将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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閑話

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コンコンコンッ!

寮の扉が叩かれた。誰か客人が来たようだ。

僕は専属の侍従を学校に連れて来ていない。自分の身支度もできないやつが、妹の身支度の手伝いなんてできないだろ?護衛だって、僕につけるなら妹につけてほしい。

「サイラス様、ラナです。」

ラナ?ということは、エミィはもう着いたのか。でも、なんでエミィは一緒じゃないんだ?

「どうぞ、入って。」

妹の侍従は音を立てずに中へ入ると、綺麗に一礼した。

うん、やっぱりエミィの侍従はこれくらいできないとな。

「エミィはどうしたんだい?疲れて寝てしまったかな?」

「いえ、お茶にご招待されましたので、サロンへ向かわれました。」

「ルカ様か・・・。」

「はい。」

妹の婚約者、ルカ・ド・カルシャイア殿下。僕には負けるけど、妹のことを愛してくれている。妹も彼を好きみたいなので、反対せずにいるが・・・正直、面白くない。つい最近まで「お兄様と結婚する!」とか言っていたのに・・・。

思わずため息をついた。

「サイラス様、お嬢様は校舎をご案内していただくことを楽しみにしておりました。明日など、いかがでしょうか?」

「どうせ、ルカ様は明日もエミィの元へ来るさ。2人の都合が良ければ、昼前に迎えに行くよ。」

「かしこまりました。それでは、お2人に確認しておきます。」

「ありがとう。」

静かに退出するラナから視線を外して、またため息をついた。

コンコンコンッ。

また来客か。今度は誰だ。

「サイラス、入るぞ。」

返事をする前に部屋に入って来たのは、ハオ・マカライア。現宰相の息子で、僕の親友。

「どうかしたのか?」

「廊下で女の侍従とすれ違った。妹の専属か?」

「あぁ、そうだ。学校を案内する約束をしてたんだが、婚約者とお茶するからと今日は断られたんだ。」

「婚約者・・・あぁ、第三王子か。ハハッ、そりゃ敵わないな。文句の一つも言えないわけだ。」

ハオは周りからクールだなんだと言われているが、僕の前では結構笑う。人見知りで慎重な性格が彼をクールに見せているだけだと、僕は知っている。

「サイラスは婚約者を作らないのか?」

「エミィ以上に愛せそうな人が見つからないだけさ。父様に勧められたら、文句を言わずにいるつもりではいるよ。そう言うハオだって、婚約者がいないじゃないか。」

「俺みたいな愛想なしと婚約したい令嬢なんていないさ。次男だから、有望株でもないし。」

「何言ってるんだよ。学年一位をずっとキープしといて、嫌味か?それは。」

ハオのお兄さんは、確かに爵位を受け継ぐだろう。しかし、王の周りにつくのは長男とは限らない。僕は将来、ハオが宰相を引き継ぐのではと思っている。

「それで、妹を案内するのはいつになったんだ?」

「君に関係ないだろ?」

「いいや、あれだけ毎日妹の話を聞かされてるんだ。僕には会う権利があると思わないか?」

「いや、ないね。そんな権利。できれば誰の目にも触れさせたくない。」

「馬鹿か。学園に通う時点で、色んな奴の目に触れるさ。顔を知ってれば、何かあった時に助けてやれるだろ?」

そんなこと言って、ただ面白がってるだけじゃないか。

「明日だよ。それも、ルカ様の気が向いたら。」

「振り回されてんなぁ。」

ハオは面白がってるのを隠しもせず、くつくつと笑った。

「気が向いたら、俺も参加するよ。」

「来なくていい。」

「わかった、参加する。」

ひと睨みすると、さも面白そうに笑ったまま部屋を出ていった。

人見知りなんだから、どうせ来たってたいした話はしないじゃないか。妹を心配してくれるのは嘘ではないだろうけど。ハオの中で、僕は少し抜けているように映っているらしい。そんなことないと思うんだけどな。

まぁ、ラブラブな2人を連れて案内しないといけないことを考えたら、ハオを連れていた方が少し気が楽かもしれない。
そう考えて、ほんの少しハオに感謝した。
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