9 / 62
第1章
幼馴染の姉弟〜ジェイドsaid〜
しおりを挟む今日はいつもより早くに目が覚めた。
どれくらいかというと、まだ空に暗さが残るくらいに起きたかな。
・・・別に楽しみだからじゃないよ。ほら、昼間にいない分の畑仕事を終わらせておかないといけないからね。
さて、収穫できそうなのは・・・レタスかな。昨日採れたトマトを使ってシーザーサラダでも作るか。
クルトンがあった気がするから、それも入れよう。
ついつい、鼻歌を歌ってしまう。
あっという間に仕事は終わってしまった。
でも、まだアカリが起きる時間ではない。
思ったより早く片付いちゃったな。
そうだ!掃除もしてしまおう。まだ時間あるし。
掃除して、シャワーを浴びたら丁度いい時間なんじゃないか?
お風呂掃除に床掃除、窓拭き、玄関を掃いて・・・おっと、トイレも掃除しなくちゃ。
掃除をしていても、頭の中で1人ファッションショーをしているアカリしか浮かんでいない。ただ悲しいことに、女性の服に疎くてレパートリーは少ない。今登場した、薄黄色の小花柄ワンピースの登場はもう3度目だ。何度見ても可愛いからいいけどさ。
シャワーを浴びて軽く支度を整えたら、朝食の準備にとりかかる。
アカリの好みはベーコンはカリカリめで、卵は少し固めの半熟だったよな。そして、サラダは仕上げに黒胡椒をかけて少しピリッとさせる。
うん、今日も上出来。そろそろ起こしに行くか。
アカリの部屋は2階。
使っていない部屋を好きに選んでもらった。
コンコン。
・・・・・・うん、起きてないな。
「お邪魔しまーす。」
やっぱり。
ベッドにはすやすやと眠るアカリがいた。
「アカリ、アカリ!起きて。」
近くです声をかけても起きる様子がない。
「うーん。アカリ、アカリ!朝だよ?起きれそうかい?」
軽く肩を叩いてみた。
お?あ、起きた。よかった。
「おはようございます、ジェイドさん。」
「おはよう。ごめんね、起こしちゃって。」
「いえいえ。ありがとうございます。支度したら、直ぐ降りますね。」
「急がなくて大丈夫だよ。ゆっくり支度したらいいよ。」
そうしてキッチンまで戻り、トーストを焼き始める。カラトリーはもうセッティング済みだ。
マグカップを2つ用意して、お湯を沸かす。
すると、ほらアカリがそろそろ来る頃だと思ったんだ。
「カフェオレとミルクティー。今日はどっちにする?」
「カフェオレがいいです。」
「了解。ちょっと待ってね。」
アカリはブラックが飲めない。だから使う豆はカフェオレに合うものを選ぶ。
ガリガリガリ・・・ガリガリガリ・・・・・・。
豆を挽く時に香る、この匂いが好きだ。
僕のコーヒーを飲む人にも、この匂いから味わってほしいと思っている。
挽いている間の、この静かな時間を楽しんでくれる相手にしかコーヒーは入れない。
温めたミルクをそっと注いで、砂糖を入れる。
アカリの分の角砂糖は1つ。僕はなしで。
「お待たせ。」
いただきます。
「ん~!!今日も美味しいですね!」
「そうだね。」
その嬉しそうな笑顔が、僕に幸せをくれる。
ありがとう。ここに来てくれて。
心の中で呟くのは、これで何回目だろうか。
「今日は街へ行かないか?」
「街、ですか?」
「あぁ、そうだ。村だとそろわない物もあるからな。少し遠出しようと思う。」
突然の提案に少しポカンとした顔をしている。
到着して、服を買えると聞いたら喜んでくれるだろうか。
「楽しそうですね。わかりました、行きましょう。」
よかった、一緒に来てもらえて。1人でも行くつもりだったけど、僕のセンスでは不安だからね。
★
アカリは初めて馬車に乗ったらしい。
なんでも、前に住んでいた世界では"でんき"というものが流れていて、それが大きな箱を動かすそうだ。"がそりん"というものを燃やしても箱が動くそうだが、原理がよくわからない。
「うわぁ、さすが。人がいっぱい居ますね。」
僕にとっては慣れた光景でも、彼女にとってはどれも新鮮に映るのだろう。僕も君が育った世界を見てみたいけど、それは叶わないのだろうな。
少し前まで、僕はこの街に住んでいた。
友だちも、馴染みの店も、実はここの方が多かったりする。
まぁ、アカリに紹介するのは追々で。
「アカリ、降りるよ。」
先に降りて、手を差し出す。
降りる時の段差で転けて、嫌な思い出を作りたくない。馬車に慣れてないなら余計に。
あ、照れた。
赤くなった顔が可愛い。
なんとなく察していたけど、こういうことに慣れてないことを実感して改めて嬉しくなる。
いや、過去は気にしないけど。気にしないでいたいけど、そもそも他人に興味のない自分がこれだけ興味を持っているんだ。正直、嫉妬しないとは言えない。
「おいで、こっち。」
もう少しこの時間を堪能したくて、彼女の様子に気付かないフリをした。手を繋いだまま祈る。
どうか、この下心に気付かないままでいて。
いつか、ちゃんと話すから。
「ここだよ。僕の知り合いの店なんだ。」
気持ちが漏れ出す前に空気を変えた。
「ブティック・・・ですか?」
「そうだよ。」
このまま入ったら、わかりやすく揶揄われるだろうしね。
カランコロン。
「いらっしゃいませ・・・て、なんだジェイドか。」
彼は僕が幼い頃からの友だちだ。所謂、幼馴染。
琥珀色の髪に黒みがかった青の瞳を持つ。
一見地味な色味かもしれないが、姉弟そろって色気を振り撒くような美形。彼ら目当てにやって来る客もいるらしい。
「お邪魔するよ。」
「珍しいな。連れがいるのか。」
「あぁ、今日はこの子の服を買いに来た。何着か見積もってもらえるかな?」
そりゃあ、驚くだろうね。特に幼い頃の僕を知るノアは。
2人が自己紹介をしているのを横に見ながら、初めてここに来た時を思い出した。
懐かしさに浸りかけたところを、現実に戻される。
「ジェイドさん、用事って私の服を買うことだったんですね。」
「まぁね。僕が前に着ていた服を貸しているけど、いつまでもそれじゃ不便でしょ?サイズが合ってないみたいだし。」
それらしいことを言っているけど、1番は喜んでもらいたいんだよね。その次に、他の色々な服を着た彼女を見てみたいってところ。
ノアが店の奥に入っていった。きっと、ビオレットを呼びにいったんだろう。彼女のセンスは確かだ。それに、細やかな気遣いができるところを羨ましく思っている。
「お待たせ~。あら、可愛い子じゃない。」
・・・高めのテンションが、たまに嫌になるのはナイショだ。
「ビオレット、久しぶりだね。」
「お久しぶり。ジェイドが女の子を連れてきたって聞いたから、私の出番かと思って。」
「そうだね。彼女の相談に乗ってもらえると嬉しいよ。」
視線で「変なことは言わないでくれ」と釘を刺しておく。ビオレットはその視線をするりと避けた。
アカリがビオレットを見て目を輝かせている。
やめてくれ。お願いだから彼女を参考になんてしないでくれよ?
誰にも気付かれないほど小さな溜め息をついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界での異生活 ~騎士団長の憂鬱~
なにがし
ファンタジー
成人年齢15歳、結婚適齢期40~60歳、平均寿命200歳の異世界。その世界での小さな国の小さな街の話。
40歳で父の跡を継いで騎士団長に就任した女性、マチルダ・ダ・クロムウェル。若くして団長になった彼女に、部下達はその実力を疑っていた。彼女は団長としての任務をこなそうと、頑張るがなかなか思うようにいかず、憂鬱な日々を送る羽目に。
そんな彼女の憂鬱な日々のお話です。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる