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書店での出会い
しおりを挟む「あら、サイラス様。また来てくれたのね。」
カウンターから恰幅のいいおばさまが出てきた。
「スナリさん、こんにちは。」
「あら、今日は可愛いお嬢さんも一緒なのね。」
「はい、妹です。」
「サイラスの妹、エミリアです。よろしくお願いいたします。」
お兄様がいつもお世話になっている方のようね。
簡単にカーテシーをする。あまりかしこまり過ぎるのも、庶民のお店だと目立ってしまいますし。
「まぁまぁ、なんていい子なのかしら。主人を読んで来るわね。少し待っててちょうだい。」
古書店の落ち着いた雰囲気には少し明る過ぎるかもしれないけど、薄暗いところだからこそ、彼女の明るさが店を優しい雰囲気にしてるんでしょうね。
「素敵なお店ですね、お兄様。」
「そうだろう?僕の友だちとよく来るんだ。」
お兄様のお友だち?そういえば、お兄様のお友だち情報がないかもしれないわ。
この世界は8歳の年から学校に通う。お兄様もあと1ヶ月ほどで学校に通い始める。
跡取りですし、お父様に連れて行かれた先でできたお友だちかしら?
「サイラス様、ようこそいらっしゃいました。本日はどんな本をお探しで?」
考え事をしていたら、カウンターに髪も背も長いおじさんがやって来ていた。細身だから背の高さが際立っている。黒髪は後ろで1つに束ねていて、ちょび髭。服装は白シャツ、チェックパンツにサスペンダー。小粋なおじさまって感じね。
「僕は語学のために洋書を。妹には読みやすい童話をお願いしたい。」
「今日は小さなお客様もおいででしたか。ようこそ、いらっしゃいませ。」
「エミリアです。こちらこそ、よろしくお願いします。」
私の目線に合わせて、しゃがんで話してくれるなんていい人!お兄様、人を見る目がありますよね!
おじさまはカナンさんというらしいです。
カナンさんは私たちを2階の奥まで連れて行きました。
「絵本ならこの辺りが読みやすいかと思います。エミリア様はどんな物語がお好きですか?」
「ハッピーエンドが好きですけど・・・せっかくなので、自分で見てみてもいいですか?」
「はい、もちろんです。取りにくいものがありましたは、遠慮せずに仰ってくださいね。」
「お兄様はご自分の本を見てくださっても大丈夫ですよ。ラナが一緒にいてくれますから。」
「わかった。ラナ、エミィをよろしくね。」
「はい、よく見ておきます。」
んー?なんか答え方に引っかかりを感じますけど、今までやんちゃしてきてるのでなんとも言えませんね。
ということで、ラナと護衛を2人を残してお兄様は3階に上がっていった。
さて、本を選びますか。
1冊1冊本のタイトルを見て、なんとなく物語を想像していく。
買えても2、3冊が限度よね。勇者の冒険物語とかはさすがに興味ないし・・・。
タイトルを追って本を選んでいると、本と本の隙間から向こう側に人がいるのが見えた。どうやら端に座り込んで本を読んでいるらしい。歳は・・・私と同じくらいかしら?
邪魔をしないように、そっと近づいてみた。グレーの髪で顔はあまり見えない。服は少し汚れていて、でも庶民の子というよりは貴族の子が家から脱走してきたような感じに見える。
「なに?僕は見せ物じゃないんだけど。」
「あ、ごめんなさい。何の本を読んでいるか気になってしまって。」
男の子はパタンと本を閉じると、読んでいた本を渡してくれた。
「これ、面白かったですか?」
問いかけると、やっとこっちを向いてくれた。紫の瞳を見てハッとする。紫の瞳は王族の証だったような・・・。
「まぁまぁじゃない?・・・どうかした?」
「えっと、私、最近本を読み始めたばかりでして。オススメがあれば教えていただけたらな、と。」
今更、王族ですか?なんて聞けなくて誤魔化してみる。オススメを聞きたいのは本当のことだ。
男の子はハァとため息をついて立ち上がる。無言で歩き出した彼を慌てて追いかけた。
「僕が個人的に好きなものだから、君が面白いと思うかはわからない。」
そう言って本を2冊渡してくれた。
「ありがとうございます!」
お礼を言うと、男の子は少し頬を赤めてそっぽを向いた。
「君、名前は?」
「あ、名乗りもせずに失礼いたしました。エミリア・シューリットと申します。」
おそらく皇族が相手ということで、きちんとカーテシーをする。
「ふうん。サイラスの妹か。」
「お兄様のお知り合いですか?」
「まぁね。」
さっきお兄様が言っていたお友だちでしょうか?
「そろそろ時間だね。」
なんの?と思ったけど、足音が聞こえてお兄様がこちらにやって来たのだとわかった。
「じゃあ、またね。リア。」
口の端を片方あげて笑った。
あれ、この笑い方どこかで・・・。
「エミィ、いい本は見つかったかい?・・・って大丈夫?顔が真っ赤だよ?」
お兄様と目が合って、現実に引き戻された。
お兄様の名前はサイラス・シューリット。辺境伯の跡継ぎで、黄色い右目の下にある涙ボクロが色気をさらに引き出している。乙女ゲーム『ラブトリップ~運命の恋、始めます~』の攻略キャラクターの1人。
どうしてすぐに思い出せなかったんだろう。
私、エミリア・シューリットはこのゲームの悪役令嬢で各エンドで死か監禁される運命しかない。死のパターンは、処刑・結婚先で・暗殺者に襲われての3パターン。監禁は結婚相手にされるのよね。そしてその結婚相手が先程会った紫の瞳にグレーの髪の少年、ルカ・ド・カルシャイア。ルカは陰ながらずっとエミリアのことが好きで、でもエミリアが自分のことが好きではないのをわかっていて監禁する。自分の元から逃げられないようにするために。
結婚先で殺されるというのは、何度も逃げようとしたエミリアに怒って、これまた逃さず自分の元に置いておくためにしたルカなりの愛情表現ということになっている。死体を自分の手元に置いておくとか、狂ってる以外の何者でもないけど。
え、じゃあ普通は自分がその悪役令嬢に転生したことに気づいて青くなるところじゃないのかって?
違うんです。私がこのゲームをやり込んだのは、最推しのルカに会うためなんですよ。死んでしまうのは嫌ですけど、推しに監禁される立場なんて美味しくありません?
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