【急募】バッドエンド

文字の大きさ
41 / 81

学校一の美少女

しおりを挟む
 ある日、間田が爆弾発言を俺にかましてくれやがった。

「堀塚ァ~! 山川さんって知ってる?」
「んぐぅッッ」

 ジュース飲んでる時に破滅呪文唱えないでほしい。俺にその名前は何よりもキく。

「知、らないけど、間田の友だち?」

 十五歳の俺は知らない。そんな名前聞いたこともない。ぜ~~~~~んぜん知らない。

「ん~ん。山川さんっていう美少女がいるらしいってことだけ噂で聞いたんだぁ」
「へー」

 生温い返事をしておく。
 この高校に山川が何人いるのか調べたことないけど、山川で可愛いってなると多分一人なんだなぁ……。由奈の名字なんだなぁ……。
 やる気が無さ過ぎて、間田に体をがくがく揺らされた。止めてジュース吐いちゃう。

「見に行こうよ!」
「うーん、俺は興味ないかな」
「俺はあるぅッ。行こ行こ!」

 強引だね間田! 普段ならついていってもいいけど、山川案件だけはやむを得ない事情があるんだよ! 言えないけど!

 ズルズル引っ張られていく俺を道端が不安気に見送る。道端としょっちゅういるようになって、真顔の感情理解できるようになったんだよね。って言ってる場合じゃない。

「ごめん。ちょっと用事が」
「さっきまで暇だって言ってたじゃぁん」
「そうだけどぉ」

 言っちゃってたわ。会話をやり直したい。気軽にループ出来たらいいのに。でもそういうのってオチがたいていホラーだよね。一日だけのループが止まらなくなってその日に閉じ込められるとか、死ぬ瞬間死ぬ前に戻って死ぬまでをやり続けるとか。

「えーとね、確か上の階だったって聞いたような聞いてないような。忘れちゃった。とりあえず上だ~」
「適当人生楽しそうで何より」

 間田はきっとこのまま大人になるんだろう。大学は別で仕事は都内じゃないって言ってたから、卒業してからはあまり会ってない。久々に会いたいと思うけれども、すでに本人に会ってた。若くても間田だもんな。なんか変な感じ。

 うわ~うわ~ッ由奈がいる階に来ちゃった。誰だよ間田に由奈情報与えた奴。出てこい、やっつけてやる。ほら、あの、次の定期テストの良い点勝負で。ヒーローやらせて頂いておりますがケンカの経験はゼロです。

「あ」

 あって何? 日本語の文章で説明して? 「あ」だけじゃ何かあったかと思うじゃん。

「あれじゃない!?」

 ほら何かあった~~~~!

 間田君、「あ」はダメだよ。それだけでフラグだよ。
 確認したくない。クラスに帰りたい。ほら、二十四時間オンラインなんだろ。内緒でゲーム持ってきてんだろ。やろうよ。

「間田、そろそろ休み時間終わる」
「近寄ってみよ!」
「ぐぇッ」

 俺の話全く聞いてないねぇ。制服を引っ張られて首が締まる。お前の今年の抱負は遠慮だ。

 間田の後ろに隠れて顔半分だけ出してそっと眺める。だ~~~めだ。由奈だった。間田正解。

 さすが学校一の美少女と言われていただけある。今回の人生でも言われるのかな。

「多分、あの髪の毛くるっとしてる子じゃん? 違くても俺あの子にする」
「間田があの子にするって思っても、あの子がOKしない限りは実現しないね」
「親友が冷てぇよぉ~俺の心が泣いちゃうじゃん」
「泣いてていいよ」

 俺には俺の事情がある。嫌がっている人間に無理強いする奴にはこのくらいの対応でいい。うそ。本気で嫌がってないから間田は分からないだけだ。俺の態度が中途半端なのが原因。間田だってそうだったら止めると思う。ごめんね、後ろめたい大人で。

 ただし、見知らぬ子に対して妄想強めなのは賛成しない。そういうのはストーカーの素質がある。ストーカーはきついぞ。被害者辛いぞ。

「名前呼ばないかな。誰か山川って呼んでくれぇ!」

 間田の願い虚しく予鈴が鳴り、廊下にいた由奈は教室に帰っていった。七組だった。七組か。要注意だな。

「ちぇッ。俺の初カノかもしれないのに」
「その楽観志向いっそ尊敬に値するよ」
「褒めてもなんも出ねぇぞッ」
「褒めてない」

 文句を言う間田を追い抜いて先に教室へ入る。自分の教室がこんなに落ち着くとは。

「何部に入ってるんだろ。あ、帰宅部かも? あ~~~俺も部活入らなきゃよかった!」
「いや、帰宅部かどうか知らないでしょ」

 俺の周りは突っ走る奴しかいないのか? 間田はとりあえず部活頑張れ。まだ入って二日じゃん。

「堀塚、おかしくね? なんで美少女に興味示さないのさ」

 ドキッ。

 俺の内心など分かるはずない。のに、間田に言われて焦ってしまった。絶対言えない後ろめたいことがあるからだ。

「おかしくない。単に噂に流される軽い男じゃないだけ」
「はぁぁ!? なら、この間田君が軽いってわけ!? 分かった。女だ。すでに相手がいるんだろ!」
「いない。全然いないから。フリーオブフリー」
「信じらんねぇ」

 信じようが信じまいがフリーなものはフリー。今フリーを満喫してんの。そこに元凶ぶっ込まないで。

「学校では間田といて、夜は間田とオンラインしてんじゃん。どこに彼女いる要素あんの」
「そうじゃん! これからもぼっち同盟壊すなよ!」
「それだとお前も彼女出来ないけど」
「うわぁぁん!」

 ちょうど先生が教室に入ってきて間田は出席簿で小突かれていた。

 その後も休み時間になるたび行こうと騒がれたが、一切誘いに乗らなかった。フラグが立つ前に全力で逃げてやる。

「ちぇッ学校の角で食パン加えた山川さんとばったり会ってぶつかったりしねぇかな」
「食パン加えながら走る女子とはお近づきになりたくない。また明日ね」
「あッ堀塚!」

 物理で走ってフラグから逃げた。

 しかし困った。間田に由奈情報が渡ってしまうなんて。万が一二人が知り合ったら、自動的に俺も顔見知りになってしまう。間田には早々に血迷ってさっさと振られてほしい。

 どうしようかな。せっかくフリーなのに、逆戻りなんてしたくない。これ以上悪いことが起きないといいけど。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...