僕の家の祠の下

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壊れた祠

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『祠を壊したらいかん』

 典型的なホラー映画にありそうな言葉を、小原遼は祖父から聞いて育った。これがフィクションの話であれば、笑って済ませられることだったろう。しかし、件の祠が自宅の庭にあるのだから、言葉を簡単に流すことはできなかった。

 いつからあったのか分からない。昨日あったのかすら覚えていない。気が付いたらあったし、無い時もあったような気がする。視界に入れたくなくて、いつもそれを存在しないものとして扱ってきた。

「おい、行くぞ」
「いいよ」

 伊崎光太郎が手を振り、サッカーボールをこちらに向かって蹴った。光太郎は二軒先の家の長男で、遼とは所謂幼馴染であった。棚木町には子どもが少なく、同じ学年はあと一人いる女子を入れて三人だけだ。高校になった今も、こうして二人して他愛もない遊びを続けている。

「わッ」

 思ったより強い力に、サッカーボールが遼の足をすり抜けて奥へ行ってしまった。続いて、ゴン、と鈍い音がする。光太郎が口を開けて固まっていた。恐る恐る後ろを振り向く。石で出来た祠の一部が崩れていた。

「あ……」

 ついにやってしまった。

 祖父に忠告されてから、いつかこんな日が来ると思っていた。しかし、来てはいけないと思っていた。それなのに、いつの間にか存在を消して過ごして、注意を、努力を怠っていた。

「ごめん!」

 光太郎が走り寄る。二人で祠の前まで行って観察すると、右側の石が倒れ、屋根部分の石もバランスを崩して今にも崩壊しそうになっていた。遼が伸ばした手を止める。

「これ、勝手に触ってえいもんか……?」
「縁起が悪い気ィする。俺が壊したき、俺が直す」
「待って」

 光太郎を止めた遼がしゃがみ、祠の真下の地面を触った。

「何かある」
「何かって?」
「分からん。多分、石が倒れた衝撃で、ちっくとばぁ地面がえぐれて見えたがよ」
「掘ってみよう」

 その提案に少々顔を歪ませたが、遼は反対しなかった。このまま直すにしても地面を埋め直さなければならない。今回直しても、それが邪魔をしてまた祠が倒れてしまうかもしれない。そうなると、いよいよ祖父にバレて叱られてしまう。

「スコップ取ってくる」
「うん」

 遼が急ぎ足で戻ってくる。慎重に周りの土をどけていき、見えている部分の近くまでくると、スコップに当たるものがあった。

「意外と大きいかも」

 埋まっているものの周囲を掘り起こしていく。途中で遼が固まった。

「ねぇ」
「やばいかもしれん」
「やっぱり、そう見える?」
「うん……」

 光太郎の喉が動く。

「これ、人の腕だ」
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