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第2章

タオル〜ジェイドsaid〜

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アカリが仕事を始めて1ヶ月ほど経った。あれから、ノアは週に1度は従者を寄越した。商品の受け取りであったり、追加で持ってきたり。
お陰で2人の時間が減ってしまった。正直、納得がいかない。お金に困っているわけではないし、欲しいものがあればいくらでも用意する。しかし、アカリがやりたいと言ってることを止めるわけにもいかない。

彼女がさした刺繍を見せてもらったことがある。確かに結構な腕前で、簡単な小物も作れるようだから重宝されているようだ。ビオレットが欲しがった理由もわかる。

アカリは日中、ずっと刺繍をしているわけではない。簡単なものなら1~2日でハンカチ1枚を終わらせる程度。今まで通り、家事もしてくれている。
2人の時間が取れないわけではないが、畑仕事を手伝ってくれる頻度は減った。森へ出かける頻度もだ。
外で刺繍ができるような場所がないのだから仕方がない。わかっているけど、もっと2人の時間がほしいと思う僕は我儘なのだろうか。

「ジェイド!お昼できたよ!」

考え事をしながら畑仕事をしていたが・・・いつの間にかもうそんな時間になっていたのか。

裏口から出てきたアカリが手を振っている。

「今行く!」

軽く手を振りかえして、収穫カゴを手に取った。そして1秒でも長く2人で居るために、小走りで向かう。

「お疲れ様。」

「うん、アカリもね。」

ここ最近、ようやく崩した話し方をしてくれるようになった。
アカリは仕事で人と話すことが増え、僕以外の人と話すところを見ることが増え、モヤモヤした僕がお願いしたのだ。
こうやって話してもらえると、例えばさっきみたいにお昼ご飯を知らせてくれた時とか、ちょっと新婚みたいじゃないか?・・・まだ付き合ってもないけどさ。
彼女の背中に向かって、気持ちが少しでも伝わるように念じておいた。



「今日はカルボナーラを作ってみました!」

「カルボナーラ?」

お茶会以来、アカリは前にいた世界の料理を作ってくれるようになった。
・・・やっぱり、帰りたい気持ちがあるのだろうか。

「クリームパスタと言いますか・・・私が好きな食べ物だったので、ジェイドにも好きになってもらえたらと思って!」

理由が可愛いかよ。そんなこと言われたら、無理にでも好きって言いそうだ。

白いクリームソースにキャベツとベーコン、ブラックペッパー。パスタの山の頂には卵の黄身。
綺麗な彩りとふわっと香るチーズが食欲をそそる。

「いただきます。」

まずは黄身を破らずに一口食べた。
うん、美味しい。
濃厚なソースにキャベツのシャキシャキ感やベーコンの塩味が良いアクセントになっている。

「これ、美味しいね。」

「でしょ!」

ニコニコもぐもぐ。もぐもぐ・・・パクッ。

仕事を始めてからの彼女は、前より笑っていることが増えた気がする。今だってこんなにニコニコしているのは、きっと好物を食べているからだけではないのだろう。
可愛くて見ていたくて、だから余計に僕の我儘なんて言えなかった。
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