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第2章
ココットさん
しおりを挟む「おう、坊主。元気そうで何よりだ。」
クマみたいにずっしりとした体躯のココットさん。これでも確か30代前半だったはず。
じいさんの知り合いの息子で、木材や木製の小物なんかを取り扱う店の店主だ。
「コットさん、今日はこういったものを作りたくて相談に来たんだ。」
事前にアカリがイメージ図を描いてくれたので、その紙を見せた。
壁のない天井が四角のテント、足が折り畳めるテーブル、背もたれがついた椅子とそれが4つほど乗る台車。
どれも似たようなものがアカリの世界にはあったそうだ。これなら出し入れが簡単で、1人でも準備できるというわけだ。
「ふむ・・・こいつは面白い。試作品としてタダで作ってやるからよ、このアイデアをうちで買ってもいいか?これは店先に出しても売れそうだ。」
つぶらな瞳がキラキラと輝いている。
難しい、と断られたらどうしようかと思っていたが心配なかったようだ。
「これは僕が考えたものではなくてね。発案者に聞いてみるよ。どれくらいでできそうかな?」
「最近、一緒に住み始めたって女の子のことか?・・・あの噂は本当だったんだな。まぁ、聞いてみてくれ。それから、・・・そうだなぁ。もとあるものから少し改良する程度だから、全部で1ヶ月ってところだな。」
どんな噂が流れているのか、少し気になったが置いておこう。女に興味がないと思われていた僕が女の子の住み始めたとなれば、噂もしたくなるだろう。
「わかった。じゃあ、よろしく頼むよ。」
「任せとけ!それから、今度はそのお嬢ちゃんも連れてこいよ!」
えぇ、せっかく今日も連れてこなかったのに。
ココットさんは僕の兄みたいな人。気になるのはわかるけど、紹介するのは気恥ずかしいのだ。
「そんな顔するなよ。お前がやっと連れてきた女の子だ。悪いようにはしないよ。逃げられたら困るからな!」
「・・・わかったよ。事情があって一緒に住んでるだけで、まだ付き合ってるとかじゃないんだ。だから、くれぐれも余計なことは言わないでくれよ!」
「・・・・・・"まだ"、ねぇ?」
ニヤニヤと笑う顔が、鬱陶しい。
「コットさん!」
「わぁった、わぁった。冗談だ。」
・・・・・・本当に連れてきても大丈夫だろうか?
「じゃあ、また来るからよろしくね。」
「あぁ。お前が元気そうでよかったよ。」
じいさんが亡くなった時、葬式とかいろんな面倒を見てくれた。
ショックでしばらく食べることを忘れていたり、眠れなくなったりしていたので心配をかけていたのだ。立ち直ったのは、アカリが来る少し前のこと。
照れ臭くて少し睨んだ僕の頭を、ココットさんがガシガシと撫でる。
「・・・ボサボサになるだろ。」
乱暴に手を振り払って、店を出た。
後ろを向く時、すごく優しい顔して微笑んでいたのが見えた。
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