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チューリップ
しおりを挟むあっという間にルカ様が王都へ帰る日がやって来た。
私と離れることに渋るのではないかと思ったけれど、「早く、法的にも結ばれるためだ」と言ってあっさり帰ってしまった。今までの様子からして拍子抜けというか、ちょっぴり寂しく感じていたりする。
ルカ様は王族ではあるけど、王にはならない。その為、将来は公爵になる予定だ。お父様は私を王太子妃にするより公爵夫人にした方が気軽に会える、という理由で婚約書類にすぐサインしてくれた。下手な貴族に渡して苦労させることもないだろうし、とも言っていた。まぁ確かに、ルカ様は私に苦労させるようなことはことはしないだろう。むしろ、過保護に可愛がってもらえるのではないだろうか。
「お嬢様、本日もお花が届いておりますよ。」
ラナからメッセージカードを受け取った。
「ご自身の瞳の色のお花を送ってくださるなんて素敵ですね!毎日1本ずつ届いているので、邪魔にもならず絶えることもありませんし。お嬢様は本当に愛されてますね!」
嬉しそうに話しながら、届いたチューリップを花瓶に挿す。
そりゃあ、愛されてますよ。シナリオ内でもあんなに執着されてるんですもの。愛されない方がどうかしてるくらい。
紫のチューリップというチョイスは、きっとラナが思ってるほど軽いものじゃない。私が好きだと言ったチューリップの中でもわざわざ紫を選んだのは、花言葉が"不滅の愛"だからだと思うの。もちろん、ご自身の瞳だからというのもあるでしょうけど。
始めはどうやって毎日王都から花を届けているのだろうと思ったのだけど、どうやら辺境伯領にある街の花屋に依頼してあるらしい。メッセージカードはこちらに届く前日に、王都から花屋に届くと言っていた。ルカ様ってば、本当にマメなんだから。
"1日の始まりも終わりも、君のことを思い出しているよ"
毎日書いてあることが変わるメッセージカード。今日も変わらず、背中が痒くなるくらいキザな言葉が書かれている。
これはルカ様的に訳すと、一日中私のことを考えているということだろう。私を思い出さない時はないよ、と。そういうことだろう。
昨日は"左側が寂しい"と書かれていた。
屋敷ではずっと私が左側にいましたからね。
あっさり帰ったくせに!と思いながらも寂しいと思ってくれていることにキュンとしたのも事実です。
私はといえば、週に1度はお手紙を書くことにしました。ルカ様なら毎日書いても喜んでくれると思いますが、私が大変なので。
王太子妃を決めるパーティーは3ヶ月後に行われるそうだ。みんな気合を入れてドレスを作るだろうから、それくらいは必要だったんだろう。通達されてから1週間仕方っていないけど、有名なブティックは予約が殺到して大変なんだそうだ。私はルカ様が用意すると張り切っていらっしゃるので、お任せすることにしている。
お部屋の窓際に飾られた7本のチューリップ。
私がエミリアである限り、毎日送られてくるもの。転生ではなく憑依だったなら、いつ自分の正体がバレるだろうかと悩んでいたことだろう。
ラナが入れてくれた紅茶を一口飲む。
今の私の悩みといえば、手紙に何を書くかくらいだ。お陰様で、遠距離恋愛でも不安になることはない。
『会いたい』なんて素直に書いてしまえば、ルカ様は何もかも放り出して来てしまうだろう。嬉しいけど、推しの評判を落とすようなことはしたくない。王城に連れていかれても困るし。
でも、毎日楽しく過ごしてます!って感じの手紙を出したら『僕がいなくても平気なんだね』って拗ねちゃうと思うの。
シナリオ通りに死んでしまうのは絶対避けないといけないし、家族に会わせてもらえないくらい束縛されるのも避ける方向でいきたい。
あ、これなら私の寂しさも伝わるかもしれない!これを読んで、喜んでもらえたらいいなぁ。
筆が進み始めた私を、ラナが温かい目で見ていたのには気づかなかった。
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