2 / 62
第1章
誘拐された!?
しおりを挟む夢を見た。子どもの頃の夢を。
小さい頃の私は、よく熱を出した。
そんな時、母はいつもお粥を作ってくれた。
初日は塩で味付けしただけのもの。
少し回復してきたら、卵入りのものを作ってくれた。
いつも忙しそうにしている母が、私だけのために時間を作ってくれることが嬉しかった。
お粥は、優しくて温かい味がした。
そういえば一人暮らしをしてから、まともに話してなかったな。
元気にしているだろうか。
心配をかけたくなくて、いつの間にか母からの電話を無視するようになっていた。
声を聞いたら泣いてしまうかもしれないし、
私の声から疲労を感じ取られたら嫌だなとか考えて、見栄を張り続けた。
次、電話がかかってきたら出てみようかな。
なんとなく、次は笑って話せる気がする。
そういえば、なんで子どもの頃の夢なんて見ているんだろう。
寂しさからだろうか。
あぁ、それにしてもいい匂いがする。懐かしい匂いだな。
食欲に負けて目を開いた。
あれ、起きたと思ったけどまだ夢の中かもしれない。
うちの天井はこんなんじゃなかったはず。見覚えもない。
・・・・・・夢の中で食欲は満たせないな。
もう一度、目を閉じてみた。
しばらくは寝付けないかもしれないけど、いつものことだ。
そのうち落ちているだろう。
気長に苦しい夜を・・・・・・
と思ったけど、夢の中だからだろうか。
胃も頭も痛くないし、気持ちは落ち着いている。
こんな穏やかな気持ちはいつぶりだろうか。
不思議に思っていると、不意にコトッと音がした。
すぐ近くに人がいる気配がする。
額がスッと軽くなって、あれっと思ったときには冷たいものが乗せられていた。
ん???
もしかして私、看病されてる?
夢にしてはやけに感触がリアルだ。
でも現実は家にいたはずだから、誘拐でもされない限り別の場所に移動しているのはおかしい。
それに、誘拐される理由が思いつかない。
私って、夢遊病だったかな?
人の気配が離れてから、うっすらと目を開けて様子を見てみた。
やっぱり知らない場所だ。
寝返りを打ったフリで、人の気配がしていた方向を確認する。
サイドテーブルに小さな木の桶が置いてあった。
あれ、誰もいない?
薄く開けた目だけで必死に周囲を見回した。
すると足元の方角に、誰かいるのがわかった。
青年?が椅子に腰掛けて、本を読んでいるようだった。
どうしよう。
これ、起きたらどうなるやつだろう。
善意で看病してくれていると信じたいけど、知らない部屋だからな。
どうやって、どんな目的で私をここに連れてきたかが謎すぎる。
警戒しない方が無理な案件だ。
私の額に乗せたものが落ちたことに気づいたらしい。
青年は本を閉じて、こちらにやって来た。
近い。近すぎる。バレたらどうしよう。
隠し事は得意じゃないのに。
心臓がバクバク音を立てている。
冷や汗をかいているかもしれない。
薄く開けていた目を慌てて閉じた。
近くで見られたら、バレるかもしれないからね。
静かに、動揺を押し隠して危機が離れることを待った。
小さな水音がして、落ちたタオルが桶に入れられたことを知る。
さぁ、横になった私の額に改めて乗せるのは難しいでしょ。
早く立ち去って。お願い。
そんな私の願いも虚しく、彼の気配が離れない。
あぁ、神様。
私、今まで真面目に生きてきたと思うんですよ。なのにこの仕打ちはなんなのでしょうか。
おそらく数分。
しかしその数分が、とても長く感じた。
えっ!
・・・あ、しまった。
ビクッとしちゃった。これは絶対バレた。
頰にかかった髪を後ろに流されたところまでは我慢できた。びっくりしたけど。
まさかその後、その手が額に来るとは思わなくて・・・。
それでも僅かの可能性にかけて目は閉じている。
どうか、どうか神様。
「もしかして、起きてたりする?」
ああぁぁぁっ。
そうですよね。
やっぱり、バレますよね。
仕方なく、恐る恐る目を開けた。
すると、心配そうにこちらを覗く青年の顔がどアップで見えた。
「うわあぁ!」
ゴンッッ!!!
「「痛ッたぁ!」」
思わず起き上がろうとして、私の頭は彼の顔面に。そして彼の歯が私の頭に・・・。
「歯が、歯が折れる・・・。」
「ごめんなさい!・・・大丈夫ですか?」
まだ眉を寄せた青年は、口を押さえながらコクコクと頷いた。
「それだけ叫べたら、もう安心だね。」
柔らかに微笑まれて、申し訳なさが倍増。
誰だよ、こんな虫も殺せなさそうな優男を誘拐犯とか言った奴・・・。
自分か・・・。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる