68 / 150
絵本2
しおりを挟む窓から茜色が差してきた。
「皇室の騎士団と魔導士を派遣するように父上に話してみるよ。」
ライトが図書館から出て行った。
「ルカ、顔色が真っ青だぞ。一度休もう。ほら、サイラスもだ。」
リアンはそう言うと、僕とサイラスを図書室から連れ出した。
僕たちはサロンに連れてこられると、椅子に座るよう促された。
「ハーブティーだ。こんな時こそ落ち着くべきじゃないのか。」
リアンの言う事は、頭では理解ができる。でもこれは、この感情は理屈じゃなかった。
「ルカ様、お願いです。殿下はリアの前世の言葉を理解できるのですよね?僕にもあの絵本の内容を教えていただけませんか?」
僕にそう訴えるサイラスは、藁にも縋るような顔をしていた。きっと僕も、同じような顔をしているのだろう。
僕は彼に1枚1枚ページをめくって、物語を伝えた。
彼はずっと一緒に過ごしてきた兄ならば、僕が気づかないことも気づくかもしれないと思ったようだったが、結局何もわからなかったようだった。
「この物語のお姫様は、なんだか品がないですね。」
空気の重さに耐え兼ねたラーヤが、冗談を言うように話に入ってきた。
「・・・品がないってどういうことだ?」
「ほら、ここですよ。窓に落書きしてるじゃないですか。こんなことするのは、平民の子どもくらいですよ。」
ラーヤが指を指した先を見ると、確かに窓に文字が書かれていた。
「前世のエミリア嬢が過ごした日本というところは、階級がないと聞いた。お姫様がそんなことをしないと、気づかなかったのではないか?」
「うーん、確かにそうですが・・・お転婆な方ならこの世界の姫にもいるかもしれませんよ?」
「それをラーヤが言うのか?さっき、お前だっていないようなことを言ってたじゃないか。」
「この絵本の作者は、やはり日本に関わりがある人だということでしょうか・・・。ルカ様のように文字を理解してるだけでは、この発想にならないでしょうから。」
「それは言えてるな。」
「私どもが現在知ってる、日本に関わりのある人物は皇太后陛下とエミリア様、候補としてアメリア嬢ですね。」
「やはり、皇太后陛下が生前に書かれたものではないのですか?ゲームとやらのシナリオを書くほどの人です。絵本だって作ることができたのではないですか?」
可能ではあるな。
「うーん、お婆様は絵が下手だった気がするな。」
それは僕も記憶してる。猫か犬かうさぎかわからない動物の絵を見せられたことがある。
「絵は他の誰かに描いてもらった可能性だってあるじゃないですか。」
確かに。でもそうなると、その誰かも容疑者の1人だな。
僕抜きで続く会話に、頭の中だけで参加する。
もしその協力者が犯人だったら厄介だ。だって、僕らにとってまだその人は架空の人物で、一から手探りで探すのと変わらない。
「はぁ、ラーヤ。お前は面倒臭い思考の野郎だな。」
「ルカ様の従者として、褒め言葉として受け止めておきます。」
おい、一言余計なんだよ。
「ラーヤ様、窓にはどうやって文字を書くかご存知ですか?」
「ええ、もちろん。」
はぁぁっと窓に息を吹きかけ、白くなったところに指で文字を書いた。
「・・・なるほど。窓に文字を書くことだけでなく、それまでの過程にも品がないと言われる理由があったんですね。」
させておいて、その言い方はちょっと酷くないか?
リアンのお陰で少し冷静さを取り戻したかもしれない。
考え続けるためには糖分が必要だ。
サクサクと無言でクッキーを口に運び続けた。
その間も、彼らは会話を続けていた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
本の通りに悪役をこなしてみようと思います
Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。
本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって?
こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。
悪役上等。
なのに、何だか様子がおかしいような?
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる