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皇帝サイドXV
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白薔薇の騎士Ⅶ
パレード当日。
フェルナンデスにより、緘口令が敷かれ、僕たちは当初の予定通り、軍事パレードに参列した。ドゴンは体調が優れないため、欠席ということになっている。
「父上は持病を悪化させ、後日亡くなったことにする」
フェルナンデスの言う通りに、僕たちは————どうすればいいんだろう。お母さん、お父さん。誰か僕を助けて————。
「しっかりしなさい、レックス。貴方の気持ちはわかるけど、今日はパレードの日。黒薔薇の騎士らしく、振る舞いなさい」
「リリィ、僕はどうすれば————」
「皇太子殿下のお側にいてさしあげなさい。殿下も気丈に振る舞われていらっしゃるけど、ボロボロだと思うわ」
「わかったよ、リリィ、僕は騎士の務めを果たしてみせる」
何事もなかったかのように催される軍事パレード。僕はその様子をぼんやりと見ていた。そのとき、遠くの方で、何かが光る。鏡? どうしてこちらにまで、光が? え。もしかして。
「フェルナンデス! 今すぐそこを離れて!」
「? レックス、お前は何を言って——」
フェルナンデスが自らの言葉を言い終わらないうちに、銃声が響く。遅かった。僕は瞬時に状況を理解する。僕は、
「一度この場から離れましょう。このままでは私たちも危ない。とにかく時間がない。だから、今は————」
「レックス。貴方には厳しいことを言ったわ。まだ幼いのに」
私はレックスに声をかけたあと、周辺警備にあたる。大丈夫よ、皇太子殿下のことは、黒薔薇の騎士が守ってくれるわ。私は私の騎士としての役目を果たすまで。
「おや、リリィじゃないか」
聞いたことのある声。間違えるはずがない、この声は————。
「あら、ユールじゃない」
騎士のときとは一転して、いかにも商人らしい出で立ちのユールがそこにはいた。
「ようやく、戦争が終わったね。僕としても嬉しいよ」
「そうね、貴方の言っていた通り、長い戦争は終わったわ」
「そうだね、この日のために、僕はリリィにプレゼントを持ってきたんだ。喜んでもらえるといいのだけれど」
「なぁに? ユール」
「それはね、リリィ——————」
ザクッ。
え? どうして? ユール。貴方、まさか————
「僕はね、騎士というものが一番嫌いなんだよ。キミたちはどこから人を見下ろしているんだい?」
私の身体からナイフが引き抜かれる。ユールのことだ、急所を突かれたのだろう。私は声を上げることすらできなくて、その場に転がる。
「リリィ、リリィ————」
誰かが私の名を呼んでいる。あぁ、そうね。私の名はリーリウム・ウィステリア。誇り高き、『白薔薇の騎士』。レックス。貴方に今の私を見られなくてよかったわ。もしこんなところを見てしまったら。きっと、貴方は————壊れてしまう。だから、レックス。貴方は強く生きて。お願い。ひどく勝手だとはわかっているけれど、あとは頼んだわ。ごめんね、レックス。
「ようやく、終わったか。納の奴は上手くできたかな」
僕はそう言って、ギプスを外す。こんなもの、もはや必要ない。あとは「連中」と合流するだけだ。「狙撃手」の納。「毒盛り」のケーニヒス。「撹乱」のショコラ。そして、「人語を介す」黒兎。僕たちはどうやら、この戦いに勝ったらしい。思い残すことがあるとしたら、それは————。
「レックス。君のことかな」
僕は動かなくなったフェルナンデスの身体を担いで、宮殿へと帰ってきた。ここまでくれば、大丈夫だろう。僕がそんなことを考えていると————バタン。勢いよく扉が開かれる音がした。そこにいたのは、ヨーデルさん。だが、彼とて「手ぶら」で帰ってきたのではない。
「!!!!!! リリィ!!!!」
ヨーデルさんが、抱き上げていたのはリリィの身体。白薔薇の騎士の衣装が真っ赤に染まっている。
「誰が! 一体、誰が! こんなことを————」
「レックス。リリィの傷痕を見たまえ」
「…………これは————」
必要最小限に留められている。傷痕。おそらく、ナイフででも刺したのであろう。
「こんなことができるやつは————」
「レックス、俺も同じ考えだ。だが、これと言った「証拠」がない。仮にそんなものがあったとしてもとうに、奴は消し去っているだろうさ」
目の前が真っ暗になる。僕は、僕は——————。誰ひとりとして、守れなかった。ドゴン、フェルナンデス、そしてリリィ。だとしたら、僕が取るべき道は————、
「レックス。今日から君が『皇帝』になるしかない。心配するな。面倒なことはすべて俺に任せておけ。君は君らしくいなさい。あくまで気高く、あくまで高貴に、誇り高く」
ふらふらと倒れそうになる僕を、ヨーデルさんが受け止める。やっぱり僕は騎士としては半人前だったんだ。でも、でも、僕にできることがあるとしたら。それは——————
僕は。
…………いや、我はドゴン。ドラゴネス・ドゴン十三世である。
パレード当日。
フェルナンデスにより、緘口令が敷かれ、僕たちは当初の予定通り、軍事パレードに参列した。ドゴンは体調が優れないため、欠席ということになっている。
「父上は持病を悪化させ、後日亡くなったことにする」
フェルナンデスの言う通りに、僕たちは————どうすればいいんだろう。お母さん、お父さん。誰か僕を助けて————。
「しっかりしなさい、レックス。貴方の気持ちはわかるけど、今日はパレードの日。黒薔薇の騎士らしく、振る舞いなさい」
「リリィ、僕はどうすれば————」
「皇太子殿下のお側にいてさしあげなさい。殿下も気丈に振る舞われていらっしゃるけど、ボロボロだと思うわ」
「わかったよ、リリィ、僕は騎士の務めを果たしてみせる」
何事もなかったかのように催される軍事パレード。僕はその様子をぼんやりと見ていた。そのとき、遠くの方で、何かが光る。鏡? どうしてこちらにまで、光が? え。もしかして。
「フェルナンデス! 今すぐそこを離れて!」
「? レックス、お前は何を言って——」
フェルナンデスが自らの言葉を言い終わらないうちに、銃声が響く。遅かった。僕は瞬時に状況を理解する。僕は、
「一度この場から離れましょう。このままでは私たちも危ない。とにかく時間がない。だから、今は————」
「レックス。貴方には厳しいことを言ったわ。まだ幼いのに」
私はレックスに声をかけたあと、周辺警備にあたる。大丈夫よ、皇太子殿下のことは、黒薔薇の騎士が守ってくれるわ。私は私の騎士としての役目を果たすまで。
「おや、リリィじゃないか」
聞いたことのある声。間違えるはずがない、この声は————。
「あら、ユールじゃない」
騎士のときとは一転して、いかにも商人らしい出で立ちのユールがそこにはいた。
「ようやく、戦争が終わったね。僕としても嬉しいよ」
「そうね、貴方の言っていた通り、長い戦争は終わったわ」
「そうだね、この日のために、僕はリリィにプレゼントを持ってきたんだ。喜んでもらえるといいのだけれど」
「なぁに? ユール」
「それはね、リリィ——————」
ザクッ。
え? どうして? ユール。貴方、まさか————
「僕はね、騎士というものが一番嫌いなんだよ。キミたちはどこから人を見下ろしているんだい?」
私の身体からナイフが引き抜かれる。ユールのことだ、急所を突かれたのだろう。私は声を上げることすらできなくて、その場に転がる。
「リリィ、リリィ————」
誰かが私の名を呼んでいる。あぁ、そうね。私の名はリーリウム・ウィステリア。誇り高き、『白薔薇の騎士』。レックス。貴方に今の私を見られなくてよかったわ。もしこんなところを見てしまったら。きっと、貴方は————壊れてしまう。だから、レックス。貴方は強く生きて。お願い。ひどく勝手だとはわかっているけれど、あとは頼んだわ。ごめんね、レックス。
「ようやく、終わったか。納の奴は上手くできたかな」
僕はそう言って、ギプスを外す。こんなもの、もはや必要ない。あとは「連中」と合流するだけだ。「狙撃手」の納。「毒盛り」のケーニヒス。「撹乱」のショコラ。そして、「人語を介す」黒兎。僕たちはどうやら、この戦いに勝ったらしい。思い残すことがあるとしたら、それは————。
「レックス。君のことかな」
僕は動かなくなったフェルナンデスの身体を担いで、宮殿へと帰ってきた。ここまでくれば、大丈夫だろう。僕がそんなことを考えていると————バタン。勢いよく扉が開かれる音がした。そこにいたのは、ヨーデルさん。だが、彼とて「手ぶら」で帰ってきたのではない。
「!!!!!! リリィ!!!!」
ヨーデルさんが、抱き上げていたのはリリィの身体。白薔薇の騎士の衣装が真っ赤に染まっている。
「誰が! 一体、誰が! こんなことを————」
「レックス。リリィの傷痕を見たまえ」
「…………これは————」
必要最小限に留められている。傷痕。おそらく、ナイフででも刺したのであろう。
「こんなことができるやつは————」
「レックス、俺も同じ考えだ。だが、これと言った「証拠」がない。仮にそんなものがあったとしてもとうに、奴は消し去っているだろうさ」
目の前が真っ暗になる。僕は、僕は——————。誰ひとりとして、守れなかった。ドゴン、フェルナンデス、そしてリリィ。だとしたら、僕が取るべき道は————、
「レックス。今日から君が『皇帝』になるしかない。心配するな。面倒なことはすべて俺に任せておけ。君は君らしくいなさい。あくまで気高く、あくまで高貴に、誇り高く」
ふらふらと倒れそうになる僕を、ヨーデルさんが受け止める。やっぱり僕は騎士としては半人前だったんだ。でも、でも、僕にできることがあるとしたら。それは——————
僕は。
…………いや、我はドゴン。ドラゴネス・ドゴン十三世である。
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