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学校案内2
しおりを挟む「あ、いた。」
ハオの方もこちらに気づいたようだ。こちら向かって歩いてきている。
私の心臓はドクドクいっている。今まであった攻略対象者は家族だったり、会うってわかって会っていたからかここまでドキドキしなかった。
どうしよう。私、すごく動揺している。初めましてなのにこんな態度じゃ怪しまれないかしら?
「サイラス、そいつは?」
「お初にお目にかかります。ハオ・マカライアです。」
ハオがお辞儀をするのを、ルカ様は興味なさげに見ている。
「俺はサイラスに聞いたんだけど、まぁいいや。」
「申し訳ございません。」
「殿下、僕の友人です。」
「へぇ・・・」
いや、ルカ様。へぇ・・・って何よ。聞いたから答えてくれたのに!いや、まぁ聞かなくても王族に名乗らないのはマナー違反か。
「いつも兄がお世話になっております。妹のエミリアです。」
「よろしく。」
ハオはゲーム通り、クールな人のようだ。最小限の言葉しか話してくれない。そして、自分から来たくせに話題は提供してくれない。
「食堂に行こうとしていたんだ。ハオもどうだ?」
「あぁ、一緒に行くよ。」
お兄様、そこはルカ様に確認取るところではありませんか?まぁ、私がOKを出せば嫌とは言わない方ですけど。
私が今気になっているのは、何のためにハオが私たちを探していたかだ。シナリオ通り、私の悪い噂を聞いて・・・とかだったら困る。
「リア、どうかしたか?」
「あの・・・変なことを聞きますが」
「うん?」
「私って変な噂が立ってたりしませんか?」
そう言うと、ルカ様は少しポカンとした。
「いや、そんなの僕が耳にした瞬間に捻り潰すけど。」
あぁぁ、確かに!あれ、じゃあ何でゲーム内では・・・・・・そっか!あれはルカ様が流した噂だったんだわ。エミリアに悪い噂が流れれば、王太子の婚約者を辞めさせることができるかもしれない。それを願って、敢えて噂を流したままにしていたんだ。
私、ルカ様を敵に回したらかなりヤバイんじゃない?
密かに、校内で男性と話すのを控えようと決意した。
「それで、何か変な噂でも聞いたの?」
「いえ、なんだか急に不安になりまして。」
「ふーん。そんなの、気にしなくていいよ。」
悪い噂があっても私を手放すことはないし、私が気にするなら流したその人ごと捻り潰すからってことですよね。理解しましたとも。
「ルカ様が婚約者でよかったです。」
「・・・何を、今更。」
はぁ、今日も照れてるルカ様は最高です。
「ほら、そこ。イチャついてないで、食堂についたよ。」
食堂、なんて和風な言葉を使っていたから落ち着いた雰囲気を想像していたのに、見事に裏切られた。ここは教会ですか?と聞きたくなるようなステンドグラスがあちこちに飾られ、テーブルとイスは大理石で作られているようだ。ピカピカしていて目に悪い。
呆気に取られている私を見て、ルカ様がこっそり
「ここの食堂、趣味悪いよね。」
とか言うものだから、思わず真顔で頷いてしまった。
「さて、何食べる?お願いすれば何でも出してくれるけど、一応あそこにメニューがあるよ。」
お兄様が指差す方向を見れば、壁に大きな黒板みたいなのがあった。そこに白で料理名と金額が書かれている。
「あれは魔法で書かれているんだ。ぶつかっても消えないから安心してね。」
へぇ、あれ魔法で表示されてるんだ。おもしろ~い!
「私、オムライスにしようかな。」
「僕も同じものを食べよう。」
「じゃあ、僕たちがもらってくるよ。行こう、ハオ。」
慣れた様子で2人が取りに行ったけど、案内するなら私たちに自分で経験させた方がよくないかしら?まぁ、私たちはラナやラーヤ様が取りに行ってくれることになるかもしれないけど・・・。
「まだ教室を見てないけど、食堂を見ると不安になるな。こんなところで勉強なんてできないと思わないか?」
確かに、目がチカチカして落ち着かないかもしれない。
「教室は流石にここまでじゃないんじゃないですか?」
「そうだといいんだけど。」
誰の趣味かわからないけど、他の人が止めるんじゃないかしら。
「お待たせ。」
お兄様が目の前にオムライスをサーブしてくれる。
喫茶店のザ・オムライスをイメージしてたんだけど、包まないタイプの見るからに卵がトロットロのオムライスだった。デミグラスソースは、絶対これ何日も煮込んでるやつだわ。控えめに言っても美味しそう。前世で、オムライスが好物だったのよね。
「いただきます。」
ここでがっつくのは貴族令嬢にあるまじき行為よね。
目の前のオムライスをがっつかないよう食べる、ということに必死すぎて、周りの3人が私を見てプルプル震えてることには気が付かなかった。
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