スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
57 / 261

55【結果オーライ】

しおりを挟む
「ですが――」

 マリマリは煎餅を皿に戻し、鋭い眼差しで俺を見据えた。さっきまでの柔和な雰囲気は消え、商人としての冷徹な表情に変わっている。こういう顔を持つ女は侮れない。

「あなたの話は、まこと興味深いですわ。しかし、それだけでは終わらないのでしょう?」

『……どういう意味ですか?』

「あなたが持つ塩は、確かにこの国では貴重な品。そして、金塊は、あなたの国では貴重品。しかし、何年もかけてドラゴンで旅をしながら、貴方が金を集める理由が、まだ見えてきませんの」

 鋭い。やはり只者じゃない。ただ欲しいからでは、許してもらえないらしい。

『私の祖国では、金はただの富の象徴ではありません』

「では何なのです?」

『――命です』

 俺の言葉に、部屋の空気がピンと張り詰めた。チルチルは不安そうに俺を見つめている。

『我が国には黄金の契約という掟があります』

 そんな物は無い……。

『私は、この体を維持するのに、一定量の黄金を捧げなければ、命を失うのです』

 それは本当である。

「命を……失う?」

『私はこの異国にたどり着き、金を集めなければなりません。さもなくば、私の存在そのものが消滅するのです。貴方がたも食事は取るでしょう。それが、私にとって金なのです』

 マリマリは息を呑み、二人の執事も硬直している。

「なるほど、それで塩を対価に金を求める商売を始めた、と」

『その通りです。あなた方のような目利きに理解してもらえるなら、私としては幸いですね』

 マリマリはしばらく目を閉じて考え込んだ。そして、ゆっくりと目を開き、静かに口を開いた。

「……シロー殿。一つお聞きしてもよろしいかしら?」

『どうぞ』

「あなた、私の娘を娶る気は本当にございませんの?」

『えっ!?』

 話の流れが急に戻ってきやがった。思わず目を丸くする俺を見て、マリマリはクスクスと笑う。初めて微笑みを見た。

「冗談ですわ。でも、あなたの秘密を知ったからには、何かしらの形で協力を申し出ないわけにはいきませんわね」

『協力、ですか?』

「ええ。あなたの商売、お手伝いさせていただきます。条件は一つ――私の娘を悲しませないこと、これだけですわ。それと、コメルス商会へ、定期的に荷を降ろすこと」

 一つじゃない。二つだ……。

 俺は驚いた。てっきり脅されるか、何か裏をかかれると思っていたのに。それが商売の契約だったのだ。

 まあ、結婚の方は断る。

『……いいんですか。俺のような得体の知れない存在と手を組むなんて』

「得体が知れないからこそ、興味が湧きますのよ。あなたが本当に信用できるかどうかは、これから見極めますけれどね」

 マリマリは涼やかに言ってのけた。その姿に、俺は内心で舌を巻く。やはりこの女、相当な切れ者だ。

『わかりました。では、改めて――よろしくお願いします、マリマリさん』

「こちらこそ、シロー殿」

 俺とマリマリは、固く握手を交わした。チルチルは満面の笑みでこちらを見ている。

 さて、これで商売の道筋はできた。あとは俺の腕次第だな――。

 本当は、親子の再開が目的だった訪問だが、結局俺の商売の話になってしまった。

 しかし、話し合いは上手く進んだ。結果オーライである。


 ちなみに、今日の儲け。

 電卓×五個、大銀貨三十五枚=35000ゼニル。
 鉛筆×二十五本、大銅貨百七十五枚=1750ゼニル。
 消しゴム×五個、大銅貨三十五枚=350ゼニル。
 ボールペン×十本、小銀貨七十枚=7000ゼニル。
 塩500グラム一袋、小銀貨三十七枚=3700ゼニル。
 胡椒15グラム一瓶、小銀貨十五枚=1500ゼニル。

 合計49300ゼニル、約小金貨五枚分の儲けでした。

 ……に、しても。数字ばかりで頭が痛くなる。脳筋の俺には難しすぎるよ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...