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56・第二戦の相手

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「ほう、技師バイケンを破るか──」

蜥蜴老人のムサシが長い顎髭を撫でながら関心していた。

そんな中で勝利したばかりのキングが体に突き刺さった木片を抜きながらハートジャックに手を差し出す。

木片は深く刺さっていない。

刺さった数は多いが傷は浅いようだ。

「ハートジャック、ポーションをくれ」

「はいはーい」

陽気に答えたハートジャックが下げ鞄の中からグレーターヒールポーションの小瓶を取り出してキングに向かって放り投げた。

どうやらキングはバイケンに受けた傷をポーションで癒す積もりのようだ。

身体中に刺さった木片に、脛を分銅で削られている。

致命傷ではないが、キングはあと二戦も戦わなくてはならない。

僅かなダメージでも回復して起きたいのだろう。

「なるほどね~」

『どうしました、魔王様?』

「キングの野郎、捨て身で掛かったのはヒールポーションがあるからか」

『あ~、なるほどです。グレーターヒールポーションがあるからですね』

するとポーションの小瓶を受け取ったキングが瓶の蓋を口で開けながら、倒れているバイケンの元に近付いた。

そして、気絶しているバイケンの体を起こすと蜥蜴の口にポーションを流し込む。

「あれれ、自分を癒すんじゃなくて敵を癒すのかよ。予想外だわ……」

俺がキングの行動に驚いている刹那であった。

「ハッ!?」

瞳を大きく見開いたバイケンが跳ね飛んだ。

戸惑いながらキングの側から離れる。

そして、斬られたはずの胸を擦りながら言った。

「コ、コレハ……。確カ儂ハ斬ラレタハズ……」

バイケンの斬られた胸の傷は完治していた。

明らかに致命傷と思われる傷が瞬時に癒えたことで戸惑っているのはリザードマンばかりだった。

そしてバイケンがキングに言う。

「貴様、何故二儂ヲ助ケル!?」

キングは残ったポーションを自分で飲み干すと、傷が癒えたのを確認してからバイケンに答えた。

「私の目的は、貴様らの殺害ではない。貴様らに魔王様への忠誠を誓わせることだ」

キングは凛と言いはなった。

俺は小声で呟く。

「目的を忘れていないな、キングの野郎」

『ですね、魔王様』

キルルが笑顔で相槌を入れる。

「さて」

傷の癒えたキングがジュウベイに光るシミターの刀身を向けながら言った。

「次はどいつだ?」

残るは二戦である。

長老ムサシの申し出は、リザードマンが指定した三名に勝利することである。

あと二戦残っていた。

故に凛々しい眼光を凄ませるキングが敵を急かす。

「さあ、さっさと勝敗を着けようぞ。私は連戦でも構わぬ。早く次の対戦者を出すとよい!」

バイケン、ジュウベイ、それにガラシャが爬虫類な瞳でキングを睨んでいた。

そんな中で笑顔を微笑ませる老蜥蜴のムサシが述べる。

「ジュウベイ、行けるかぇ?」

するとキングを独眼で睨み続けるジュウベイが堂々と返した。

「御意ッ!」

答えたジュウベイが腰の二本差しから太刀を一本引き抜いた。

抜いたのは大太刀のほうである。

そして、刀を構えることなく自然体でユルユルと前に出てくる。

「今度ハ拙者ガ御相手イタス」

「二番手は貴様か」

キングも一度納めていたシミターを鞘から引き抜いた。

半月刀を鞘から引き抜いただけでキングが背負うオーラが力強く燃え上がる。

キングの戦闘数値が上昇していた。

「「イザッ!」」

瞬時、両者が刀を構える。

キングは右足を軽く前に、背筋を延ばして片手で光るシミターを中断に構えていた。

対するジュウベイは体を斜めに大きく股を開いて腰を落として両手で刀を縦に構えて見せる。

まるでバッターボックスに立つ野球選手のような構えだった。

剣学で言うところの八相の構だ。

またを八双の構えとも呼ばれている古流の構えである。

その構えを見ながらキングが呟いた。

「出来るな……」

俺もジュウベイの構えを見て戦力を悟る。

「やはり剣技だけならリザードマンのほうが鍛練度が上だな」

確かに技術や鍛練ではリザードマンのほうが上である。

だが、純粋な身体能力ならば、鮮血で強化されたキングのほうが明らかに上なのだ。

故に、尚武の勝敗は、磨き上げた技が勝つか、天然の身体能力が勝つかの勝負に伺えた。

「さてさて、キングの野郎。今度はどう戦うのかな。楽しみだぜ」

俺は胸の前で両手を組むと偉そうに観戦に励む。

そして、第二戦が始まろうとしていた。

キングvsジュウベイ。

いま、激戦の幕が再度開こうとしている。

もう、なんともワクワクである。

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