箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

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54・リザードマンとの交渉

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藁葺き屋根の室内から姿を現したリザードマンは老体と娘の二匹だった。

老体のリザードマンは顎髭を長く伸ばして、老人らしく背中を曲げている。

何より自分をムサシと名乗っていた。

そして、その老体を支える娘は白い着物のリザードマン……。

否、リザードガールだろうか?

まあ、冗談は置いといて──。

その白い着物の娘が言った。

「貴方様ガ、魔王ノ使イデスト?」

キングが力強く答える。

「左様だ。貴公らリザードマンを魔王軍に勧誘しに来た」

「魔王軍ニ勧誘トナ」

「そうだ」

ツルツル鱗肌の老体が言う。

「何故に魔王軍が我々リザードマン族を欲するのじゃ?」

キングは明確に答える。

「まずは兵力増強のため。二つ目は酒作りの技術を知りたいがためだ」

「酒と兵力が目的とな?」

「そうだ」

「ナント煩欲ナリ」

「それで、ワシらが魔王軍に加わってなんの特があるのじゃ?」

「魔王様の祝福を受けられる!」

キングは鮮血の儀式のことを言っているのだろう。

でも、そんな言い方で意味が通じるのか?

普通は通じないだろう。

だが、リザードマンの長老は溜め息を吐いたのちに言いはなった。

「くだらんのぉ~。そのような理由で主を決められんのぉ」

ホラね、やっぱり意味が通じてないよ。

しかも、くだらないまで言われてますがな。

キングって、説明が苦手なのかな……。

すると、じれったくなったキルルが俺に小声で言った。

『魔王様、僕が説明を代わったほうが良いのではないでしょうか?』

俺は溜め息を吐いてから、おせっかいなキルルを止めた。

「今日の俺たちは観覧者だ。すべてをキングに任せたのだから、口出しは無用だぞ」

『は、はあ、分かりました……』

俺たちがコソコソと話している間にもキングたちの交渉は進んで行った。

「ならばリザードマンの長よ。リザードマン族は我らが魔王様に付かぬと言うのか?」

「付くも付かぬも、我々が付き従う理由がなかろうて。それとも、我々が何か特を得られる提案でもあるのかのぉ?」

キングがきっぱりと言う。

「我々と共に勇者と戦えば、絶滅から救われるぞ!」

だ、駄目だこりゃ……。

完全に意味が通じてない感じの説明だわ……。

「絶滅のぉ~」

リザードマンの長は顎髭を撫でながら呆れたかのような声を出していた。

てか、完全に呆れてるよね。

キングの説明は下手すぎる。

鮮血の儀式のことも、破滅の勇者から世界を救うことも、全然説明ができていないじゃあねえか……。

こいつ、脳味噌まで筋肉だぞ。

まさに、ザ・戦士って感じである。

だが、戦士は戦士の脳味噌をフル回転させて交渉を進めて行った。

「ならば、どうしたら従う? 無理矢理にも魔王様の前に膝まつかせようか?」

うわ、なんか悪者っぽいことを言い出したよ!

てか、俺の好感度まで下がるじゃあねえか。

しかし、リザードマンの長は顎髭を撫でながら柔らかい口調で述べた。

「それはそれは分かりやすい申し出でですな。我々も武人の端くれ、力で力を屈服させるのは分かりやすくて助かりますぞ」

あ~~、こっちも脳味噌が筋肉だわぁ!

しかも日頃から鍛練を積み重ねている筋ばった脳筋だわ~。

もう、赤みが固い筋肉と筋肉が語り合ってる感じだよ。

マジで面白いぞ。

老体が独眼のリザードマンをチラリと見てから言った。

「勝てるか、ジュウベイ?」

独眼のリザードマンは一つ頷くと言葉を返す。

「親方様、勝テル勝テヌカデハゴサイマセヌ。拙者モ侍ノ端クレデゴザル。見事ニ切ッテ捨テテミセマショウゾ!」

「ならば、立ち合ってみせい、ジュウベイ」

「御意!」

そして、独眼のリザードマンが前に出ようとした。

そのジュウベイの背後から別のリザードマンが止めに入る。

「待タレヲ、ジュウベイ殿!」

「ウヌ?」

ジュウベイが振り返ると、いつの間にかレザーアーマーを身に付けたリザードマンが片膝をついて背後に控えていた。

まさにいつの間にかだ。

そこに居るのに気配を感じなかったぞ。

頭を垂らすリザードマンが、そのままの姿勢で述べる。

「師範代デアラセラレルジュウベイ殿ガ出ルマデモナイデアリマショウゾ。ココハ、コノバイケン二任セテハ頂ケマセンヌデショウカ?」

バイケン?

バイケンって宮本武蔵と戦った鎖鎌使いの宍戸梅軒だろうか?

その名前も大河ドラマで聞いたことがあるぞ。

ジュウベイがバイケンに言う。

「食ワレルヤモ知レンゾ?」

バイケンが畏まったまま答えた。

「武術ハ、我ノホウガ上デ御座イマショウゾ」

その言葉を聞いたジュウベイが、その場を離れるように距離を取る。

「親方様、バイケン二手柄ヲ譲ッテモ構ワヌデ御座イマショウカ?」

「構わぬ、好きにせい……、ゴホン」

そして、咳払いを一つ吐いた長老がキングに言った。

「ならば隊長殿。こちらからの提案でござる」

「なんだ?」

老体は冷たきも鋭い眼差しでキングを睨みながら述べた。

「我々リザードマン族から手練れを三名出す。それをそちら側の三名が一騎討ちで打ち倒せたら、我々リザードマン族も魔王に従いましょうぞ」

勝負を条件に出してきた。

しかも一騎討ち三試合を御所望だ。

要するに、それだけ武術に自信があるのだろう。

キングが言う。

「その言葉に偽りはないな?」

「御座いませぬぞ」

リザードマンの老体は不適に微笑んでいる。

それとは裏腹に真面目な表情を崩さずキングが言った。

「ならば、こちらからも提案がある。聞き入れよ」

「何でございましょうか?」

キングが衣類の皺を延ばすように袖を払ってから述べる。

「こちらから出す三名は、私一名にしてもらいたい」

「なぬ?」

意外な提案だった。

だが、長老は戸惑うことなく返す。

「お一人で戦うと申しますか?」

「私が一名で三者と戦う」

「もしも我々の一者目に貴方様が撃ち取られて亡くなられたらどうなさいます?」

「そこでこの勝負はリザードマンの勝ちで構わぬ。我々の部隊はリザードマンの地から去ろうぞ」

「まことですか?」

「嘘偽りは言わぬ。約束しよう」

「三対一になりますぞ?」

「構わん。先程のように一対多数でも構わんぞ」

門前での話をしているのだろう。

キングさんったら強気だね~。

素敵だわ~。

「カッカッカッカッ」

リザードマンの老体が陽気に笑いだした。

「我々リザードマン族も舐められたものよのぉ。そこまで煽られて、タイマンを違えられもできまいて……」

薄い笑いを浮かべる老体をキングは真っ直ぐ睨み付けていた。

「約束しましょうぞ。一対一は違えません。だが、我々リザードマンの代表が一人でも貴方様に勝つことがあられましたら、素直にこの村から退散してもらいまするぞ。そして、二度と来られるな」

「それも約束いたしましょう、ムサシ殿」

両者の間で明確な契約が結ばれた。

これよりキングvsリザードマンの三代表との戦いが始まる。

これはかなり面白い展開に進んでいるぞ。

思ったよりもキングの交渉手段は素晴らしい。

俺の好みに合致している。

これならば、今後も強く期待できるだろうさ。


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