将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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お出迎え

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「貴女がエミリア嬢だね。」

我が家の馬車を降りると、待っていたかのように声をかけられた。振り返ってみると、見事な金髪に紫の眼。爽やかな笑顔を貼り付けた、ザ王子様!といった感じの男の子がこちらに歩いてきていた。

「ライト様!お久しぶりですね。仰る通り、こちら妹のエミリアです。」

「エミリア・シューリットです。第一王子殿下、お会いできて光栄です。」

お兄様の紹介に合わせて、慌ててカーテシーをした。

ルカ様がいるかもとは思ったけど、まさか第一王子が待ち伏せてるとは。

一体、何の用で?今更、僕の婚約者に!なんて言われても困るから、そこのところよろしくお願いしますね?それに貴方と婚約すると、破滅フラグが盛大立ちますので。死にたくないんですよ、こっちは。

「頭を上げて。そんな他人行儀にされると寂しいな。」

少し困ったように言われるが、私は貴方に必要以上に近寄るつもりはないんですよ。

私が警戒しているとは全く知らないこの場の人たちは、初めて来た王宮に緊張していると思っているようだ。微笑ましいものを見るような雰囲気を出されているが、こちらは将来の命がかかっているので本気でしている。

「元々、サイラスの妹なんだから堅苦しい関係でいるつもりはなかったけれど、エミリア嬢はルカの婚約者なのだろう?もう、家族同然ではないか。」

ルカ様の婚約者になれてなかったとしても、私はバンバン壁を作って貴方と堅っ苦しい関係でいるつもりでした。声には出せないので、心の中で訂正入れときますね。
ルカ様の婚約者になった今も、ルカ様との関係を維持&向上できるように努めるので仲良くなりすぎるつもりはありません。ほら、今のルカ様はヤンデレ予備軍だし。

「殿下、娘は初めて領地から出たものですから、知らない方々に囲まれるのも初めてなのですよ。なので、どうかお手柔らかに。」

「ふむ・・・それもそうだね。こちらの配慮が足りなかったようだ。護衛の者は最小限に留めることにするよ。」

お母様、ナイスです!前世の記憶があるので人見知りとか全然ないですけど、人見知りのフリでフラグを遠ざけることができそうです。

「そういえば、なぜライト様が?ルカ様はどうされたのですか?」

今気づいたらしいお兄様が、私が1番聞きたかった質問をしてくれた。

「女性に1番興味がなさそうだったルカが決めてきたお相手だよ?興味が湧いたんだ。ルカは部屋に閉じ込められてるよ。」

・・・!?閉じ込められてるんですか?

目をパチパチとしばたたいた。その顔を見たライト様が説明を加えてくれる。

「ラーヤが、エミリア嬢が来たらルカが公務や勉強を放り投げて会いに行くだろうから、先に終わらせるために閉じ込めたんだよ。・・・ふふっ、ルカったら、ラーヤを目で殺しそうな顔付きになってたな。あんな顔、初めて見たよ。」

ライト様は、クスクスと思い出し笑いしている。片方の手を口に当てて、もう片方の手はお腹を抱えていた。世の女性なら、この笑顔に一発ノックアウトしてるだろう。輝く金髪のお陰で、天使のような可愛さと神々しさがある。

「さて、陛下にご挨拶に参りましょうか。」

「引き留めてしまって申し訳ございません。陛下は謁見室でお待ちです。」

お母様に一礼している姿は美しいけど、5歳の子どもが大人にするとなんだかちぐはぐに見える。15歳くらいになれば、もっと様になるのかもしれないけど。

「ありがとう存じます。サイラス、エミリア、行きますよ。」

「はい、お母様。」

「ライト様、また後でお伺いいたしますね。」

「あぁ、部屋で待ってるよ。」

初めての王宮で迷子にならないようにだろうか。1番前をお母様が、その後ろを歩く私の隣にいるお兄様は離れないように歩幅を合わせてくれている。

正直、ありがたい。ここで迷子になって、またライト様と遭遇するのは避けたい。

城門から謁見室は、5歳の子どもが歩くにはしんどいくらい離れている。お母様もお兄様も私に歩幅を合わせてくれてはいるけれど、遠いんだよ。ルカ様たちはサラッと歩くのしれないけど、私は領地に引きこもってた運動不足の幼児なんだから。

あまり王様を待たせてはいけないと必死になるが、歩くスピードは落ちていく。

そういえば、社交ダンスは案外体力がいると聞いたことがあるな。お母様みたいに綺麗に歩くには体幹も必要だろうし。

「エミィ、疲れたんだろ?」

小声で、お兄様が尋ねてくる。コクンと頷くと、少し考え込んでしまった。

「お姫様だっこしようか?」

え?

いやいやいやいや!お兄様と私は3歳しか違わないし、私を担いで歩いてもらうなんて申し訳なさすぎる。ドレスを着ているから、余計に重いだろうし。

フルフルと首を振ると、少し残念そうな顔をされたけどなんでだ。負担は減ったでしょう?

「もう少しで着くから、頑張ろう。無理だったら遠慮なく言うんだぞ。」

言ったら、私を運ぶんですよね?お姫様抱っこで。想像の中でもすごく目立ってたので、言わずに頑張ります。

しばらく歩くと、騎士がシックで重厚な扉を開けてくれた。奥の祭壇に王様と王妃様らしき人が座っている。おそらく、ここが謁見室だろう。

「遠いところからよく来てくれたね。」

王様は明るい金髪に紫の瞳。王妃様はグレーの髪に緑の瞳。

ゲーム内には登場しない2人と対面できるなんて、他のオタクに羨ましがられるだろうな。

お母様に合わせて両陛下に挨拶をした。2人ともとっても優しくて話しやすそうな雰囲気を醸し出している。

こんな優しそうな人たちを怒らせた悪役令嬢のエミリアは、ある意味すごいんじゃないだろうか。

現世でいうトップスターみたいな華のある2人に話しかけられ、途中から緊張でゲームシナリオとか完全に忘れていた。何を話したか、曖昧になっているから相当だ。

謁見室を後にして、お母様は王妃様に呼ばれて私たちと別れた。お兄様は私をルカ様の部屋まで案内してくれると言ってくれたが、少し悩んだ。

まだ公務が終わってなかったら、お邪魔なんじゃないかしら?でもそれを言ったら、ライト様のところで待つことになるかもしれないし・・・。

「リア!」

少し懐かしい声に前を向くと、ルカ様がこちらに手を振っていた。私に会えて、嬉しくてたまらないって顔をしている。

感情がダダ漏れちゃってるの可愛い・・・!片手で小さく手を振ってくるのも最高!!何そのお手手。私をキュン死させる気なんだろうか。

「ルカ様が迎えに来てくれたみたいだね。じゃあ、僕はライト様のところへ行ってくるよ。」

「はい、お兄様。」

目は去っていったお兄様を追っているけど、ルカ様が近くにやって来たことは敏感に感じとっている。久しぶりで、なんだか顔を合わせるのが恥ずかしい。

会えなかった3ヶ月の間で、推しとしてだけではなく1人の人としてルカ様に好意を持つようになった。ゲームのキャラクターじゃなくて、目の前のルカ様が好きだと思っている。距離があれば見ることができたのに、近くに来られると顔をそらしてしまった。

「行こうか。」

差し出された手をおずおずと握る。

私、そっけない態度に見えてるんじゃないかしら?ルカ様に不審がられているかもしれない。

チラッと横を見ると、嬉しそうな顔をして見つめられていた。びっくりして、視線を外せなかった。
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