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なんにもわかってない
しおりを挟むリアと書店で鉢合わせしたのはハプニングだが、正直に言って運命だと思う。
ラーヤに聞いて、サイラスが寄りそうな書店を調べてもらっていた。そこでサイラスに会えたら妹の話でも聞いてみようと思ったんだ。シスコンに聞いてわかるか不明だが、情報はあるだけいい。それなのに、まさか令嬢本人を連れてくるとは思っていなかった。しかも兄と3階に行くと思って隠れたのに、2階に来てしまった。
ジロジロ見てくるし、あぁこれは顔を見せたら付きまとわれる。そう思った。そんなやつなら、この後すぐに王都に戻ろう。
本を渡してわざわざ顔を見せた。瞳を見れば、僕を知らなくても王族だとわかるだろう。きっとこの女も媚びてくる。そう思ったのに、彼女は本のオススメを聞くだけに留めた。瞳を見てから緊張した顔になったため、王族だと気づかなかったわけではないのに。いや、僕と話を続けようとしてるだけかもしれない。
ため息を吐いて、適当に本を選ぶ。それを渡してやると本当に嬉しそうに笑った。単純に本を選んでもらえて喜んでいるように見える。その顔が可愛いと思ったときには決めていたんだろう。翌日、兄のサイラスが届けた手紙を読むとすぐに王都に使いを出した。
サイラスは僕の名前を教えなかったらしい。手紙には"本を選んでくれた紳士様へ"と書かれていた。なんて可愛らしい。自然と笑みが浮かんだ。
絶対に逃すものか。
ラーヤには邪魔されたりしているが、どうにかシューリット辺境伯家に居座った。話せば話すほど、一緒にいればいるほど、僕にはリアしかいないと思った。王族ではない、僕を僕として見てくれる人。僕だからこそ愛してくれる人。彼女の表情を見たら、僕が好きなんだと伝わってくる。
リアは僕が笑った顔を見て、顔が真っ赤になっていることが度々ある。そんな顔を見るともっと近づきたくなるんだ。
ちゅっ。
「へぇっ?」
リアの頬にキスすると、さらに顔が赤くなった。
彼女はよく自分の世界に入ってしまう。大抵は僕をじっと見ていたりチラチラ見ていたりするから、その世界に僕がいるのは明白だった。こんなに嬉しいことはない。
気分良く歩き出した。後ろから彼女が近づいてくる気配がする。確か走りにくい靴を履いていた。少し止まるか?
ギュッ。
????!!!?
自身の腰に回された腕を見て理解する。
リアがっ、俺に抱きついてるッ!
恐る恐る手を離そうとするリアの手を繋ぎ止める。
逃がすわけないでしょうが。
「・・・何してるの?」
「ルカ様に優しくしていただいたのが嬉しくて・・・その、ごめんなさい。」
リアは優しくしてもらったら、誰にでも抱きつくの?
「・・・ハレンチ。」
「・・・へ?」
リアは、自分の可愛さが全然理解できてない!サイラスがシスコンになったり、心配性になるのも仕方ないよなこれは!
だってだってだって。
はぁぁぁぁあ。
相手の好意にも気づかず、友だちだから大丈夫だよ!とか言って抱きつきそうだ。リアなら絶対する。断言できる、間違いない。どっかにリアを閉じ込めておける場所はないのか!?
「どこに行きますの?」
誰も知らないどこか、リアを独り占めできる場所があるなら今から連れて行きたいよ!
でも、そんなことしたら嫌われそうだから我慢する。我慢するから!だから他の人に興味を持ってくれるな。
強く握りそうになる手を必死に抑える。そんなことしたら、リアの綺麗な指が傷ついちゃう。
ばかばかばか。リアのばか。
・・・可愛いんだよ、ばか。
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