スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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65【事件発生】

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 雀の鳴き声に起こされたチルチルがベッドの上で背伸びをする。窓からは日差しが木漏れ日となって差し込んできていた。

 すると可愛らしい唸り声の後にチルチルが寝ぼけ眼を擦ると俺に気付いて挨拶を掛けてくる。

「おはにょうごはいまふ、シロー様……」

『おはよう、チルチル』

 ベッドの横で腕立て伏せに励む俺は、チルチルにお尻を向けながら挨拶を交わした。そして、ベッドから出たチルチルは、寝巻き代わりのパーカーを脱ぐとメイド服に着替え始める。

 俺はチルチルの着替えが済むまでひたすらに腕立て伏せを繰り返していた。背後を見ないように心掛ける。

「ふっふふ~ふぅ~ふぅ~」

 鼻歌を奏でるチルチルは、俺が買ってやった手鏡とヘアブラシで爆発しているようなボサボサの白髪を整えていた。

 チルチルは朝起きると高確率で髪の毛が爆発状態になるのだ。子供ならではの過激的な寝癖である。

 ヘアブラシはホームセンターで買ってきた三千円程度の品物で、手鏡は五百円程度の安物だ。

 しかし、チルチル曰く。どちらもこの異世界では高級品らしい。そもそも鏡は貴族やお金持ちの嗜好品らしいのだ。手鏡ぐらいの小さな鏡すら一般人は持っていないとか。

 それでもヘアブラシは鏡よりは出回っているとか。そもそもがヨーロッパにおけるヘアブラシの歴史は18世紀ぐらいかららしい。この異世界は15世紀ぐらいの文化レベルだから、まっとうなヘアブラシは少ないのだろう。

 以前のチルチルはお金持ちの令嬢である。そのチルチル曰く、俺が買ってやったヘアブラシは静電気が起きにくくて使いやすいらしい。

 昔のヘアブラシは、猪などの獣の毛を使っていたとか。だから静電気が起きやすいらしいのだ。そのようなことがネットに書いてあった。

 しかし、俺が買ってやったヘアブラシはプラスチック製だ。静電気などの対策ぐらいされているのだろう。

 流石は現代の商品である。いろいろ考えられているんだな~っと思った。今度マリマリやピノーさんに商品として降ろしてみようかとも思っている。

「シロー様、もう支度が終わりますよ」

『おう、わかった――』

 腕立て伏せを中断して振り返るとチルチルが着替え終わってパーカーを鞄にしまうところだった。そして、荷物を鞄に仕舞い込んだチルチルが、準備オッケーといった感じで笑顔を咲かせる。

『よし、それじゃあ下の酒場で朝御飯にでもするか』

「はい」

 今日の食事は酒場の朝食セットで済ませる予定だ。流石に食堂があるホテルに食事の持ち込みはアカンだろうと思っての気遣いである。

 チルチルもそのほうが良いだろうと言ってたので、それがこの異世界のマナーなのだろう。郷に行っては郷に従えである。

 旅立ちの支度が済んだ俺とチルチルは一階の酒場に出向く。すると先に起床していた暁の面々が食事を取っていた。

「おはようじゃ、シロー殿~」

 俺が階段を降り始めるとマージがこちらに気付いて手を振っていた。それに俺も応える。しかし、どいつもこいつも眠たそうである。覇気がない。

『あれ、プレートルは?』

 テーブル席に四人しか居ない。あの暑苦しい神官戦士の姿がなかった。

「彼なら――」

 俺の質問にティルールが答えようとした刹那だった、血相を変えたプレートルが酒場の入口に飛び込んでくる。プレートルは息を切らしながら大声で述べた。

「皆の衆、大変だぞ!」

「なんだ、朝から慌ただしいな?」

『また、男にでもケツを掘られたのか?』

「掘られたことなんぞないわ!!」

「俺も掘ったことはないわい!!」

 プレートルとエペロングが必死に否定していた。それを見てティルールとマージが遠慮なく笑ってる。

「それより、何があったのじゃ?」

 マージの質問にプレートルが大声で答える。

「納屋に泊めてあった騎獣が、全部死んでいるぞい!」

「「「「「『えっ!!!」」」」」』

 暁の面々もチルチルまでもが席を立って驚いていた。何人かは椅子を倒してしまうほどの驚きである。

 そして、我々は走って納屋に向かった。騒動を酒場のカウンター内で聞いていた女将さんもついてくる。

「こ、これは酷い……」

 最初に納屋を覗き込んだティルールが嘆くように口を押さえながら述べた。その背後から長身を活かして俺も覗き込んだ。

『うわぁ……』

 俺の目に飛び込んできた光景は、藁の上に倒れ込む数匹の騎獣たちの死体。中には目を剥いて、舌を垂らしながら無惨にも倒れている騎獣もいた。すべての騎獣が口から泡を吹いている。納屋の中には生き残っている騎獣は一匹もいない。壊滅状態だ。

『どうなっているんだ……』

 皆が愕然としている中で、冷静な素振りのバンディが納屋に入っていった。その後に俺が続こうとするとバンディに静止される。

「シロー殿、少し待っててくれ。俺が調べてくる。証拠品を踏まれたら堪らんからよ」

『あ、ああ。わかった……』

 納屋の入口前で皆が見守る中、バンディは足元を注意深く確認しながら少しずつ進んで行った。おそらく盗賊スキルを活かして何かを調べているのだろう。

「んん?」

 そして、バンディが一体の死体の前でしゃがみ込んだ。そこで腰からナイフを取り出すと近くの藁の中に手を突っ込んだ。

「これは――」

 藁の中から引き抜かれたナイフの先にはリンゴが刺さっている。しかも食べかけのリンゴだった。

 リンゴは青リンゴで半分ぐらい齧られている。サイズは、少し小さい。

 モン・サンの町でもパリオンの市でもそうだったが、この異世界のリンゴは日本のリンゴよりも小さくてテニスボールサイズである。

 どうやら日本産のリンゴが世界的にも大きいらしいのだ。それは現代でも異世界でも変わらないらしい。

「くんくんくん……」

 ナイフに刺さったリンゴの臭いを嗅ぐバンディが顔を顰めた。そして、述べる。

『毒入りリンゴか?』

「違う。こりゃあ、酒だな。アルコール入りリンゴで酔っ払っているだけだな……」

『酔い潰れているのか……?』

 その時である。一匹の騎獣がピクリと動いた。しかし、今度は鼾をかき始めた。どうやら本当に酔い潰れているだけのようだ。

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