将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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あれあれ・・・?

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「あら、もしかしてあなたが転入して来たエストランリア男爵令嬢かしら?」

ヒロイン登場から2日目。聞き覚えのある台詞が聞こえて!足を止めた。

ライト様の婚約者、マリアンヌ様がヒロインことアメリア嬢に声をかけている。

「はっ、初めまして。」

「なぁに?その平民臭い挨拶は。」

マリアンヌ様の取り巻きがクスクスと笑っている。

これは、かなり見覚えがある光景だわ。このイベントが起こる時、私はこの位置にいないと思っていたのに・・・まさか、自分が悪役令嬢役ではなくなってる??この世界は、王太子の婚約者であれば誰でもOKと捉えてくれるのかしら?

でも、マリアンヌ様はあんな性格の方ではなかったのに・・・これもゲームが開始したから?

なんて考えているうちにも、彼女からたちの会話は続いている。

「その手に持っているものは何?」

「あ・・・これは・・・」

アメリア嬢は何を思ったのか、手に持っていた小袋を後ろに隠した。

「私に見られてはいけないものなのかしら?」

「マリー、その子が持っていたものがさっき見えたのだけど、焼き菓子を持ってらしたわ。」

「焼き菓子?もしかして、それをライト様にお渡しする予定だったの?そんなもの、口にできる訳ないじゃない!」

「そんなの・・・わからないじゃないですか!作った人の身分とか、そんなの気になさるお方ではないですもの!」

アメリア嬢の言葉を聞いて、みんなが頭を抱えそうになった。

・・・問題なのは身分じゃないわ。何が入ってるかわからない、知り合いとは言えない程度の人が作ったものを王太子が口にできるわけないじゃない!

「あなた、ほんっとうにおバカさんなのね。色々とおつむが足りてないようだから、1年生からやり直した方がいいわよ。」

「マリー、この方は1年生を経験していないわ。やり直すというのもおかしな話ではなくて?」

「それもそうね。ズルをせず、1年から頑張ったらいかが?」

この学園は平民も通うくらいなので、本人に能力があれば料金はそれほど高くない。8歳から通えるとはいえ、試験に落ちて来年やり直す人もいる。そんな中、他の学園にいた訳でもないのに"転入"してくるなんて異例だった。ズルと言われても、おかしくはない。

マリアンヌ様は意地悪を言っている訳では決してないと、ここにいる誰もが理解できた。言い方は置いておいて、アメリア嬢と授業でペアになりたいという子はいないんじゃないんだろうか。だって、自分の評価が下がるもの。

ゲームの中のヒロインって、周りからこんな風に見えていたのね。逆に好きになった攻略対象がおかしいというか・・・何か魔法とか呪いとかかけられていたのかしら?って話になってくるわ。

「さっきから、酷いのではありませんか?私たち、初対面ですよね?公爵令嬢ならなんでもしていいんですか?身分がそんなにえらいですか?」

あぁ、彼女は本当に無知というか何もわかっていらっしゃらないわ。初対面でマリアンヌ様の人柄がわかるわけないでしょうけど、さっきから"マリー"と呼んで話に入ってきているローラさんは平民よ。大富豪でもなんでもない、ただのパン屋の娘。マリアンヌ様がそこのパンを気に入って通っているうちに仲良くなったそうだ。

「マリーほど身分を気にしない人はいないわよ(笑)」

ローラさん!笑っちゃダメじゃないでしょうか・・・?

それにしても、マリアンヌ様はどうしたのかしら?いつもほんわかしてる感じなのに、今日はトゲトゲしているみたい。ライト様と喧嘩したなんて考えられないくらい仲がよろしいですし・・・。

「その焼き菓子とやら、ライトに渡さないって約束してくださったら今日はもう絡まないわ。」

「そんな・・・嫌です!誰になんと言われても、これは殿下にお渡しするために用意したのです!」

アメリア嬢は頑として小袋を自分の背に隠し、潤ませた瞳で睨みつけた。ポメラニアンが威嚇してるみたいね。ちっとも怖くないわ。

「強情な方ね。」

「あっ・・・!」

背後から近寄っていたカエラに気が付かなかったのだろう。隠し持っていた小袋が奪われてしまった。

「返してください!」

「返したらライト様に渡すんでしょう?それは許可できないわ。」

カエラが小袋を地面に落とした。それをすかさずマリアンヌ様が踏みつける。

「あぁぁ・・・」

あの、踏みつけるはちょっとやり過ぎではないですかね・・・?そんなことして、バッドエンドになっちゃったりしたらどうするんですか?私の代わりに悪役になった方が追放などされたら、夢見が悪いです。

「何をしてるんだ!」

おっと!これはすごくまずいタイミングでライト様が来てしまったんじゃないですか?

「マリー・・・」

ライト様は踏み潰された小袋を見て、何か察した様子だった。

「ライトに食べさせるわけにはいかないでしょう?」

「踏みつけなくても・・・よかったんじゃないか?」

あぁ、ほら!ライト様も同じこと言ってるじゃないですか!

「あら、そんな生優しいこと言ってたら痛い目みますわよ?」

もう、カエラ!あなたは口を挟まないの!

ライト様と一緒にいらっしゃったリアン様、お兄様、ハオ様はやれやれといった感じで見守っている。ここにジオル様がいたら大ごとにしそうね。いなくてよかった!

「えぇっと、アメリア嬢・・・大丈夫かい?」

「怖かったのですが、ライト様が来てくださったので心強いです!」

うるうるした瞳と笑顔で殿下に近づくのを、お兄様がさりげなく阻止。

ナイスよ!お兄様!

「私、昨日のお礼がしたくて・・・」

「ありがとう。でも、気持ちだけで充分だよ。」

「私の気持ちが済まないんです!何か、欲しいものとかないですか?」

この国で1番くらいが高い人が買えなくて、あなたが買えるものって何よ・・・?愛とか友情はもう手に入れてますよ?

ライト様がすごく困った顔をしてるのに・・・あぁ、にっこりしているから気づいてないのね。王太子が気持ちを全部顔に出すわけないのに。
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