将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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絵本2

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窓から茜色が差してきた。

「皇室の騎士団と魔導士を派遣するように父上に話してみるよ。」

ライトが図書館から出て行った。

「ルカ、顔色が真っ青だぞ。一度休もう。ほら、サイラスもだ。」

リアンはそう言うと、僕とサイラスを図書室から連れ出した。

僕たちはサロンに連れてこられると、椅子に座るよう促された。

「ハーブティーだ。こんな時こそ落ち着くべきじゃないのか。」

リアンの言う事は、頭では理解ができる。でもこれは、この感情は理屈じゃなかった。

「ルカ様、お願いです。殿下はリアの前世の言葉を理解できるのですよね?僕にもあの絵本の内容を教えていただけませんか?」

僕にそう訴えるサイラスは、藁にも縋るような顔をしていた。きっと僕も、同じような顔をしているのだろう。

僕は彼に1枚1枚ページをめくって、物語を伝えた。

彼はずっと一緒に過ごしてきた兄ならば、僕が気づかないことも気づくかもしれないと思ったようだったが、結局何もわからなかったようだった。

「この物語のお姫様は、なんだか品がないですね。」

空気の重さに耐え兼ねたラーヤが、冗談を言うように話に入ってきた。

「・・・品がないってどういうことだ?」

「ほら、ここですよ。窓に落書きしてるじゃないですか。こんなことするのは、平民の子どもくらいですよ。」

ラーヤが指を指した先を見ると、確かに窓に文字が書かれていた。

「前世のエミリア嬢が過ごした日本というところは、階級がないと聞いた。お姫様がそんなことをしないと、気づかなかったのではないか?」

「うーん、確かにそうですが・・・お転婆な方ならこの世界の姫にもいるかもしれませんよ?」

「それをラーヤが言うのか?さっき、お前だっていないようなことを言ってたじゃないか。」

「この絵本の作者は、やはり日本に関わりがある人だということでしょうか・・・。ルカ様のように文字を理解してるだけでは、この発想にならないでしょうから。」

「それは言えてるな。」

「私どもが現在知ってる、日本に関わりのある人物は皇太后陛下とエミリア様、候補としてアメリア嬢ですね。」

「やはり、皇太后陛下が生前に書かれたものではないのですか?ゲームとやらのシナリオを書くほどの人です。絵本だって作ることができたのではないですか?」

可能ではあるな。

「うーん、お婆様は絵が下手だった気がするな。」

それは僕も記憶してる。猫か犬かうさぎかわからない動物の絵を見せられたことがある。

「絵は他の誰かに描いてもらった可能性だってあるじゃないですか。」

確かに。でもそうなると、その誰かも容疑者の1人だな。

僕抜きで続く会話に、頭の中だけで参加する。

もしその協力者が犯人だったら厄介だ。だって、僕らにとってまだその人は架空の人物で、一から手探りで探すのと変わらない。

「はぁ、ラーヤ。お前は面倒臭い思考の野郎だな。」

「ルカ様の従者として、褒め言葉として受け止めておきます。」

おい、一言余計なんだよ。

「ラーヤ様、窓にはどうやって文字を書くかご存知ですか?」

「ええ、もちろん。」

はぁぁっと窓に息を吹きかけ、白くなったところに指で文字を書いた。

「・・・なるほど。窓に文字を書くことだけでなく、それまでの過程にも品がないと言われる理由があったんですね。」

させておいて、その言い方はちょっと酷くないか?

リアンのお陰で少し冷静さを取り戻したかもしれない。

考え続けるためには糖分が必要だ。
サクサクと無言でクッキーを口に運び続けた。

その間も、彼らは会話を続けていた。
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