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ライトルート
しおりを挟む「きゃあっ!」
『ラブ・トリップ~運命の恋、始めます~』
主人公はアメリア・エストランリア男爵令嬢。艶やかなピンクの髪に翡翠のような瞳。掴めば折れそうなほど細い腕と脚に似合わない健康的な肌。それが彼女の身体的特徴だった。
その潤んだ瞳で見つめられたら、たちまち恋に落ちてしまうのではないかと思えるような可愛さを持っていた。
「大丈夫かいっ?!」
彼女に手を差し出したのは光を溶かし込んだような金の髪に紫の瞳の人物。品行方正、正義の塊のような男、この国の王太子、ライト・ル・カルシャイアだった。
「あ・・・はい。ありがとうございます。」
この国1番の人気者に優しく微笑まれ、"貴族"に仲間入りしたばかりの彼女が恋に落ちるは必然。
「怪我はないかい?」
「はい、大丈夫です・・・」
差し出された手を握り、これは運命だと思った。彼は私の運命の人なのだと。
「あの、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ここでこんなことを聞くのは、彼女くらいのものだろう。
「ライト・ル・カルシャイアと言います。これからよろしくお願いしますね。」
「こっ、こちらこそです!」
名を聞いて慌てた彼女は、自分が名乗っていないことに気づかなかった。
「あの・・・私、ここに転入してきたばかりで何もわからなくて・・・。だから、その・・・。」
顔を真っ赤にして話す姿は、男慣れしていないことを匂わせた。
「僕でよければ、案内しましょうか?」
「っ!いいんですか!!」
見上げた顔はキラキラと、彼女の無邪気さが表れていた。
王太子のエスコートのもと、2人は学園を歩いた。
教室、音楽室、絵画室、庭園・・・。
微笑んで案内をしてくれる彼に、彼女は彼も自分に好意を持っているのではないかと考え始めた。
次の日、アメリアは手作りのクッキーも手に王太子の元を訪れた。昨日のお礼のつもりだった。そこで、彼には婚約者がいると知ることとなる。
手に持っていたクッキーは婚約者の手によって奪われ、踏みつけられた。
「神様は意地悪だわ。」
彼女の涙が地に届く頃。
「何をしているんだ!」
騒ぎを知った王太子が現れる。
婚約者は彼に言い訳を並べ立てるが、悪を許さない王太子に通じる訳がない。
彼の周りにいる者たちは「またか」という冷たい顔で婚約者を見ていた。
それを見てアメリアは悟った。
王太子は婚約者のことが好きな訳ではないのだわ。政略結婚で、無理矢理・・・でも優しい彼は彼女を無碍にもできなかった。きっと、そうよ。そんな結婚・・・悲しいだけだわ。私が彼に本当の愛を教えてあげなくちゃ。
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