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学校案内
しおりを挟む学園内にいる学生は、公爵家でも華美な服装を控えている。もちろん、控えるといっても日本よりも全然派手だ。宝石がついたアクセサリーを、少なくとも1つはつける。
授業中は制服を着ているからいいが、プライベートは身分の差が大きく出る。身分差別のない学校を謳っているので、校則ではないが暗黙のルールのようになっていた。
「こんな感じで大丈夫かしら?」
前世の記憶があるとはいえ、すっかりこの世界の価値観に染まってしまった私は鏡の前で最終チェックを行っていた。
「そうですね。これで街へ行けば商人の娘だと思われるのではないでしょうか。十分、配慮されたコーディネートだと思います。」
現在、襟がレースの白ブラウスに小さな紫の宝石がついたのリボンタイ、ブラウンのスカートを着ている。宝石のついていないタイもあったのでそれを選ぼうと思ったのだが、ラナに止められた。貴族の令嬢として1つは宝石をつけていた方がいいらしい。学校が身分差別なしといっていても、それに納得していない貴族もいる。教師の中にもいて、見た目が平民に見えると酷い扱いをする人もいるんだそうだ。
「じゃあ、今日はこれで決まりにしましょう。」
「はい。」
コンコンコンッ。
「リア、準備はできた?入っても大丈夫?」
この声は、おそらくルカ様だろう。着替えが終わった丁度に来るなんて、監視でもされてたんじゃないかって思ってしまう。この世界に監視カメラはないけど、闇魔法が得意なルカ様は監視くらいお手のものなはずだ。
「丁度、今支度が終わったところです。どうぞ、お入りになってください。」
扉を開けたのは、やはりルカ様だった。ラーヤ様はご一緒ではないようだ。
「おはよう、リア。」
今日のルカ様の服装は白シャツにボーダーのベスト、宝石のついたループタイ、黒のスラックスといった格好だった。ちなみに宝石は水色。
「リアはこういう服も似合うんだね。」
「ルカ様こそ、とっても素敵ですよ。」
座りもせず談笑する私たちに、ラナが紅茶を勧めてくれた。確かに、ずっと立ってるのも良くない。お言葉に甘えて、お兄様はがいらっしゃるまでお茶を飲んで待つことにした。
「うん・・・ラナの淹れる紅茶は絶品だね。」
「お褒めいただき、光栄です。」
「ラナばお菓子を作るのも上手なんですよ。なかでも、アップルパイがオススメです。」
「へぇ、今度作ってもらおうかな。」
確か、ゲームのルカ様はりんごが好きだったと思い出して、パイが得意なラナにアップルパイを作ってもらったら絶品だった。だからいつか、ルカ様と一緒に食べようと思っていたのだ。
ゲーム内の設定を持ち出すのは卑怯かもしれないけど、そもそも知らなければ私は死ぬ運命にあったんだから。今更よね。
コンコンコンッ。
「マイ・リトルレディ。迎えに来たよ。」
「お兄様だわ。」
「相変わらず、サイラスはキザだな。」
ナルシストではないから、恥ずかしいだけで済んで実害はないのよ?慣れれば恥ずかくもないし。
「おはよう、エミィ。よく眠れたかい?」
「はい。」
「何かあったら、いつでも僕のところへおいで。」
そう言って、頭を撫でてくれる手は優しい。ゲーム内でも好きな方ではあったけど、今はこの人が兄でよかったと心から思っている。
「サイラス、リアは何かあれば僕の元に来る。心配は要らないよ。」
ルカ様は私の頭からお兄様の手をペリッと剥がした。
「婚約者様には言えないこともあるかもしれないでしょう?」
「ないよ、そんなこと。」
「殿下への不満かもしれませんよ?」
お兄様、それは大変不敬な発言ではないでしょうか?
「馬鹿なのか?僕への不満なら尚更、僕に言わないで誰に言うというんだ。他の者に言っても、解決しないではないか。」
「本人に直接は言いにくいものなんですよ。殿下は配慮が足りませんね。」
やれやれ、と呆れたように話していますが本当に不敬ですからね。正直、弟になるにしても今は王族ですよ?
ハラハラして見守っていると、横からルカ様に抱きしめられた。
「そろそろ、妹離れしろよな。シスコン。」
「それで妹を愛せるなら、シスコンで結構。褒め言葉です。」
何をやってるの、この人たち・・・。
この状況を見かねたラナが咳払いをして、私が困ってるぞと2人に知らせた。
「あ・・・エミィ、ごめんよ。じゃあ、行こうか。」
ラナに指摘されたことが少し恥ずかしかったのか、耳をほんのり赤くしたお兄様が場を仕切りだした。
寮は貴族の連れの関係などから、異性を部屋に連れ込むこと自体は許可されている。入り口に見張りの兵はいるので無理矢理だと追い出されるし、入り口で誰に会うか申告することになっているから誰がどの部屋に入ったかの記録は残るようになっている。お兄様とルカ様は私の元に通い過ぎで、顔パスされるようになったのは後のお話。
「お茶を飲んでいたようだけど、お腹は空いていないかい?食堂でランチをしてから中を回ろう。」
「いいですね。賛成です。」
ルカ様を伺い見ると、ニッコリ微笑まれた。これはきっと、リアがいいなら僕は反対しないよ、ということだろう。
相手はお兄様だというのに、ルカ様は先ほどからピッタリと私にくっついている。少し歩きにくいし、貴族男性が令嬢の腕にしがみついてる構図はいかがなものだろう?と思うのだけど、まだ8歳だから許されると思っているのだろう。私個人としては、何歳になってもルカ様がくっついてくれるのは大歓迎なんだけど彼の評判が落ちてしまうから・・・。今だけできることだと思えば、多少の歩きづらさと恥ずかしさは我慢できる。
ルカ様と私の背はまだあまり変わらない。私がヒールを履いたら、少し私の方が高くなることもあるくらいだ。横を向いたら、幼めルカフェイスが拝めるなんて最高の極み。
「あ、アイツ・・・本当に来たのか・・・。」
前を歩くお兄様が、珍しく面倒臭そうな声を出した。その視線を追うと・・・えっ!あれは攻略対象のハオ・マカライアじゃない?!そうか、確か2人は親友の設定だったわね。お兄様が妹に学校を案内すると聞いて、見に来たんだわ。ゲームでは確か、サイラスは妹を可愛がっていいことしか言わないけど、巷では私の悪い噂が流れてきていて、サイラスを心配して私の偵察に来るシーンがあったわね。今の私は巷で変な噂が流れるようなことはなかったはず・・・よね?
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