13 / 150
サイラス・シューリット
しおりを挟むルカ様は私の隣に腰を下ろして、肩を掴んできた。
近い近い近い!お顔が近すぎて、このままでら心臓が止まってしまいます!
怒ったお顔を私に向けている。ちょっぴり怖いけれど、それ以上にドキドキしていた。
「もう!何に怒ってるかわかってないでしょ?」
ひゃぁぁあ!!!
そのぷくっと膨らました頬はなんですか?リスですか?私をキュン死にさせるおつもりなんですか?
「おい、聞いてないだろ?」
「や、やめてくらひゃい。」
両手で頬をむにむにつまんでくる。痛くないけど恥ずかしい。
「僕は怒ってるんだ。」
存じ上げてますけど、私の心臓はそれどころじゃないんです!
「はぁ、こんな顔も可愛いってどういうこと?」
「え、」
ぎゅゅぅうっ。
「この距離は家族か僕しか許しちゃダメ。」
わかった?なんて小首をかしげられてもですね、近距離すぎて頭が追いつかないんですよ。とりあえず、コクコク頷いておきましたけど。急に推しに抱きしめられ、耳元で話されたら誰でもこんな風になるんじゃない?
ちゅ。
「・・・ほんとかなぁ?本当にわかってる?」
いやいやいや、あのですね。頬や額にキスされながら言われても、理解できるものもできないんですよ。頭、真っ白になるんですよ!
その後もしばらく離してもらえなくて、ルカ様が満足される頃には半死体になった私が腕に収まっていたそうだ。(その頃には意識が現実世界になかったんだよね。)
★★★
「おはよう、エミィ。」
「おはようございます、お兄様。」
無事、目覚めた私はルカ様と朝食を食べに向かった。食堂にはお兄様がいて、お母様とお父様は既に朝食を食べ終えたらしい。
「あ、殿下もおはようございます。」
え、お兄様。いくら将来、義兄弟になるからと王族にそんな失礼な!おまけみたいな言い方ではないですか!
「・・・・・・お前の妹ファースト、俺は好きだぞ。」
「???ありがとうございます。」
・・・・・・ルカ様がいいと言うならいいのかな?まぁ、身分とかで区別するのはあまりお好きではないものね。うん、ルカ様が気にしないならいいんだ。後ろにいるラーヤ様も気にされている様子はないし。いつものことなのだろう。
「殿下、書類がこちらに届くまであと数日はあるんでしょう?」
「あぁ、あと2~3日はあるんじゃないか?」
「ここに滞在している間は、何かあれば僕か妹さんにお伝えください。父と母は家を開けることが多いんです。」
お父様は領地内の付近の視察や貿易のために昼間は出かけていることが多い。騎士団をまとめるお仕事もあるし、とにかく忙しい人。すぐにサボろうとしているけど。家族に会いたくて、夜までに帰って来れるようなスケジュールを立てているらしい。
お母様は情報収集のためにお茶会やお父様の視察についていったりしている。社交会でも名高いらしい母が情報を発信すれば、すぐさま王都まで広がるようなコミュニティが出来上がってるらしい。お母様のような人は絶対、敵に回しちゃいけないタイプだ。
「リアは今日、何するの?」
「今日は家庭教師の方が来てくださるので、夕方まではお勉強ですね。」
前世では勉強は嫌いだったけど、ゲームをしていた時にはわからなかった細かい設定が知れると思うとわくわくするんですよね。
「そっか。じゃあ、僕も受けようかな。」
「一緒にですか?」
「だって、どうせサイラスも授業なんだろう?ここに来て暇なのも、リアと一緒に過ごせないのも嫌だよ。」
あら、こんな甘い言葉をお兄様の前で言って大丈夫かしら?婚約の話をしたときを考えたら、お兄様の精神の健康的に悪くない?
チラッとお兄様を伺うと、殺気こそ飛ばしていないけど真顔でルカ様をガン見してるわ。あぁ、こんなお兄様のお顔、見たことない。手元は一切見ていないのに、綺麗に食事しているところは流石だわ。
ルカ様滞在中、気をつけないといけないわね。抱きつかれているところやキスされてるところをお兄様に見られたら、数日は寝込んじゃう気がするもの。
「・・・ルカ様、あとで僕の剣の稽古に付き合ってはいただけないでしょうか?」
「いいよ。将来のお義兄様とも仲良くしておきたいからね。」
ああぁ、ルカ様。そんな言い方したら・・・。ほら!お兄様のこめかみがピクッとしましたよ!辺境伯の跡継ぎということもあって、お兄様の剣の腕はこの年頃で1番だと言われているんですから。火に油を注がないでくださいな。
「是非、仲良くしていただきたいものです。」
お兄様はニコッと笑って食堂をあとにされましたが、あれは怒ってますね。
「違うわよ。確かに可愛い妹が取られると思って嫉妬している部分もあるけど、思ったよりもあなたの婚約が早くて寂しがってるのよ。サイラスはエミィが後ろからついてくるのを、小さい頃から喜んでいたのよ。」
ルカ様とお兄様が剣の稽古をしているとき、私は帰って来たお母様とお茶をしていました。
「小さな足でトテトテと、自分についてくるのが可愛くって仕方なかったみたいでね。どこに行くにも一緒にいたがった。お陰で、あなたが1番初めに話した言葉は『お兄様』なの。父様がどれほど悔しがったか。」
「初めて聞きました。」
「あなたが転んで泣いたら、サイラスも泣きながらあなたを抱っこして私の元に連れてくるの。2つしか歳が変わらないのに、幼児を抱えてくるなんてどこにそんな力があるのかしら?って驚いたものだわ。」
「ふふふ。お兄様は小さな頃からシスコンなんですね。」
「本当、うちの男どもはエミィに弱いのよ。」
愚痴るように、お母様は桃のタルトを口に運ぶ。
「もう少し、しっかりしてくれないかしら?」
悪役令嬢が出来上がる背景に、親家族が甘くてワガママに育ったというのは鉄板ですからね。仕方ないかもしれません。大抵、悪役令嬢は家族からも嫌われているか好かれすぎているかの2択だと思います。
でもゲーム内では、どんどんワガママが酷くなるエミリアを兄のサイラスは苦手に思うようになるのよね。
自分の接し方が悪かったのではないか。何か問題を起こす前に、どうにか昔の可愛らしいエミリアに戻ってはくれないか。
自分を責めて悩み、ヒステリックに叫ぶエミリアをなだめて。そんな日々を過ごしているサイラスの前に現れるのがヒロイン。昔のエミリアを思い出させるような可愛らしさに自然と惹かれ、自分の心に寄り添ってくれるヒロインを愛すようになるのだ。
「サイラス様は何も悪くないわ。悪いのは、サイラス様の優しさにいつまでも甘えているエミリア様です!」
そう言って涙するヒロインの言葉で、サイラスの心は助けられるシーンがあった。前世を思い出した私が、ゲームのような悪役令嬢になるとは考えにくいですが。
「お母様、この桃のタルト美味しいですわね。」
桃は瑞々しくて、間に入っている濃厚なチーズクリームと相性抜群。タルト生地はサクサクですし。
「そうね。さすが料理長だわ。」
家族と笑い合える、この和やかな空気を壊さないためにも私は悪役令嬢にならない努力をしなくてはなりませんね。
10
あなたにおすすめの小説
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
本の通りに悪役をこなしてみようと思います
Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。
本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって?
こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。
悪役上等。
なのに、何だか様子がおかしいような?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる