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騎士サイドXIV 幕間⑤
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日記の日付から約十ヶ月前のことは、先生に我が国の歴史について習った時に聞いた。
この戦争はどんどん泥沼化して、我が国も相手国も酷く疲弊していた。
野戦病院には人が溢れていた。戦場ではもう役に立つことのない重傷患者は後回しにされ、軽傷患者を優先的に治療、そして再び戦場へ送り出した。
当然、薬品も底を突き、痛み止めもなければ、手術に必要な麻酔もない。しかしそれでも軍医は患者を治療しなければならない。無麻酔で手術は行われていた。
それは確かに、紛うことなき地獄絵図だったろう。
しかし軍事クーデター。
そんなもの、私が先生に教わったこの国の歴史にはなかった。
(「なかったこと」にされた理由……)
間違いなくユール・タマージュに関することだからだろう。
元黒薔薇の騎士たるユールの行動に何かしらの問題があったのだ。この国の根幹を揺るがしてしまうような重要なことが。
『ユール・タマージュ』
幾度となくその名を反芻する。
リーリウムと先生、そして先生の弟であるユールとの間には、越えられない圧倒的な壁があった。
当時の白薔薇と青薔薇は、まだこちら側であった。
しかし、黒薔薇であるユールだけが、あちら側の人間だった。
天才。
そんなありきたりな言葉では言い尽くせないほど、彼の才覚の凄まじさが、この日記の記述だけでもわかる。
恐らく、彼だけがその日、当該軍事クーデターが起きることを把握していた。
あらかじめ分かっていたこととはいえ、訓練された屈強な軍人たちの半数以上を相手取り、さらにそれでもまだ余裕がありそうに見えた。
(まともじゃない……)
同日に二度もこんな言葉を思い浮べるとは。
それでも戦っていた時の彼は、きっと笑っていたんだろうと、直感的に感じた。
酷薄に笑いながら、形のいい唇を、ヒトを蹂躙する快楽に歪めながら、剣を振るっていたに違いない。
油断か慢心か、しかしそんな彼の左腕を銃弾が襲った。
天才である彼が、そこからどんな行動に出るのか、私は図らずもわくわくしていた。
この戦争はどんどん泥沼化して、我が国も相手国も酷く疲弊していた。
野戦病院には人が溢れていた。戦場ではもう役に立つことのない重傷患者は後回しにされ、軽傷患者を優先的に治療、そして再び戦場へ送り出した。
当然、薬品も底を突き、痛み止めもなければ、手術に必要な麻酔もない。しかしそれでも軍医は患者を治療しなければならない。無麻酔で手術は行われていた。
それは確かに、紛うことなき地獄絵図だったろう。
しかし軍事クーデター。
そんなもの、私が先生に教わったこの国の歴史にはなかった。
(「なかったこと」にされた理由……)
間違いなくユール・タマージュに関することだからだろう。
元黒薔薇の騎士たるユールの行動に何かしらの問題があったのだ。この国の根幹を揺るがしてしまうような重要なことが。
『ユール・タマージュ』
幾度となくその名を反芻する。
リーリウムと先生、そして先生の弟であるユールとの間には、越えられない圧倒的な壁があった。
当時の白薔薇と青薔薇は、まだこちら側であった。
しかし、黒薔薇であるユールだけが、あちら側の人間だった。
天才。
そんなありきたりな言葉では言い尽くせないほど、彼の才覚の凄まじさが、この日記の記述だけでもわかる。
恐らく、彼だけがその日、当該軍事クーデターが起きることを把握していた。
あらかじめ分かっていたこととはいえ、訓練された屈強な軍人たちの半数以上を相手取り、さらにそれでもまだ余裕がありそうに見えた。
(まともじゃない……)
同日に二度もこんな言葉を思い浮べるとは。
それでも戦っていた時の彼は、きっと笑っていたんだろうと、直感的に感じた。
酷薄に笑いながら、形のいい唇を、ヒトを蹂躙する快楽に歪めながら、剣を振るっていたに違いない。
油断か慢心か、しかしそんな彼の左腕を銃弾が襲った。
天才である彼が、そこからどんな行動に出るのか、私は図らずもわくわくしていた。
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