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第2章
スカウト
しおりを挟む直接を食べ終えた私は、畑にノアさんを呼びに行った。本当はジェイドが行くと言っていたのだが、コーヒーがどうしても飲みたいと言って用意してもらっている。
「ここでの生活はどう?前は違うところで住んでたって聞いたけど。」
「楽しいですよ。ここに来てよかったと思っています。」
「そうか。・・・あいつのこと、よろしく頼むよ。」
よろしくされないといけないのは私の方なのでは?と思ったが、真剣な顔に言えなかった。
「お、ジェイドが淹れてくれたコーヒーか!上手いんだよなぁ、これ。」
テーブルに置かれたコーヒーカップを見て、嬉しそうにジェイドに話しかける。
「俺が頼んでもあんまり淹れてくれないからさ。」
私に向けて小声で呟かれた言葉に少し驚く。
「え、毎朝飲んでますけど・・・。」
「おっと、これは余計なこと言ったかな。アカリちゃんは特別だってことだよ。」
口元に人差し指を当て、俺が言ったって言わないでね。と言われた。え、本当に?
「何の話?」
「ジェイドのコーヒーが上手いって話。」
「あ、私、ジェイドさんの淹れるコーヒーが1番好きです。」
「・・・ふぅん、そう。」
私がノアさんを呼びに行ってからずっと不機嫌そうだった顔が、ほんの少し和らいだ。
「で?話って何?」
全員分のコーヒーを置いて、席に着くなり話を促した。よっぽど早く話を終わらせたいのだろう。
「この前店に来た時、アカリちゃんが裁縫が得意だと知ってね。姉貴によると、結構な腕前だと聞いてる。そこでだ、商品の製作を手伝ってもらえないかと思って。ハンカチに刺繍を入れてもらったり、何か案があればデザインを描いてもらったりね。」
「私、デザインなんて描いたことないですよ?それに、刺繍も店に出せるような腕前じゃ・・・」
「無理にとは言わない。でも、姉貴が認めたんだ。十分、店に出せる腕前だよ。」
「量は?期間や料金、その辺りもきちんと聞いておきたい。」
ジェイドに冷ややかな目を向けられて、ノアさんが軽く肩をすくめる。
「そこは要相談だな。例えば、ハンカチとドレスだと料金が違って当たり前だろ?期間も違う。受注は事前に手紙で知らせて、こちらでこの家に届ける。提出期限になれば、ここに受け取りに来る。料金はその時に支払い。もちろん、注文によって受けるか断るかはアカリちゃんの自由だ。」
「アカリがお前の店で働いていることは伏せてくれ。」
「いいけど、理由を聞いてもいいか?」
「ここに直接頼みに来るような奴がいたら困る。あと、お前の女関係とかに巻き込まれなくない。」
「あぁ、なるほど。それは俺の配慮が足りなかった。約束しよう。名前は伏せる。」
ノアさんの女関係が非常に気になるが、この顔にこのフレンドリーさだ。きっとモテるのだろう。何か勘違いされて家に来られたら、確かに嫌だ。
「あの、そのお話、受けてもいいのですが1つだけ条件があって。」
「なんだい?」
「一度に大量の注文は受けません。今の生活をできるだけ変えたくなくて。慌てて作ると、品質が落ちてしまいますし。」
「わかった。こちらで調節して仕事を受けるようにするよ。」
「ありがとうございます。」
せっかくここでのんびり生活しているのに、また社畜になるのはごめんだからね。
「よし、じゃあ来週にハンカチを数枚持ってくるよ。よろしくね。」
荷馬車から先日買った服を下ろして、ノアさんは帰っていった。
服が入った包みはジェイドが部屋に運んでくれる。
それにしても、あの量にしては包みが少し大きくないだろうか?
「ありがとう。これを片付けたら仕事を手伝うね。」
ジェイドが下に降りていったのを確認して、不思議に思いながら包みを開けた。
あれ?私こんなに頼んだっけ。これとか、悩んだけど結局買わなかったような気がするんだけど・・・。
きっと、あの後ジェイドが頼んでくれたのだろう。正直、嬉しい。
そうだ!私が初給料をもらったら、ジェイドに何かプレゼントを買おう。男性にプレゼントを買うのは初めてだけど、ノアさんかビオレットさんあたりに相談すればいいものを渡せそうだ。
早速、動きやすそうなワンピースに着替えた。
少しでも可愛いって思って欲しいな。
鏡の前でくるんと一回転してみる。うん、変なところはないはず。
この後、ワンピース姿の私を見て
「可愛い!こんな畑ですが、僕とデートしてくれますか?」
なんて茶化されたものだから、赤くなった顔を隠すのに必死になった。
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