49 / 62
第3章
ラムさん
しおりを挟む黙ってジェイドの家を出てきた。
こんなすぐに家を出る予定ではなかったけど、ベンチが届いてしまったらもう手遅れな気がした。離れられないと思った。
後先考えず、慌てて家を出てきたので泊まるところも決まっていない。
私はジェイドが好きだ。ジェイドからの好意も薄々気づいている。だからこそ怖かった。
もし、ジェイドに他に好きな人ができたら?
私が町田のようにならない保証はどこにあるのだろうか。
ここ最近、ジェイドが同僚のようになって私の家にいる夢を見る。
果穂を襲っていることもあった。1人で眠っているはずなのに、朝起きたら横にジェイドがいて。ジェイドなのに知らない人みたいで底知れぬ恐怖がわいてきたり・・・。
現実世界で起きないことはわかってる。
それでもトラウマは簡単に消えない。自分が思っていたよりもしつこく、頭に残って離れなかった。
毎朝、リビングにいるジェイドを見て安心していた。
今日のジェイドも怖くない。あの底知れない怖さは夢だったんだ。ちゃんと、あれは夢だったんだって。
急いで出てきたから荷物は少ない。
リュックサック1つと肩掛けカバン1つ。
いつ離れてもいいように、治安が悪くないと聞いている場所をあらかじめ調べていた。今はそこを通って辺境を目指している。女の1人旅だとわかると都合が悪いので、可愛らしい服は置いてきた。今着ているのは、ジェイドのズボンにブラウスだ。この世界は男性のシャツにもレースを使うし、女性はあまりズボンを履かないので助かった。ボンキュッボンな体型でもなかったので、髪を結んで帽子をかぶれば周りから男性扱いされた。
「おい、坊主!もうすぐ辺境に着くぞ。お前さんは家族を失ってるんだったな?あまり綺麗なとこじゃねぇが、よかったら泊まれるとこ紹介してやるよ。」
「おじさん、ホント!?助かるよ!」
「おめぇはほっといたら野垂れ死んじまいそうだからな。」
ガハハハッと笑っているのは、馬車を引いているラムさん。
見た目はつるっ禿げのムキムキマンだ。
ガサツだけどとても面倒見が良くて、引ったくりに合った私を助けてくれた。財布を取り返してくれて、本当に助かった。それから何かと面倒を見てくれている。
ラムさんは辺境と隣町を行き来して商売をしている。辺境に奥さんと子どもがいるそうで、帰る馬車に一緒に乗せてもらった。
「その小屋は俺の妹が住んでたんだけどな、結婚して村を出たから空いてるんだ。」
「他に使う人はいないの?僕1人で使っても大丈夫?」
「あぁ、かまわないさ。」
「ありがとう!ラムさん、大好き!」
「なんだ、そんなこと言っても何も出てこねぇぞ。」
いやいや、十分してもらってますけど?
ラムさんのお陰で荷物は無事だし、辺境にたどり着いたどころか家まで用意してもらえるんだ。運がいいにも程があるというか、ラムさんが恩人すぎる。
ジェイドの家を出て2週間くらい経つ。
ゴトゴトと揺れが激しい荷馬車にもだいぶ慣れた。
私がもっと色々吹っ切ることができたなら、手紙でも書こうと思っている。心配してるだろうしさ。吹っ切った後なら、ジェイドが会いに来ても笑顔で迎えられるだろう。
それまで、辺境ライフを楽しまなくちゃ。
寂しい気持ちを紛らわすように、綺麗な青空を見上げていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる