将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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ルカ・ド・カルシャイア

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私の様子がおかしいとお兄様は心配してくださって、今日は書店で買い物を終えたら帰ることになった。

馬車の中、心配するお兄様の横で私は考えていた。日記帳に書くことを作るためにと街へ出たのだけど、記憶が戻ったせいで逆に書き切れる気がしない。

私は乙女ゲーム『ラブトリップ~運命の恋、始めます~』をかなりやり込んだ。それは隠れルートにルカ様が登場するなんて噂話のせい。結局、あんなにやり込んだのにルカルートは開かなかったから嘘なんでしょう。

私はまず、現国王陛下と幼馴染であるお父様が結んだ第一王子との婚約を回避しなければならないわね。王子様も整った顔をされてたし、攻略対象のセンターにも立つような人だけど・・・隣であんなにキラキラされてたら萎縮しちゃうわよ。キザな言葉を吐かれたら鳥肌が立ちそうですし。
始めからルカ様と婚約すれば本来のシナリオから大きく外れることになるし、死のエンドからも遠ざかると思うのよね。ルカ様は逃げたエミリアを殺すけれど、私は逃げるなんてことしませんし。いい案だと思うんですよね。それに何と言っても、ルカ様の去り際の言葉!

『じゃあ、またね。リア。』

ルカ様は女性があまり得意ではない設定です。基本、塩対応。その彼が"リア"と呼んでくれるなんて最高すぎますし、"またね"って言ったんですよ。"またね"って!!

もう、ファンからしたら神対応すぎて鼻血噴ける事案じゃないですか?

まぁそれだけではなくて、この台詞はルカ様の執着の始まりの合図としてシナリオ内に実際ある台詞なんですよ。エミリアは第一王子より先にルカ様に出会っている設定です。ルカ様に殺害される死のエンドでわかるストーリーでして。

2人の出会いはエミリアが初めて王宮に連れて行かれたときのこと。その日は第一王子の婚約者候補として、同じ年頃の令嬢が集められていました。エミリアは父親と王宮を歩いていたのですが、中庭の素晴らしさに目を奪われて見惚れてしまいます。そして気がついたら、足を止めたエミリアに気づかなかった父親に置いて行かれてしまっていて。どうしたものかとオロオロしたところに現れるのがルカ様です。

ルカ様が何でそんなところにいるかって?

実はルカ様は第三王子でして。というのも、王子は三つ子の設定です。上から順にライト様・リアン様・ルカ様。王太子は一応1番上のライト様ですが、能力次第で変更される可能性はあります。それがライト様の悩みでもあり、ヒロインに惹かれた理由にも関わってくるわけですよ。

ルカ様といえば、三つ子ですから母親は同じ。王妃様からしたらどの子が王太子になっても立場は変わりませんから、どの子にも変わらず愛情を注いでいます。なので、王太子になろうがならまいが命が狙われるわけではない。それなら面倒臭いことはしたくない、興味のないことはしたくない、と王太子の地位にはなろうと考えていません。

そしてエミリアがルカ様に好かれた理由は、王子という地位に関係なく自分と接してくれる人だったから。

ご家族の考えとは別に、三兄弟の誰につくかという派閥が社交会にはある。そうでなくても、王子と縁者になりたいと言う人はたくさんいるわけで。麗しい容姿もあいまって、御三方に擦り寄る方はたくさんいるみたいです。
なので、自分の興味があることだけできたらいい、というルカ様からしたら大迷惑な話でした。そんな考えをしてる時点で、自分は王の器ではないとわかってましたしね。

初めて会った場でエミリアに興味を持って、2回目に会った時は既に兄の婚約者だったから大変ショックを受けるわけです。まだ恋していると幼いルカ様は気づいていませんが、王妃教育のために王宮に来るエミリアに何度も会いに行くルカ様。頻度は兄よりも多かったらしいです。エミリアからしてみれば一目惚れしたライト様はあまり来ず、弟のルカ様に付きまとわれてどんどん嫌いになっていく。まぁ、王太子の婚約者が他の男性と噂になるわけにもいきませんし、避けても来るんだから嫌にもなりますよね。

このまま待っていれば、ルカ様に次に会うのは第一王子の婚約者候補が集められたとき。でもそのすぐ後に第一王子と婚約者になることが決まっちゃうから遅いのよね。なんとか、それまでに会うことはできないかしら?格下の者が呼びつけるわけにもいかないし、そう何度も街に行くことはできないし・・・。

「エミィ、家に着いたようだよ。なんだかさっきから考え事をしているけど、大丈夫かい?やっぱり、何かあったんじゃない?兄様には相談できないことか?」

あら、いつの間に。考え事をしていたら時間が経つのはあっという間ね。

「お兄様、私も今は混乱しているのです。なので、後でお話を聞いてもらってもいいでしょうか?」

前世の話まで全てを話せなくても、頭の良いお兄様の知恵は借りておいた方が良い案が思いつきそうだわ。ルカ様と既にお友だちかもしれませんし。私は王都にいるはずのルカ様がここにいる理由も知りませんしね。

「もちろんだよ!今日でも、明日でも、明後日でも。いつでも頼っておいで。」

あぁ、お兄様の笑顔は今日も一級品ですね。国宝級です。妹の私でもその色気にやられそうです。
・・・ルカ様には負けますけど。

「ありがとう、お兄様!」

ぎゅうっとお兄様を抱きしめると、そのまま抱っこされて馬車から降ろされる。

「さぁ、僕の可愛いエミィ。お父様とお母様にお土産を私に行こうか。」

「はい、お兄様。」

甘すぎるお兄様のおかげで、もしかしたら婚約者にキザなことを言われても鳥肌が立たないかもしれないな。さっきの言葉を訂正しとこう。
とか、思っているのはお兄様にもルカ様にも内緒です。

ライト様にキザな言葉を言われて鳥肌が立たなくても、好きなのはルカ様ですから!
そこは勘違いされたら困りますからね。まだ初めて会って数時間しか経ってませんけど、大切なことなので未来のルカ様のためにフラグは折っておきましょう。
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