将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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救出

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「ルカ様~!いいんですか?本当に」

「あれがなくとも、リアを助けることができるからね。確認だけできたら今は充分。」

自室に戻ると、例の絵本を広げた。

どのページがいいだろう?できるだけお姫様が大きく写っていて、他に人物がいないページは・・・。

「ラーヤ、ロープを持ってきてくれ。」

「ロープですか?」

「そう、丈夫なやつを頼むよ。」

不思議そうな顔をしつつ、すぐ探しに行った。こういう時に、ラーヤが有能であることを思い出す。

よし、このページにしよう。お姫様が夜、テラスで空を見ているシーン。

「ルカ様、こちらはいかがですか?」

汗ひとつかかずに戻ってきた有能侍従からロープを受け取る。そして素早く、細かく、ロープを確認した。

太さや強度は十分だな。ささくれ立っている部分もなさげだから、指に刺さって痛いなんてこともないだろう。

「よし、じゃあ始めようか。」

まだ消えていない、リアとのやり取りが残った窓。そこに新たにメッセージを書いた。

『リア、今からいう僕の言葉を信じてくれるかい?』

すると、すぐに返事が返ってきた。

もしかしたら、窓の前でずっと僕からのメッセージを待っていたのかもしれない。あぁ、なんて可愛いんだ。今すぐ抱きしめたい。クソッ、あいつ焼き鳥にしてやろうか。

『もちろんです。』

『そこはリアに都合の良い世界なんだ。想像してみて。』

『助けが来た。絵本の中から脱出可能だ。』

言い聞かせるように、想像する時間を設けるためにゆっくり書いていく。

『ほら、空からロープが降りてくる。』

そう書く僕の後ろで、ラーヤが絵本にロープを垂らした。

「これ、本当にロープが絵本を届くんですか?」

「黙ってろ。」

『リア、どう?想像できそう?』

『このロープに掴まれば、リアは絵本から抜け出せるんだ。』

『やってみます。』

悔しいけど、ここはリアの想像力に任せるしかない。頼む。頑張って。

僕の元に戻ってきて。

「あっ!」

ラーヤの声に振り向くと、掴んでいたロープがスルスルと絵本に吸い込まれていた。

「ラーヤ、絶対離すなよ!」

「承知しました!」

ラーヤの前側に滑り込み、一緒にロープを下ろしていく。しばらくすると、クイっと僅かな手応えを感じた。

「よし、ラーヤ。引き上げるぞ。」

「はい!」

余り時間をかけてられない。途中でリアに限界が来て落ちてしまったら、大怪我を負う。そんなことはさせられない。もちろん、リアがそんな想像しなければ大丈夫なんだけど。

「リア!あともう少しだ!」

聞こえるかわからないが、ロープを吸い込んだ絵本に向かって話しかけ続けた。

「あ!ルカ様、見てください!」

絵本から、小さな手のひらが見えてきた。

その手のひらを掴んで、引き上げた。

「きゃあっ!」

勢いよく絵本から飛び出してきたのは、リアだった。僕の顔を見るなり目をウルウルさせて、今にも溢れ落ちそうだ。

「ルカ様ぁ。もう、会えないかと思いました!!」

大好きな婚約者にギュッと抱きしめられて、嬉しくないわけがない。しかも、リアからなんてレア中のレアだ。僕は大人しくリアに抱きつかれた。

右肩が涙で濡れ始めた。

優しく背中を叩いてあやしているが、僕だって不安だった。久しぶりの香りにやっと安心できた。

「ふぇぇ。」

「びっくりしたよね。よく頑張った。今日は一緒に寝ようね。」

髪を撫でると、リアが小さく頷いた。

よしよし。

「・・・・・・それは、ルカ様の願望ですよね?」

なんて後ろから聞こえた声は無視だ無視。

お互いが落ち着くまで、僕らは抱き合って互いの存在を確かめた。
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