将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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重い愛

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コトリ。

ラーヤ様が淹れてくださった紅茶はルイボスの香りがした。

「リア、久しぶりだね。来てくれて嬉しいよ。」

目の前に座るルカ様は、相変わらずカッコいい。

ルカ様の部屋に着く頃には、窓から夕陽が差し始めていた。

王妃様に似た髪は、茜色の光を浴びて白銀の輝きが映える。紫の瞳は妖しい輝きを持つ宝石みたい。見続けたら、その瞳に魅入られてしまいそうだ。

「どうかした?」

「っ!いえ、何も。」

見惚れていました、なんて恥ずかしくて言えない。言ったら、すごく喜んでくれるのはわかってる。そうなればきっと、毎日夕方になればこの部屋に招かれるようになるだろう。極端な人だ。

「そう?」

頬杖をついてこちらを見つめられると、困ってしまう。自然と上目遣いになっているし、推し兼好きな人にこんなことをされてキュンとしない人はいないんじゃないだろうか。

今までだって、ちゃんとルカ様を好きでいるつもりだった。でもやっぱり、キャラクターやアイドルとして好きだったんだと、恋愛的な意味ではなかったのかもしれないと今は思う。

「・・・ルカ様?」

急に立ち上がって、どうしたんだろう。

無言で立ち上がり、スタスタと私の隣に移動してきた。ポスッと座ると、頭を私の肩にもたれかけさせる。

「・・・隣に座ってもいい?」

!?!?!!

いや、もう貴方、隣に座っていらっしゃいますけど!!?

ちょっとムスッとした顔をしているけど、近距離×上目遣いで可愛いが大渋滞してる。いや、ムスッとした顔が可愛さを引き立てているかもしれない。

私の推しが大優勝してるけど、皆様生きていらっしゃる??呼吸困難になってたりしない??

「ねぇ、聞いてる?」

近いんですってば!

「もちろんでしゅ。」

ハッ!最近、滑舌直ったと思ってたのに!

真っ赤になった私を見て、満足そうな顔でクスクス笑っているルカ様。

「出迎えようと思っていたのに、ラーヤに止められたんだ。せっかく、久しぶりに会えるというのに。今日くらい勘弁してくれたっていいと思わないか?」

「そんなこと言って、エミリア様がご滞在のあいだは何かとサボろうとするのは目に見えてるじゃなきですか。」

ラーヤ様がティーワゴンでケーキを準備しながら、横目でルカ様を睨む。

お2人って主従関係なのに、本当に仲良いわよね。

「5歳に公務させようっていうのがおかしいんだよ。」

確かに、それはそうだわ。前世だったら虐待認定される案件ね。

「ルカ様はどんなことをなさってるのですか?」

「ん?・・・僕のこと、知りたい?」

揶揄うような笑みを浮かべて、コテンと首を傾げる仕草が似合いすぎていて頭が爆発するかと思ったわ。

「ルカ様はご兄弟の中で、1番魔法の才能があるんです。使える属性も全種類と、かなり稀有な才能ですので隠してはいませんが公にもしていません。」

へぇ、ルカ様にそんなチート能力があったとは。

「ちなみに、1番得意な魔法は闇魔法だよ。」

私の肩から膝に移動して、いわゆる膝枕を勝手に始めちゃうルカ様。
顔の距離は離れたけど、下からずっと顔を見られるのは嫌だな。・・・・・・二重アゴになってたりしないかしら?

「闇魔法ですか。珍しいですね。」

「結構、便利なんだよ?気配が消せたり、異空間を使えたりするんだ。」

フフンッ!と自慢気な顔をして説明してくれますが、それはあれですよね?気配を消してエミリアをストーキングしてみたり、異空間に閉じ込めて誰にも接触できないようにできるってことですよね?ゲーム内のルカ様の言動は、こういう裏設定があったからなんですね。今、理解しました。

「隠してないとはいえ、私に詳しく話して大丈夫なのですか?」

私から広がって、何かあった時にルカ様が犯人扱いされたりしませんか?

「何言ってるの?将来のお嫁さんに、知られてマズイことなんて何にもないよ?・・・それとも、リアは僕に隠しておきたいことでもあるの?」

「そんな!秘密なんてありません!・・・ルカ様が心配だっただけです。でも、信頼されてるってことですよね?嬉しいです。」

・・・すいません、ちょっとだけ嘘つきました。前世の記憶のこと隠してます・・・・・・。真顔で秘密があるのか?なんて聞かれたものだから、すぐさま否定しないといけない気持ちになりまして。

「まぁ、リアはすぐに顔に出るから隠し事は向いてないよね。僕の情報網から逃れられるとも思わないし。」

あの、サラッと怖い情報が聞こえた気がするのですが?

私の腰をギュッと抱きしめてくる。その可愛さに、母性が溢れ出てきた。

そっと頭を撫でると、気に入ったのか頭をスリスリしてくる。可愛い。めちゃくちゃ可愛い。

はぁぁあ。悪役令嬢のエミリアはなんでルカ様じゃダメだったのかしら。ライト様の笑顔なんて、胡散臭いじゃん。品行方正、善意の塊みたいな人って、行き過ぎるとなんだかロボットみたいだし。ちょっと暗い部分がある方が、人間らしくて私は好きなんだけど。

・・・・・・ルカ様は暗い部分ありすぎじゃない?とは思うこともありますけど。こういうのはハマったら抜けない、沼ですからね。

「ルカ様がこんなに気を許して甘えられる方は、エミリア様しかおりません。エミリア様の言葉なら聞きますしね。これからもしっかり手綱を握っててくださると、僕が助かります。」

「おい、余計なこと言うなよ。」

ふふっ、ラーヤ様は苦労なさってるのね。ルカ様はマイペースですからね。無理もありません。膝上にいるこの人がこんなに大人しいのは私の前だけ。

ゲーム内でのルカ様は、メイドたちにあまり好かれていませんでした。今考えると魔法の才能がありすぎて恐れられてたのかもしれないけど、ルカ様は自分の内側にいる人以外に全く興味がない方だから。それに人に仕えられるのはあまり好まない。何か適当に怖がらせて、自分の部屋から追い出していたのかもしれないわね。死亡フラグ回避のために、仕えてる者には優しく!と教え込んでおいてよかったわ。

「あ、」

「どうかしましたか?」

「手綱じゃないけどさ、リアにならどんなに束縛されても構わないからね。むしろ大歓迎。例え殺されても、リアなら本望だよ。」

・・・・・・え?突然、何言い出したのこの人。

「私はルカ様を殺しませんし、簡単に死なないでください!」

「えー、例え話だよ?」

「例え話でも嫌です!」

「ふぅん、わかった。もう言わない。でも、束縛はしたくなったらいつでも言って。」

この人は、ニコニコした顔でとんでもないことを言ってくる。私に向けている愛がヘビー級だ。でも、そんな愛を心地よく思っている自分がいる。

・・・重症だな。

ルカ様の笑顔に笑い返した。
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