幸運な家族

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三森

自宅へ

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 正章は真剣に犬を選んだ。見た目や人懐っこさに加え、育て方、散歩の頻度、寿命についてや病気になった場合など、事細かく店員に質問していた。

「どう?」
「決まった」

 正章が大きく頷く。一時間以上かけて納得いくまで考えた。そこへ美結たちが戻ってくる。由里子がケージを抱えているので、すでに購入済らしい。

「お兄ちゃん、早く。美結もう決めたよ」
「最後はみんなで見て決めるってお父さんが言ってなかった?」

「そうだけど、その間に決まったら嫌だし、お兄ちゃんは何でもいいって言いそうだったから」
「まあ、そうだけど」

 ぶっきらぼうに言いつつも、正章が美結の手元を見て聞いた。

「ウサギは?」
「ママが予約して、お昼食べ終わったら受け取るの」
「ああ、そうか」

 このホームセンターは犬用のカートがあるものの、小動物用は無い。先に受け取った場合、車で待っていてもらうことになる。

「お兄ちゃんの方は?」
「この子と、あの子で迷ってた」

 柴犬とシベリアンハスキーの小屋を指差して説明する。美結が興味深そうに二匹を見つめた。

「えぇ~可愛い! 二匹とも可愛い。大人になったらどのくらいになるの?」
「柴犬はこのくらい、ハスキーはこのくらいかな」
「ハスキー、結構大きくなるね。怖いかなぁ」
「怖くないよ。両方可愛い」

 そう言って正章が二匹を交互に見つめた。正志がしゃがみ込み、正章に問いかける。

「決まったって言ってたけど、もう少し悩むか? 時間はあるからいいよ」
「大丈夫。もう決まったから」
「どっちに決めたの?」

 正章が片方の小屋に近寄った。

「この子にする」

 柴犬が元気に尻尾を振った。


 無事二人のペット決めが終わり、柴犬の予約をして四人は昼食をとることにした。
 同じ二階に広いフードコートがあり、各々希望の店に並んで注文する。

「楽しい~。美結、ここに住む」
「前も同じようなこと言ってたね」

 たこ焼きを頬張る美結が満面の笑みで言うものだから、由里子がティッシュペーパーを渡しながら答える。美結がそれを受け取り、口元に付いたソースを拭った。

「そうだっけ。だって、あそこ田舎なんだもん」

「自然がいっぱいでいいじゃない。それにほら、ちょっと足を伸ばせばこうして遊べる所もあるし。美結も自転車に乗れたら駅前まで行かれるでしょ」

「そうだけど」

 一番に食べ終わった美結が立ち上がる。

「ごちそうさま。次はソフトクリームね」
「あら、現金」
「たまにしか来られないから楽しむの」
「いいよ、特別ね」

 両手を挙げて喜ぶ美結を連れて由里子が席を離れていった。
 蕎麦を食べ終えた正志がスマートフォンを弄る正章を注意する。

「もう少し残っているから食べなさい。スマホは食べ終わってから」
「分かったよ」

 画面には柴犬の飼い方の説明が表示されていた。正志が小さく息を吐く。

「飼い方の本を買って帰ろう。ね?」
「うん、ありがとう」

 美結がソフトクリームを頬張りながら戻ってくる。その間に正章もチャーハンを食べ終え、ついにペットを連れて帰る時が来た。

 緊張した面持ちでペットショップの前に立つ。

 まずは美結から、段ボール製の箱に入れられたウサギを受け取る。正章が穴から中を覗き込んだ。

「黒いウサギだ」
「ネザーランドドワーフだって。お耳が短くて可愛いの」
「へぇ」

 兄妹の後ろで両親が顔を見合わせて微笑む。

「よし、次は正章の番だ」

 犬猫コーナーに行き、担当の店員に声をかける。

「予約している宮下です」
「有難う御座います。簡単な健康診断終わっていますので、今連れてきますね」

 その間に正志が保険やワクチンの説明を受ける。すでに一回目のワクチンは摂取済だと言っていた。追加で犬とウサギの飼い方の本を買う。

「わんちゃんは生まれたばっかり?」
「生後三か月だって。生まれたばっかじゃさすがに飼えないよ」
「そうなんだ」

 全ての説明が終わり、犬を受け取る。そのまま犬用のカートに乗せて駐車場に向かった。

 正章がカートを動かす役に立候補し、笑顔でカートを押していく。美結が隣で口を曲げた。

「お兄ちゃんが珍しい顔してる」
「うるさい」

 そう言いつつも声色に棘は無い。

 駐車場に着いた一家は、それぞれ自分の座席に座った。

「わんちゃんとウサちゃん、大人しくしてる?」
「平気。ちゃんと美結が抱っこしてる」

 由里子が後部座席を振り返ると、箱から出さずにきちんと膝に乗せていた。

「僕も平気」

 正章の膝には子犬が丸まって寝ていた。

「あら、随分人懐こいのね」
「うん。可愛い」
「出発するよ」

 正志の合図で車が発進した。後部座席の後ろから先ほど購入したペットグッズががさりと音を立てる。

「ふんふん~」
「ふふ、ご機嫌ね」

 美結の鼻歌をBGMに、一時間の帰り道は何事も無く終了した。

 間もなく自宅というところで、子犬が顔を上げる。

「あ、起きた」
「わんッ」

 子犬が家の方角へ向かって一声鳴いた。正章は目を丸くさせて、子犬の頭を優しく撫でる。

「もう家に着くって分かったんだ。頭良い犬だね」
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