105 / 261
100【二兎】
しおりを挟む
バンパイアが巣くう城の中。俺と暁の冒険団たちは、青髪のメイドに案内されながら薄暗い廊下を歩いていた。
外は日中なのに、城内には太陽光が微塵も差し込んで来ていない。窓はカーテンが閉められ日差しが遮られている。流石はバンパイアの城と言った雰囲気であった。
赤い絨毯が敷き詰められた廊下のところどころには、フルプレートの甲冑が飾られている。おそらく警護用のリビングアーマーだろう。今にも動き出しそうで不気味である。
そして、俺たちは客間に通された。そこにはマホガニーの机が置かれており、豪華な座席にはヴァンピール男爵が腰掛けていた。その後ろにシアンが立っている。
部屋の中は暗い。窓からは日差しが入ってこない。シャンデリアを飾るように焚かれた蝋燭が室内を照らしていた。
俺たちは、部屋の中央に設置されたソファーセットに腰掛けるように言われた。俺たちがソファーに着席すると、メイドたちが紅茶を運んで来る。
ティーカッブも上品だが、注がれている紅茶からも上品な香りが漂ってきていた。――っと、思う。俺には鼻が無いから香りは分からないのだ。テヘペロ。
そして、マホガニーのテーブルを前に腰掛けるヴァンピール男爵が言った。
「シロー殿、済まないね。早速、足を運んでもらって」
俺はソファーに腰掛けながら姿勢を正すと答えた。
『いやいや、構わんよ』
「何より、コア水晶の破壊、ご苦労さまでした」
「「「「「えっ!?」」」」」
ヴァンピール男爵の言葉に、暁の面々が驚いていた。彼らは俺がコア水晶を破壊した件については知らされておらず、今、初めて知ったのだ。
俺の隣に座るエペロングが訊いてきた。
「シローの旦那、ゴブリンのコア水晶を破壊したのか……?」
『うん、壊したよ~』
「相変わらず、仕事が早いな……」
するとシアンがテーブルの上にコア水晶の破片をいくつか置いた。
「これが、証拠の破片です」
テーブルの上に置かれた水晶の破片を、マージがじっくりと観察してから言った。
「間違いないじゃろう。この破片には、ゴブリンの気配が残留しているぞい。ギルドに持っていけば、コア水晶の破片だと鑑定されるじゃろう」
『へぇ~、気配とかで分かるんだ~。すげ~な~』
するとヴァンピール男爵が述べる。
「本日、冒険者の方々をお呼びしたのは、少しお話がありましてね」
リーダーのエペロングが問う。
「話とは何ですか?」
「コア水晶の破壊は、パリンオンとモン・サンの町の冒険者ギルドから、捜索と破壊のクエストが受注されていましたよね」
「ああ、両方の町から受注が出ている」
「それを、あなたがたは両方とも受けていますよね?」
「ああ、もちろんだ。そうじゃなきゃ、こんな田舎まで来ないぞ」
ヴァンピール男爵は、マホガニーの机の上で腕を組みながら言った。
「その依頼は、フランスル王国から出された依頼なのですよ」
「んん?」
首を傾げる冒険者たちは、ヴァンピール男爵が何を言いたいのか理解できていない。
「我々王国に属している組織が事件を解決しても、冒険者ギルドからは報酬が支払われないのです。何せ、依頼人は我々のようなものですからね」
そこまで聞いて、頭の回転が速いマージが察する。
「要するに男爵様は、我々冒険団が事件を解決したことにして、報酬を受け取りたいのじゃな」
ヴァンピール男爵は、薄笑いを浮かべながら返す。
「さすがは魔法使い殿。分かってもらえますか」
「ええ、分かりますぞよ。それで、取り分は?」
リーダーのエペロングを無視して、マージとヴァンピール男爵が話を進める。他の面々は、それを黙って見守っていた。
ヴァンピール男爵が微笑む口元を、組んだ両手で隠しながら述べる。
「取り分は、半々。そのぐらいが妥当かと思います」
マージは大きな胸の前で両腕を組みながら同意する。
「よかろう。こちらとしては、ボロ儲けな話だから問題ないぞよ」
「話が通じる相手で、良かったです」
ヴァンピール男爵の返答を聞いたマージが、テーブルの上に置かれた水晶の破片を二つ手に取る。そして、そのうちの一つを、向かいに腰掛けるエペロングに向かって放り投げた。それをエペロングは片手でキャッチする。
「リーダーは、パリオンの冒険者ギルドに行って、報酬をもらって来るのじゃ。ワシは、サン・モンの町の冒険者ギルドに報酬をもらいに行くぞよ。この破片が討伐成功の証明になるはずじゃ」
「なるほどね~。二兎追うものは、二兎とも得るってか。あんたらも、悪よのぉ~」
「はっはっはっはっ~」
「かーかっかっかっ~」
ヴァンピール男爵とマージの二人が悪どく笑っていた。それを他の面々が呆れながら見守る。
そして、澄んだ空気を俺の言葉が破る。
その一言とは――。
『ところで、俺の報酬は?』
室内が静まり返る。誰も一言も発しない。それどころか、誰も俺と視線すら合わせようとしない。
すると、暁の冒険団たちがソファーから立ち上がった。
「では、ワシはサン・モンに出発じゃ」
「マージ、俺も同行するぞ。一人だと危ないだろう」
「すまんの~、バンディ」
俺から視線を逸らしているエペロングが述べた。
「じゃあ、パリオンには、俺とティルールで向かうぜ」
「さて、善は急げだ。早く出発するぞい!」
五人は逃げるように部屋を出て行った。そして、俺はヴァンピール男爵を見つめながら、再び問うた。
『俺の報酬は?』
しかし、ヴァンピール男爵は、霧となってどこかに消えて行った。どうやら逃げたようだ。
外は日中なのに、城内には太陽光が微塵も差し込んで来ていない。窓はカーテンが閉められ日差しが遮られている。流石はバンパイアの城と言った雰囲気であった。
赤い絨毯が敷き詰められた廊下のところどころには、フルプレートの甲冑が飾られている。おそらく警護用のリビングアーマーだろう。今にも動き出しそうで不気味である。
そして、俺たちは客間に通された。そこにはマホガニーの机が置かれており、豪華な座席にはヴァンピール男爵が腰掛けていた。その後ろにシアンが立っている。
部屋の中は暗い。窓からは日差しが入ってこない。シャンデリアを飾るように焚かれた蝋燭が室内を照らしていた。
俺たちは、部屋の中央に設置されたソファーセットに腰掛けるように言われた。俺たちがソファーに着席すると、メイドたちが紅茶を運んで来る。
ティーカッブも上品だが、注がれている紅茶からも上品な香りが漂ってきていた。――っと、思う。俺には鼻が無いから香りは分からないのだ。テヘペロ。
そして、マホガニーのテーブルを前に腰掛けるヴァンピール男爵が言った。
「シロー殿、済まないね。早速、足を運んでもらって」
俺はソファーに腰掛けながら姿勢を正すと答えた。
『いやいや、構わんよ』
「何より、コア水晶の破壊、ご苦労さまでした」
「「「「「えっ!?」」」」」
ヴァンピール男爵の言葉に、暁の面々が驚いていた。彼らは俺がコア水晶を破壊した件については知らされておらず、今、初めて知ったのだ。
俺の隣に座るエペロングが訊いてきた。
「シローの旦那、ゴブリンのコア水晶を破壊したのか……?」
『うん、壊したよ~』
「相変わらず、仕事が早いな……」
するとシアンがテーブルの上にコア水晶の破片をいくつか置いた。
「これが、証拠の破片です」
テーブルの上に置かれた水晶の破片を、マージがじっくりと観察してから言った。
「間違いないじゃろう。この破片には、ゴブリンの気配が残留しているぞい。ギルドに持っていけば、コア水晶の破片だと鑑定されるじゃろう」
『へぇ~、気配とかで分かるんだ~。すげ~な~』
するとヴァンピール男爵が述べる。
「本日、冒険者の方々をお呼びしたのは、少しお話がありましてね」
リーダーのエペロングが問う。
「話とは何ですか?」
「コア水晶の破壊は、パリンオンとモン・サンの町の冒険者ギルドから、捜索と破壊のクエストが受注されていましたよね」
「ああ、両方の町から受注が出ている」
「それを、あなたがたは両方とも受けていますよね?」
「ああ、もちろんだ。そうじゃなきゃ、こんな田舎まで来ないぞ」
ヴァンピール男爵は、マホガニーの机の上で腕を組みながら言った。
「その依頼は、フランスル王国から出された依頼なのですよ」
「んん?」
首を傾げる冒険者たちは、ヴァンピール男爵が何を言いたいのか理解できていない。
「我々王国に属している組織が事件を解決しても、冒険者ギルドからは報酬が支払われないのです。何せ、依頼人は我々のようなものですからね」
そこまで聞いて、頭の回転が速いマージが察する。
「要するに男爵様は、我々冒険団が事件を解決したことにして、報酬を受け取りたいのじゃな」
ヴァンピール男爵は、薄笑いを浮かべながら返す。
「さすがは魔法使い殿。分かってもらえますか」
「ええ、分かりますぞよ。それで、取り分は?」
リーダーのエペロングを無視して、マージとヴァンピール男爵が話を進める。他の面々は、それを黙って見守っていた。
ヴァンピール男爵が微笑む口元を、組んだ両手で隠しながら述べる。
「取り分は、半々。そのぐらいが妥当かと思います」
マージは大きな胸の前で両腕を組みながら同意する。
「よかろう。こちらとしては、ボロ儲けな話だから問題ないぞよ」
「話が通じる相手で、良かったです」
ヴァンピール男爵の返答を聞いたマージが、テーブルの上に置かれた水晶の破片を二つ手に取る。そして、そのうちの一つを、向かいに腰掛けるエペロングに向かって放り投げた。それをエペロングは片手でキャッチする。
「リーダーは、パリオンの冒険者ギルドに行って、報酬をもらって来るのじゃ。ワシは、サン・モンの町の冒険者ギルドに報酬をもらいに行くぞよ。この破片が討伐成功の証明になるはずじゃ」
「なるほどね~。二兎追うものは、二兎とも得るってか。あんたらも、悪よのぉ~」
「はっはっはっはっ~」
「かーかっかっかっ~」
ヴァンピール男爵とマージの二人が悪どく笑っていた。それを他の面々が呆れながら見守る。
そして、澄んだ空気を俺の言葉が破る。
その一言とは――。
『ところで、俺の報酬は?』
室内が静まり返る。誰も一言も発しない。それどころか、誰も俺と視線すら合わせようとしない。
すると、暁の冒険団たちがソファーから立ち上がった。
「では、ワシはサン・モンに出発じゃ」
「マージ、俺も同行するぞ。一人だと危ないだろう」
「すまんの~、バンディ」
俺から視線を逸らしているエペロングが述べた。
「じゃあ、パリオンには、俺とティルールで向かうぜ」
「さて、善は急げだ。早く出発するぞい!」
五人は逃げるように部屋を出て行った。そして、俺はヴァンピール男爵を見つめながら、再び問うた。
『俺の報酬は?』
しかし、ヴァンピール男爵は、霧となってどこかに消えて行った。どうやら逃げたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件
fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。
チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。
しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。
気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。
笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる