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第2章
図書館デート〜ジェイドsaid〜
しおりを挟む今日はアカリと図書館へデートに出かけることになりました!え?デートって思ってるのは僕だけかもしれないけど、それは突っ込まないでもらえると助かるな。
朝から張り切ってお弁当を作った。
昨日の残りのローストビーフを挟んだものや、定番のたまごサンド、ハムチーズのものなど数種類用意した。ポテトフライと唐揚げは別の容器に入れてある。飲料ボトルにはルイボスティー。
少し荷物は多くなってしまったけど、アカリから行きたい場所を言ってもらえた嬉しさの前では些細なことだ。
昨日の夜は湿っぽい夕食になってしまったけど、いつまでもウジウジ悩んでられないし。
昨日、いつものように食後のお茶を飲んでいたところでアカリに図書館へ行きたいと言われた。この世界を知りたいと言われて、彼女はここで生きるつもりなんだと安心した。そして、僕を頼ってくれることが嬉しかった。二つ返事で今日いくことになったのだ。
隣で窓から外を眺めているアカリは、もうすっかり元気そうだ。
図書館は街にあるものが1番近い。僕たちは馬車に揺られて街に向かっている。
いつまでも、こうやって隣にいてくれたらいいのに・・・。
彼女がこの世界に留まってくれるだろうことはわかった。でもそれが、ずっと僕の隣にいることとイコールではない。隣にいたいと思ってもらえるように努力し続けなければいけないな。
「アカリ、そろそろ街に着く頃だ。今日は目的地まで歩いて行かないかい?」
その方がデートっぽい気がするし。
「いいね!午前中は街を散策するっていうのもいいかもしれない。」
「アリだね。そうしようか。」
図書館を一度出るより、散策して公園で昼ご飯を食べてから向かう方がいいかもしれない。こうやって突然の予定変更も、彼女とだから楽しめる。なんだか、デートっぽくてそれもいい。
「ジェイドは学生の頃、ここによく来ていたんでしょう?」
「そうだよ。この前の屋台はノアとよく行ったな。ほら、ごま団子の。」
「あぁ、あそこね。私は屋台の近くまで言ってないけど・・・顔見知りだったからおまけしてくれたのね?」
「そういうこと。」
肩が触れそうな距離に彼女がいる。笑いかけられると、僕の理性はひとたまりもない。
前回嫌がられなかったからと、許可もなく手を繋いだ。きゅっと握り返してくれる手が愛しい。
「今日はお昼を作ってきたんだ。後で一緒に公園で食べよう。」
「え!準備、大変だったんじゃない?ありがとう!」
「どういたしまして。でも簡単なものしか作ってないし、好きで作ってるから大変なんてことはなかったよ。」
僕の作ったものが彼女の血肉になるって、最近気づいた。これは身勝手な独占欲だ。
その考え方は、ノアあたりに気持ち悪いって言われそうだ。アカリに言われたら立ち直れないから、言わないでおく。
アカリが僕から離れないでいてくれる為に何が有効かを考えた結果だ。どこにいても、僕の味を思い出したらいい。・・・なんて、自分がこんなやつだと思ってなかったな。彼女はいつも、僕が知らない僕を教えてくれる。
「あ、このお店気になるかも!寄ってもいい?」
声をかけられて、ハッとする。せっかくのデート中に1人の世界に入ってどうするのだ。
「もちろん。好きなだけ見ていいよ。」
「ありがとう。」
店内の雑貨に目を輝かせている姿も可愛い。女の買い物は長い、と誰かから聞いたけどこんな可愛い顔が見れるなら長くても飽きないだろう。
「どれか気になるものは見つかった?」
気にいるものがあれば買ってあげたいと思い、声をかけた。
「うーん。せっかく可愛い服を揃えたから、アクセサリーも欲しくなっちゃって。」
アクセサリーか・・・。恋人っぽい時間を過ごすには、最高の贈り物な気がするな。
僕たちは恋人ではない。でもそうなりたいんだとアプローチができたら・・・。
「どれもアカリに似合いそうだね。どんなのが欲しいの?」
「そうだなぁ、シンプルで合わせやすそうなものがいいかな。例えばこれかこれとか。」
手に持っているのは2つともハートのネックレスだ。1つは青い石がハートの真ん中にあるもの。もう1つは緑の石が側面の中側に大小2つ、並んでついたもの。
「その2つで言うなら、こっちかな。このイヤリングと合うと思うし。」
迷うことなく、緑の石がついた方を選ぶ。そして、近くにあったドロップ型の緑石がついたイヤリングを見せる。
「そう?じゃあ、これを買おうかな。」
「待って、僕が払うよ。プレゼントさせて。」
彼女が小さなカゴにそれを入れる前に、手を重ねてその行為を止めた。
「いや、いいよ。」
「ううん。買わせて欲しいんだ。それにこうすれば、アカリは他にも欲しいものを見れるでしょう?」
なるべく優しく、彼女の手からネックレスを受け取った。
「・・・ありがとう。」
少し戸惑ったように視線を揺らした後、上目遣いで僕を見る。
・・・可愛いな。僕のこの、気持ち悪い考えはバレたら困る。けれどこの好きだって気持ちは、どんどん伝わってほしい。
アカリはその後、レターセット、ペン、インクをそれぞれ購入した。
お店を出たところで、包みを1つ渡してくる。
「はい、私からはこれをプレゼント。」
「え、いいの?」
中身を見ると、彼女とお揃いのガラスペンだった。確か彼女は黒と青緑を見ていたはず。青緑の方が僕の手に来たことに、少しだけモヤっとした。
彼女は僕が緑のアクセサリーを選んだ意味をわかっているのだろうか。
「大切に使うね。ありがとう。僕らかも、はいどうぞ。」
僕だけが執着を見せたようで、少し寂しい。そんな気持ちを笑って誤魔化した。
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