……」
『それは大変だったみたいですね』
この異世界にも、やっぱり悪い奴がたくさんいるんだろうな。ここも現実世界と変わらないってことだ。本当に人間ってやつは嫌な生き物である。
そんなことを考えていると、倒れている野郎が少し動いた。気絶から回復したらしい。
しかし、野郎は立ち上がってはこなかった。倒れたまま匍匐前進で逃げようとしている。もしかしたら下半身が思い通りに動かないのかもしれない。
そんな野郎に、俺はアイスアローを撃ち込んでやった。外れるように狙った氷の矢は、野郎の耳元に突き刺さる。
「ひぃ!!」
『走って逃げてもいいぞ。その代わり、乗り物は置いていってもらうけどな』
俺の言葉を聞いた野郎は、フラつきながらも立ち上がると、西へ向かって走り出した。
そんな背中を見送りながら、俺は震える二人に言ってやる。
『もう、あんたらは自由だ。さっさと去りな』
「ほ、本当ですか……?」
『ああ、故郷にでも帰って幸せに暮らしなよ。この乗り物もあげるから、早くお帰り』
「あ、有難うございます!」
男女二人は何度も頭を下げながら感謝していた。そして二人で乗り物に跨ると、二人乗りで走り出す。やがてすぐに見えなくなった。
『あれ……。キミは?』
「………」
一人、女の子が残されていた。フードを被ったまま、俯いている。
『おいおい、あいつら、慌てすぎて娘を忘れていったぞ……』
「私は、あの人たちの娘じゃない……」
フードを被ったままの少女は、寂しそうに言った。
『あの夫婦の子供じゃないのかよ?』
「うん、違う……」
俺は、騎乗動物で走り去る二人のほうを見たが、もう遥か遠くに行っていた。呼んでも聞こえる距離ではないし、追いかけても追いつける距離でもない。
『こりゃあ、困ったな……』
そう言いながら子どもの頭を撫でた俺は、その撫で心地の異変に気が付いた。
『あれ……』
「………」
『フードをめくってもいいかな?』
「うん……」
フードをそっとめくると、中から出てきたのは獣耳だった。白髪のてっぺんから、動物の耳が生えている。
『獣人なのか……』
「うん……」
彼女は頷きながら俯いた。その表情は、どこか申し訳なさそうだった。沈み込んでいる。
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